第210話 疑問点
色々おかしい点が判明した。
ミリアに俺が知ったダグスとドルナードの情報を教えると、困惑した顔をしながら質問攻めを始めた。
例えば、
「記録のダグスと、今のダグスが違いすぎるのはどうして?」
これについていえば、
「記録にあったダグスは、本来のダグスだったんじゃないか? だけど、存在変換とかいうやつのせいで変わってしまった。という感じだと思う。どうしてそうなったのかは、知らないけど」
次いで、
「ドルナードのほうは、記録の通りに帝国を築いたみたいだけど、それはなぜ? 彼もダグスと一緒なんでしょ?」
あいつは、たぶんこうだろ。
「ドルナードは最近存在変換されたんだと思う。ほら、ラーグスの件の事だ。そこからの記録が変わっているだけだろうな」
という事は、ダグスは、かなり早い段階から存在変換されたのかもしれない。
さらに、
「亜人達が孤立していたって言っていたけど、今と違うのは、もしかして私達が原因なの?」
この質問に対しては頷いた。
たぶん、ドルナードがやるべきことを、俺達がしちゃったって事になるんじゃないだろうか?
最後に、
「モンスター襲撃の事が記録になかったけど、どういうこと?」
ダグスやドルナード。どちらの記録にも、それらしいことが載っていない。
これだけの異常現象なら、何らかの形で記載があってもおかしくはないのに、それが無いというのはどういうこと? と言いたいんだろうけど、そもそもが間違えている。
「コタと魔王様の話によれば、モンスター達は託宣によって操られている可能性が高いんだ。それが、魔王様の世界に繋がる出来事なわけで、本来、この世界では起きなかった出来事だったと思う」
「じゃあ、この世界では、魔族は無事だったって事?」
「そうなる可能性が高いんじゃないか? 魔王様の名前も違っているし、色々な点で現在と食い違っているんだと思う」
「そういえば違っていたわね。ヒサオが前に言っていた魔王ってその人?」
「ああ。どこの誰なのかも分からないけどな」
とはいうが、少なくとも2年A組の一族では無いと思う。
なぜなら、託宣は、魔王様たちが召喚されたことによって発生したものだ。
この記録にモンスター襲撃のことが無いということは、託宣が発生していないということになる。
それはつまり、発生原因となる勇者召喚事態がなかった事になるんだろう。
以上の事から、俺が見ているこの記録は、この世界で起きるはずだった記録なんだと思う。
託宣が知っている魔王様がいた世界の歴史とは違うのだろう。
それはつまり、自動発動した《接続》で得た記録とは、また別の記録ということだ。
あっちは、魔王様がいた世界の記録だからな……ややこしいにも程がある。
……ってことは何か?
ドルナードのやつは、少なくとも2つの世界で勇者になる記録があったってことか?
――そりゃ、託宣も目をつけるわけだよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ちょっと疲れた。もう考えるのはよそう。
ここまでの事を整理して、ちゃんと飲み込んでおきたいし、今はここまでにしておくか。
夕飯まだかな……と、よし!
白いエプロン姿のエルフ女性がやってきて、その手にある銀トレイに食事があった。
「お待たせしました。本日取れたての新鮮なお肉のステーキです。それと、砦で作っている野菜の付け合わせになります。カプティーはどうしますか?」
「ください」
「私も、お願い」
「分かりました。では……」
手慣れた動作で、テーブルに置いていき彼女が帰っていく。
しかし、エルフっていうのは、本当に美男美女ばっかりだな~ ミリアもああなるんだろうか?
「なに?」
「いや、なんでもない。それより食べようぜ」
「嫌な感じがしたけど、気のせい?」
「そ、それより、ほら。熱々のうちに食べようぜ」
「そうね。いただきます」
納得しかねない顔をしているが、ステーキ肉の匂いに負けたのか、ナイフとフォークをもって食べ始めた。
ちょっと焦った。
今のミリアって少女と大人の間って感じだし、この先どうなるんだろう~? って考えただけなのに、これだよ。ほんと怖いわ。
「あら美味しい。なにかしら、このお肉」
「さぁ? 美味いならいいんじゃないか? どれ、俺も」
フォークを突き立てナイフで切る。食いやすい大きさに切り分けたあと、口を広げいれた。
うん!
結構レアな焼き加減だな! 俺好みだ。
味付けは、塩となんだろ? 肉の風味を生かしている感じがする。新鮮な肉といっていたから、素材の味を生かそうとしたんだろうか?
ああ。もしかして、今日襲ってきたモンスター達の肉か? だから、本日とれたてなのか。しっかりしてるな~
でも取れたてでこれか。熟成させたらもっと……
「どうしたの? 手が止まっているわよ」
「ちょっと味を堪能していたんだよ。野菜の方はどう?」
「シャキシャキしていて美味しいわよ。やっぱりエルフの食文化は安定していて美味しいわ」
「そういえば、ユミルにいたんだったな」
「ええ。話をしていたら、パン屋のおばさんの味が恋しくなってきたわね」
「ミリアが広めた白パンか。あれって、アルツでも好評らしいぞ」
「そうなの? おばさんにちょっと教えてもらった事を広めただけなのにね」
クスクスと笑ったあと、小さく切り分けたステーキ肉を口に入れていく。
何度も口を動かし、納得したかのように首を倒すとゴクリと喉を通した。
その仕草が妙に可愛らしくて、俺の手がまた止まってしまう。
「なに?」
「なんでもない。俺も野菜のほう食べてみるよ」
悟られないように、フォークでキュウリを突き刺し言葉通り食べていく。
ミリアの言うように小気味良い歯ごたえがあるし、含んでいる水分もちょうどいい感じだ。
「どう?」
「サッパリして美味いな。これなら肉をもう一枚いけるかも」
「まだ食べるの!?」
「若いからな。もうちょっといけるだろ。あ、そこの美人のおネェさん」
「「「はぁーい」」」
なんてことを言ったら、3人ほど振り向いた……
エルフって……いや、まぁ、美人は美人なんだけどね。
あと、ミリアさん。
怖いんで、その顔止めてもらっていいですか?
食欲きえちゃう……




