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第193話 生存報告

 コタに連絡を入れなければと、談笑を続ける皆から離れ、自分の部屋へと戻る。

 携帯は恐らくズボンのポケットに……あった。

 俺が手にすると電子音がなり、明るさが灯る。電源がきれていたようだ。


 この携帯も、俺の魔力と関係あるんだろうな。魔力がそのまま電力になるような感じか?

 ラーグスに壊された時の修復はなんだろうか?

 あれの理由がいまだに分からない。実験しようにも怖くてできないし。


 と、それよりも、コタやバァちゃんだ。


「あ、やっぱり!」


 俺が寝ていたせいか、携帯へとメールが届いていた。コタからだろうと、考えながら開くと計5通の報せが届いている。


「どれどれ……」


 以前メールを読まずに連絡を入れた時は、怒られたので今度は見てからにしよう。

 あー…うん。思った通り危なかった。


「バァちゃんに知らせる一歩前って感じか」


 一番不安に思っていた事だけは避けられたようだ。

 バァちゃんに、俺との連絡がつかなくなったなんて言ったら、どうなるか分からないしな。

 かといって何時までも隠しておくなんて出来ないだろうし、あと数日遅れていたら、やばかったかもしれない。


 おっと、そのコタに連絡を入れないといけなかった。

 トゥルル―……ガチャ。


『ヒサ! ヒサだよね! なにやってんだよ!』


 出るなり、電話口で叫びやがった。こいつにしては珍しい。


「いや、何もしてないというか……寝てた? らしい」


『? 寝てた? 何言ってんの?』


「俺もよくわかっていないけど、まぁ聞け」


 時間の事を考えて、ざっくりと説明すると、


『モンスター達の襲撃……か』


 一番気にしたのはそこらしい。俺としては、バァちゃんの事が聞きたいんだけど、考え込みはじめやがった。


「こっちは以上だ。そっちっていうか……」


『こっち? ああ、早苗バァちゃんなら大丈夫だよ。明日あたり、恵子のご両親と一緒に定例報告する予定だったけど、ヒサとの連絡がついたし、ギリギリセーフって感じ』


「そんなこともしていたのか!」


 今しった事実。

 恵子の両親とも会っていることは知っていたが、報告会みたいなことになっているのか。


『まあね。それぐらいしないと、皆不安ばかり溜まってしょうがないんだよ』


「……大人だな、お前」


『本当に大人にならないうちに、帰っておいでよ。いや、その時、ヒサは中年に……それはそれで面白いかもしれない』


「マテコラ!」


 俺がオッサンにしようとするな。オッサンは、オッサンだけでいいのだ。

 何を言っている俺は。


「まったく。お前ってやつは……まぁ、バァちゃんが大丈夫ならいいや」


『この後でもいいから連絡いれなよ。きっと声を聞きたがっているだろうから』


 コタに言われるまでもなく、そうするつもりだったが、気恥ずかしいよな。

 帰還できる目途だって無いし、そんな状態でアレコレ話すのもちょっと気が引ける。

 でも、まぁ、連絡はするか。声が聞きたいし。


『話は変わるけど、ヒサはこの後どうするの? 精霊樹に呼ばれているって話だけど、ユミルも危ないんだろ? いいの?』


「そういやそうだけど、なら、いつだったらいいんだ? っていう状況らしい」


『そんなに?』


「みたいだな。俺が眠っていた間にも数回襲われたってさ」


『……3カ所ともだよね? それだけのモンスターが固まっていたとなると、けっこうな土地が必要だ。しかも聞く限りでは、誰かが操っている感じがするし……』


 ああ、また考えこみ始めた。こいつ、こういう事になると長いんだよな。


「コタ、とりあえずその話は…『まって、ヒサ。精霊樹の件がすむ前に、一つお願いがある』……って、なんだよ?」


 コタにしては珍しく、俺の話にわりこんできた。


『魔王さんと、もう一度話がしたい。それも至急に』


「え? 至急?」


『うん。できれば大至急で。駄目かな?』


「駄目っていうか、エーラムも危ないんだぞ?」


 俺が通話するだけなら問題ないだろうが、あそこだって狙われているらしい。俺がノコノコ行っていいのか? 魔王様に怒られそうな気もするんだけど。


『それは分かっているけど、たぶん大事な話になるんだ。もしかしたら、魔王さんも同じ事を考えているかもしれないけど、念のために伝えておきたい』


 ほんとに珍しい。

 コタなりに必死なのが電話口から伝わってくる気がした。

 こいつのこういう所は、なんとなく……好きだな。


「いいぜ。分かった。このあとすぐ向かうよ」


『ああ、でも、早苗バァちゃんの方も……』


「もちろんだ。んじゃ切るぞ。少したってから、バァちゃんに電話するから」


『うん。じゃあ、魔王さんの件お願いするね』


「わかってるって。じゃあな」


 そういって通話をやめる。限界時間ではなかったけど、少し長かったか?

