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第205話 神様仏様イルマ様?

 ドルナードは、あれでいいかな?

 おっと、誰かに伝えておかないと、下手したら混戦になりそうだ。

 誰がいいだろう?

 ……《接続》のことを知っている、オルトナスさんが適任かな?

 うん。そうしよう。


 オルトナスさんに連絡を取り付けると、


『な、なんじゃと!? 帝国がなぜ、ワシ等を助けるのじゃ!』


「それについては当人に聞いてください。分かっているとは思いますが、助けられたからといって油断はしないでくださいね」


『当然じゃ! アルフヘイムの件を考えい!』


「それもそうですね。余計でした。じゃあ、後の事はお任せします」


 必要な事を言い終えると、通話を止めた。

 

 携帯を畳み、胸の裏へとしまう。ちょっとこそばゆい。こんな民族衣装姿で来るべきじゃなかったかな?


「誰にかけたの?」


「ん? オルトナスさん。帝国が助けにくるから、攻撃しないようにってね」


「……どういうこと?」


「小難しい話は、まとめてな。それよりエーラムにいこう。ここはもう大丈夫だ」


「納得いかないけど、ちゃんと後で説明してよね?」


「分かってるって。それより魔法陣頼むよ」


「それこそ分かってるわよ。もう、どこでもいいわ」


 場所選びが面倒になったのか、立っていたその場で魔法陣を描き始める。


 精霊樹の樹液を原料とした緑晶水。

 母さんが考案し、オルトナスさんが実現したこの墨も、母さんが《接続》スキルの情報を元に考えたのだろう。

 まったく、とんでもないスキルだ。母さんが呼ばれた理由も納得できる。


「できたわよ。いきましょ」


「おし! んじゃいこうか!」


「行くのは良いけど気を付けてね。一応、城の入り口に繋げたけど、モンスターがいないとも限らないから」


「そうだな。んじゃ」


 保管術を開き、中からミスリルソードを取り出す。

 これには何度となく世話になった。手に馴染むまで結構苦労したよな。


「うん。よし」


 取り出した剣を横にし刀身を見る。

 オッサンに研いでもらっているから不安はないが、時々見てしまう癖がついてしまった。


「さて、いくか」


 剣を右手で持ちながら魔法陣の上に立つ。

 そしてミリアも隣に並び、一緒に転移。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――魔都エーラム。


「よし!」


「転移は成功 ……というわけでもないわね。ごめんなさい」


「ん?」


 何が? と思えば、転移してきたばかりの俺達を、様々な種族の方々が見ていらっしゃる。

 あ、はい。驚かせてすいません。


 ミリアと一緒に、頭を軽く下げながら入り口へと向かった。

 さっきの人達は避難していたのだろう。

 城にまで来るっていう事は、それだけ追い詰められているって事だ。


「……あちゃ、やっぱりか」


「こっちも酷いわね」


 城の外に出るなり、兵と思われる人々の死体が転がっていた。

 その上に覆いかぶさっている、虎のようなモンスター。

 鑑定してみると、セイバータイガーとでた。


「《土刺(アース・スパイク)》」


 見るなりミリアの魔法が放たれる。

 セイバータイガーの足元に出現した土の棘が刺さり悶絶。

 痛みに悶えるモンスターに止めの一撃をいれ、剣をふるって血を落とした。


「うし。どんどんいこう」


「止め差しただけじゃない。調子にのらないで!」


 不満を漏らすミリアだが、どことなく嬉しそうだ。


「いいから、いこうぜ。ユミル達の話だと、魔王様がやばそうだ」


「ええ。それもそうね。どこにいるの?」


「ちょい待ってろ。えーと……」


 魔王様の本当の名前はムラタ=カズヤ。

 これを知らなければ、俺ですら鑑定による位置検索はできない。


 思えば、この鑑定もおかしい。


 そもそも、母さんからの借り物だというのに性能が別物になっている。

 極とか真とかいうのが無かったはず。俺とは違いランクアップなんてなかったと思う。


 これは恐らくだが、携帯電話と同じではないだろうか?


 俺とユミルは、魔力通路を渡る時に心を繋げた。

 それによって母さんのスキルが受け渡された。

 その後、通路にはいった俺のスキルは、携帯電話と同様変化を得た。


 それがランクアップや、俺だけが持つ固有スキルたち。


 《接続》がこのレベルになるまで得られなかったのは、俺自身のものじゃないから。

 使いこなせるまで発生しなかったと考えている。

 むしろ、初期から使っていた母さんが、とんでもないだろう。

 言葉の一部を読みとれないのに、帰還魔法に手が届きかけたけたしな。


 ということは、母さんはスキルの恩恵だけではなく、それを扱えるだけの才能が最初からあったという事になるんだろうか?

 ……本当に俺、母さんの息子? ちょっと怪しくなってきたぞ。


 おっと、そんな事を考えている暇はない。魔王様はどうやら街中にいるようだし早く行かないと。


「こっちだ!」


 鑑定によって知った方向を指さし、2人そろって走り出す。

 こんな時、傍にいてくれるミリアが頼もしい限りだ。


 走り出した俺達の前に、今度は骸骨男たちが立ち塞がった。

 鑑定しなくても一目瞭然。スケルトンって言うやつだろう。

 今まで見たことないが、やっぱりいるんだな。


 姿をみた瞬間、若干呆れた感じがしたが、手にもつ武器が血に濡れていて……


 それ誰の血だよ?


