表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/273

第168話 鬼畜

 ーエーラム


 フェルマンさん達が昨晩帰ってきた。

 直に報告したいからと言われ、俺の魔力でエーラムへと飛ぶ。

 俺も一緒に聞くこととなり、謁見の間にいるんだけど、


「ドワーフは駄目だったか」


「はい。もう少し早くついていればと、悔やまれます」


「それは仕方がないよ。それより、君たちが無事でよかった」


「ありがとうございます」


 魔王様はいつも通りだけど、フェルマンさんは、どこか気力を振り絞っているように見える。無理してなきゃいいけど……でも、空元気だとしても落ち込まれるよりは良いか。


「しかし、託宣が変わったってどういう意味だろ? 内容の変化なのか、それとも託宣そのものの変化? どっちにもとれるよね」


 魔王様のいう通りだな。

 それに、コタの言っていたことも気になる。

 前に、託宣が現状のままでいるのだろうか? とか言っていたし、早くつきとめたほうが良いかも。


 何かアイディアがないかな~?

 イガリアだと現状の託宣がわからないし、かといって、帝国やオズルに知り合いはいないし……一応鑑定ずみのやつはいるから、通話できるけど……

 皇帝陛下様と、将軍様かぁ。まあ、無理だな。敵の俺に教えるわけもない。


 ……敵?

 いや、向こうは俺のスキルのこと知らないから、適当にごまかせばなんとかなるか? 託宣ごっこのようにすれば、俺が敵だってバレないんじゃ?


 とはいっても、何て話すんだよ。

 また託宣のふりして、託宣のこと聞く? ……ないな。怪しまれて終わるだけだ。

 どうにかして、通話をつかって情報を引き出す手段がないかな?


 ………情報を引き出す……直接ならこの間のように交渉術で……


 ……………

 まて………

 できないよな? これ? 

 いやいやいや、ないだろ! これはない!

 できたら、自分自身に引くわ!


「ヒサオ」


「へ? あ、はい」


 考えこんでいると、魔王様に呼ばれていたらしい。2人が俺をみている。


「何か面白いこと考えた?」


「なんで、面白いことになるんですか。いつも真面目に考えていますよ」


「……うん。まあ、そうだね……うん」


 何その反応! 俺から顔を逸らすほどのことなのか!


「魔王様、ヒサオは真面目ですよ」


 ナイス、フェルマンさん! あんたなら、分かってくれると思っていたよ! もう、魔王様と立場かわってしまえ!


「ただ、結果が面白いだけです」


「ちょ!? フェルマンさん、なんなんですか、あんたまで! 魔王様より酷い!」


「僕は酷いこと言ってないと思うけど……」


「自覚がないんですか! それって怖すぎますよ!」


 なんだこの漫才は! どうしてこうなる! 

 俺はちゃんと真面目に、託宣の事を考えていたというのに、扱いがひどい!


「それはいいから、何を考えたのか教えてくれると嬉しいんだけど?」


 よくねぇええええ! と叫びたくなってきた。

 ちょっと、色々つかれたので、深呼吸を一つ。

 息を整えてから、考えた事を話した。


「「…………」」


 2人そろって絶句してしまった。

 無理もない。俺ですら、そうなる。


「ヒサオ……ちょっと聞くけど、それ、いつから考えていたの?」


「今、ふっと……」


「今……今ね……うん……コタ君が返せっていうわけだ……」


「は? コタが何か?」


 聞くが答えてくれない。まるで聞かなかったことにしようとしているようだ。


「ヒサオ。誰かで試していないだろうな?」


「だから、今、思いついたんですってば。フェルマンさん、頭とんでいませんか?」


「……すまんが、どこかに意識が飛びそうになった。俺はここにいるんだろうか?」


「そこまで!?」


 そう来るとは思わなかった。文字通り、自分の居場所を確認するかのように、両手をみたり、足元をみたりして、うんうん頷いている。


 なんか、頭にきた。

 そりゃあ、俺も呆然とするだろうけど、ここまでの反応をされると、ちょっと苛立つぞ。


「わかりました。じゃあ、試しましょう! 相手は、フェルマンさんで!」


「……なん、だと」


「よろしくフェルマン。がんばって」


「魔王様!?」


 逃げたな魔王様。あんた流石だよ。汚い。汚すぎる。

 ということで、今回の実験台は、フェルマンさんになりました。

 ゼグトさん。よかったね。長が仲間になるよ!