 待っている間に、皆に今のことを伝えて、予定を変更することにしよう。


 やれやれ、目が覚めた後だっていうのに色々ありすぎだろ。寝かせて置いた分、働かせようってつもりかよ。

 愚痴ってばかりもしょうがない。まずは、皆に魔王様の所にいくことを伝えて、そのあとバァちゃんに連絡をいれないとな。さてと……



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 緊張するな――

 実の祖母と話すだけなのに、うーん……よし!

 トゥルル―………ガチャ


『はい、日永です』


「あ、っと、バァちゃん?」


『! ひ、ヒサオだね! あんたって子は、連絡一つよこさないで!』


 いきなり怒られた。でも元気そうで、ちょっと安心したぞ。


「ごめん、バァちゃん。ちょっと色々ゴタついててさ」


 寝ていただけですが、ごめんよバァちゃん。


『忙しかったのかい? でも、電話ぐらいよこしな。バァちゃん携帯の使い方よくわからないしさ。まったくこの子は……』


 家にある電話もあんまり使えないしな。

 せっかく電話番号登録してあるのに、紙に書いてる方をみて電話するくらいだし。


『それで、体のほうは大丈夫なのかい? ちゃんと食べてるかい? お金は?』


「体もお金も大丈夫だよ。今のところはね」


『そうなのかい? でも、いざという時のために、お金は貯めておくんだよ。いつ何があるのか分からないんだしね』


「わかってるよ。大丈夫」


 商人じみた事をやって、けっこうな財産を持っていますとは言いづらい。

 変にそんなことを言ったら、詐欺にひっかかっているんじゃ? とか言い出しかねないし。


『そっちでお世話になっている人たちとは話ができないのかい? バァちゃん、ちゃんと挨拶もできないままで、心苦しいよ』


「いや、できると言えばできるよ。でも、制限時間があるから長話はちょっとね」


『そんなのがあったねー。そうそう、電話といえば、ヒサオが使っている携帯だけどね』


「うん? 俺の?」


『請求書がこなくなったんだよ。どういうことなんだい?』


「え? どういう事って、どういう事?」


『聞いているのは、こっちだよ』


「ああ、うん。って、バァちゃん。俺こっちにいるんだし、そっちの事がわかるわけないじゃないか」


『携帯のほうは無事なのかい? っていう事だよ。請求先にきいてみたら、ヒサオの電話番号はもう使われていないっていうじゃないか。変な話だよまったく』


「……は? どういう事?」


『だから、バァちゃんが聞いているんだよ。あんたが先にボケてどうするんだい』


 ボケなのかこれ? と言いたくなったがやめた。


 コタからはそんな話は全く聞いていないが、どういうことだ?

 この電話番号が使われていないのなら、コタのほうの携帯にはなんて出ているんだ? 何も言わないから、変わりが無いと思っていたんだが。


「バァちゃん、それいつから?」


『請求書かい? 今月からだよ。先月の分はとってあるよ』


 今月? ってことは、こっちで言えば300日前から? ……いや、違うか?

 先月つかった分が今月くるわけだから、今月っていうのはつまり、先月……つまり、こっちでは600日前? いや、そんなはずはないか。少なくとも、先月はむこうの世界に……いかん、話がややこしいぞ。