「お前ら、とっくに死んでんだろ!」


 黙って成仏していろ! とばかりにミスリルソードでブッ叩く。

 いつから鈍器になった! と言われても仕方がないが、こいつらは光属性で倒すか、消し炭にするかでもしないと活動を停止しない。俺が出来ることは、せいぜい砕くくらいだ。


「ヒサオ! どいて!」


「え? あ、ちょい!」


「《光の円(ライト・サークル)》」


 ミリアが右手を向けて魔法名称を口にする。

 その瞬間、俺に襲いかかろうとしていた骸骨が、光に包まれチリになった。

 よく見れば、足元に黄金色に輝く小さな魔法陣が描かれているな。


「光属性も使えたのか?」


 ミリアの隣に戻って尋ねると、軽く首を倒した。


「ほとんどの属性を操れるわよ。レベルは低いけどね」


「いや、結構高いと思うが……」


 確か、攻魔レベル5だっけ?

 たぶん中級程度レベルだろうけど、それで高くないとかいったら、全国各地の魔法使い達が泣くんじゃないのか?


「あれは、俺にも効くのか?」


「結構人にも効くわよ。たまに善人になる人もいるから、巻き込まれないようにしてね」


「……それ、俺が善人じゃないみたいに聞こえるんだが」


 ミリアの中にいる俺ってどういうイメージなんだろ? なんて考えてしまう。

 そんな俺の心なぞ知らずに、軽く笑みを見せたあと同じ魔法を放った。

 1発ごとに1体が消えていくが、


「単発じゃきりがない!」


 ミリアのいう通り、俺達の前に立ちふさがった骸骨たちが多すぎる。消滅しきるまで時間がかかりそうだ。


「範囲系はないのか?」


「有るけど効果範囲が広すぎるわ。この距離だと、私達まで巻き込んじゃう」


「相変わらず範囲系は、敵味方の識別が難しいってか。しょうがない」


 なら、距離を詰められるまえに前にでて守るしかない。と、剣を構えたが、


「うぜぇえ!」


 という声とともに、イルマ様が登場!

 お前、タイミング見計らっていただろ!


「あぁん? なんで、お前らがいる?」


「そんなのはいいから! 早く始末してくれ!」


「あ? あぁ、任せろ」


 イルマのエレメントガントレットが、かすかな光を放っている。光精霊を憑依させているのだろう。今のイルマは、アンデット達にとって天敵みたいなものだ。


「《光の円(ライト・サークル)》」


 ミリアの魔法が再度放たれ、イルマの後ろにいた骸骨が消滅。

 いいぞ! もっとやれ!


「おめぇも戦え!」


「いや、俺、光属性とか無理だから。他の属性も無いけど」


「何フ抜けたこといってやがる! なんかあるだろ!」


 骸骨たちを粉砕消滅させながら、そんな事をおっしゃる。

 いや、何かと言われても……


 あぁ! アレがあるじゃないか。

 保管術を使い、中から、黒いボーリング玉のようなものを取り出した。


「爆発属性ならあったな」


「それって確か……」


「うん。砦で使ったやつ」


 とか言っている間に早くもピンクに!? だからなんでだよ!

 ああ、もう!


「イルマ、そこどけ!」


「は? なんだ?」


「いいから逃げろ!」


 逃げるのを確認する前にポンと投げてやる。

 イルマがいる場所とは、ちょこっとだけ離れた場所……あっ、小石にぶつかって曲がった。


「ゾクってきた!!」


 野生の本能が囁いたのか脇目もふらずに逃げ出した。偉いぞ本能。

 そして……


 チュド―――ン!


 魔導砲の一発が、打ち込まれたかのように爆発。

 グリフォン数体をまとめて片づけられる爆発だ。骸骨ごとき木っ端微塵よ。


「フッ! また……えっと―――イッ!」


 決め台詞はどうしようかと考えた瞬間、頭を拳骨で叩かれた。

 杖で叩くのは止めたけど、拳骨にしただけなのね。


「なにすんだ、ミリア!」


「考えなしに、あんなの使わないでよ! 危なくイルマまで粉々じゃない!」


「いや、まぁ……その場のノリ?」


「……あんた、目が覚めてから、さらに変になってない?」


「失敬な!」


 敵が綺麗さっぱり消えたので、遠慮なく口喧嘩を始めかけたが、


「てめぇ、俺まで粉微塵にするつもりか! なんだ、ありゃ!」


 しっかり逃げ切ったイルマが、俺に迫ってきて胸元をわしづかみしてきた。

 骸骨たちを相手にしていた時より、殺気を漲らせているような気がするが、そういうの止めようぜ? 暴力反対。


「ただの魔力検知珠だよ。いや~俺も、ああなるとは思わなかったな―――」


「……そこどけっていったよな?」


 覚えていたか。

 とっさのことだったので、言い逃れできるかと思ったが、無理そうだ。


 仕方なく、その場でパンパンと手を叩き謝る事で、何とか許してもらえた。

 とりあえず、あの魔力検知珠(バクダン)は、再度封印という事になる。


 ガーガー騒ぐ2人と共に、俺達は魔王様がいると思われる場所へと向かった。


 そして見る。


 俺達が騒いでいる間に、とんでもない事態になっていた現場を……

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