 頭から煙がでそうになったので、考えるのをやめた。


「まぁ、繋がるからいいや」


『バァちゃんは、後でまとめて請求されるかと思うと怖くてたまらないよ』


「ないよ、そんな事……」


 たぶんと言いそうになったけど飲み込んだ。バァちゃんにいったら、不安を増すばかりだろうし。


「とりあえず、その事はコタにも聞いてみてよ。近く会うんだろ?」


『そうだね。そうしてみるかね? またコタ君に迷惑かけることになりそうだけど』


 う、うん。家族そろって迷惑かけ通しだな。

 この礼は……ああ、カリスさんの竜王姿でも写しておけばよかった。あいつに送ったら、かなり喜ぶだろうな。竜とか好きそうだし。


『それで、ヒサオ。まだ帰れる目途はたたないのかい?』


「あー」


 やっぱり聞かれたか。そりゃそうだよな。


「うん。まだかかりそう。もうちょいって感じだけど問題があってさ」


 本当はちょっとどころじゃないと思う。

 世界樹の樹液が必要って話だし、モンスター達の行動もあって、たぶん研究のほうも止まっているんだろうな。

 ユミルも狙われているってことは、オルトナスさんは戻っているだろうし、そうなるとエルマ君も一緒かもしれない。


 ミリアは、俺の側にいてくれたようだし……となると、ダグスさんとかいう人間だけか?

 いや、純魔族のクリードさんもいたけど、あの人もどうだろ? エーラムも対象らしいし、戻っているかもしれない。

 もしかして、ダグスさん1人?……まったく進んでない予感しかしない。


『どんな問題なのか知らないけど、諦めるんじゃないよ。いつかどこかで良いことがあるもんさ。戦後の日本に比べたら、まだマシってもんだよ』


「そういう問題? なんか微妙に違うきがするけど」


『何事も諦めないのが肝心。わかったね、ヒサオ』


「うん。まあ、分かると言えばわかるけど」


 諦めが肝心という言葉もあってだな。とは言えない。それに、諦めて良いような状況でもない。


『はっきりおいぃ! まったくアンタは昔から適当にはぐらかして。だから恵子ちゃんをコタ君に取られるんだよ』


「いやいや、それ関係ないから! 俺、意識してなかったし!」


 突然何を言い出す! 本当に恵子の事をそういう風に思ったことがないというのに。


『なに言ってんだい。昔は、良く恵子ちゃんの家に遊びに行ってたじゃないか。むこうの親御さんとも、将来はどうなるんでしょうね? とか話し合っていたんだよ』


「そんなこと言ってたのか! というか、それ小学の頃だろ!」


『そうそう、小学といえば、コタ君と揉めてたね』


「コタと? 何かあったっけ?」


 本気で記憶がない。口喧嘩は時々していたけど、ささいな事だったし、すぐ仲直りしたな。もしかしてそれか?


『あんたじゃないよ。コタ君と恵子ちゃんさ。どっちがあんたを嫁にするかって揉めてたよ』


「俺、男とすら見られていなかったのかよ。というか、恵子のやつ嫁って……」


 その頃から、あいつらヤバかったのか。小学生で手遅れとか早すぎるだろ。

 なんか、もう色々とテンション下がった気がする。


『あれは笑えたね。どっちでもいいけど、うちのヒサオは甲斐性がないよ? って言ったら、あの2人は、「自分が稼ぐ! まかせて!」 とか言ってたよ』


「……」


 どういえば良いのと、携帯を手にしたまま唖然としてしまった。


 その後も、色々と俺の知らない昔話を語られて、コタと恵子のイメージが……あまり変わらないな。

 あいつら俺を共通のネタとして遊んでいたらしい。今も昔もそこは一緒なんだろう。


 もし、あいつらが結婚したら、この話を暴露して、結婚式をハチャメチャにしてやる。もう決めた。

 気に入りそうな写真? そこらの石でいいんじゃないかな? 適当にうつして嫌がらせメールを送ってやる。


 馬鹿な事を考えている間も、俺の――いや、俺達の恥部か? を語るバァちゃんだったけど、最後に、


『あんたは色々小器用にできるけど、結局中途半端だからね。バァちゃんはそこが心配だよ』


 等という説教にはいりだしたあたりで、制限時間になりかけていた。


「バァちゃん。そろそろ時間だ。ちゃんと帰るから、元気にしてなよ」


『待ってるよ。早く帰っておいで』


「ああ。また」


 携帯を遠ざけながら、小さく言う。

 プチっと切ったあと、俺は皆のいる部屋へと戻った。


 さて、まずは魔王様か。コタのやつ何を話すつもりだ?

 モンスターの事もあるし、誰かについてきてもらうか。俺1人だと、何かあった場合対処できない感じだし。


 よし! エーラムだ!

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