 ―――教えたら殺されるな。黙っていよう。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 結論をまず言おう。

 大成功だ!!


 外にある待合室から、謁見の間にいるフェルマンさんに通話。

 そのまま取引をしようといい、交渉術を発動。

 様子の変化については察するだけしかないので、そのまま取り引きを開始。

 この時の問題として、真交渉術で追加された能力が使えないことが判明した。


 通話交渉術とでも名付けようか?


 携帯をつかっての交渉術な為か、交渉につかえる材料情報が表示されなかった。

 さすがにこれまで表示されたらチートを通りこしている気がするし、それはそれでよかったような、悪かったような気がする。


 ……ところで、これいつからできたんだろう? もしかして、かなり前からできたんじゃ?

 やめよう。自分で自分に呆れそうだ。


「便利すぎるというか、卑怯すぎるというか……前例がまったくないスキルだけど、というか、こんな事を考えるヒサオが鬼畜というか……」


「魔王様、ちょっと言い方がおかしいです」


「あっ! ……なんか僕まで、おかしくなってきている。まず、落ち着かないとね。で、フェルマン大丈夫? むちゃくちゃ顔色わるいよ」


「ハ、ハァ………ウッ! ……なんというか、頭の中に手を突っ込まれて、ぐるぐるかき回されたような……ゼグトの気持ちがよくわかっ―――う、ウプ!」


 吐くなよ! 絶対ここで吐くなよ!

 ……こらえたようだ。危うすぎる。


「ゼグトさんもイルマも、そこまでは言っていませんでしたけど?」


「それ、もしかして、通話を併用したからじゃない? あれも頭の中に聞こえてくるものだし。交渉術単体だけでも、頭痛に悩まされるらしいじゃないか。両方同時だとしたら、ダメージがひどいのかも」


 な、なるほど。なんて酷いスキルなんだ。心と脳の両方にダメージを与えるとか……使えるのが俺でよかった。絶対くらわないもの。


「と、とにかくだな。ヒサオ。この術を使うときは、長時間は避けろ。あまりに酷い。酷すぎる! 絶対つかった相手に恨まれるぞ」


「あ、はい」


「お前、分かってないだろ!」


「いや、だって、敵に恨まれても別に平気ですから」


「……一理ある」


 相手を選べってのは、よく分かっている。

 だけど、敵に対してまで遠慮する必要なんかどこにもない。

 問題があるとしたら、使うことによるペナルティーの危険性だ。


 いつも使うときは、邪魔がはいらないように注意をしていた。だからこそ使ってこれた。

 だけど、通話交渉術は、相手の状態が見えない。

 交渉中に横やりがはいったら、どうなるのか、さっぱりだ。


 リスクが高すぎる。

 この問題を解決できる手段が俺には思いつかない。

 だけど、もし、これによって情報が得られれば、今後の危険を回避できる可能性も高い。


 ハイリスク&ハイリターンか。

 どうする?


「ヒサオ。また一人で考えているね?」


「あっ! ……つい」


「ハァ――まぁ、それはいいけど、今度はなんだい?」


 ちょっと機嫌を悪くさせてしまったのか、不機嫌そうな顔をし聞いてくる。

 考えたばかりのペナルティーのことについて言うと、


「あれか。確かにやっかいだね。ラーグスの時の邪魔って、ヒサオがやったんだっけ?」


「はい。まだ終わっていないのに気絶させたら、俺に不利なペナルティーが付加されました」


 厄介すぎる問題に、俺と魔王さんが頭を悩ませ始めると、ジーとみつめてくる視線に気づいた。

 

「な、なにか?」


 相手はフェルマンさん。なんだろ?


「……思ったのだが、ヒサオ。お前が邪魔をしたから、お前にペナルティーがいったのだな?」


「え? ……はい。そうですね」


 確かに、あの時はそうだった。

 だけどそれが?

 ……て、フェルマンさん? もしかして……


「その顔は、言いたいことが分かったようだな」


「え、えぇ――でも、それって」


 いいのか?

 だとしたら、今までの悩みが、一気に解消されることになるんだが。

 でも、それを確認するには……

 ジーとフェルマンさんを見ると、プイっと顔を逸らされた。


「フ、フェルマンさん?」


「俺は嫌だ。もう2度とごめんだ」


 言う前に逃げられた。仕方がないから魔王様をみると、


「何その目。僕で試すとか考えていないよね?」


 お怒りのようだ。顔は微笑んでいるけど、頬がひきつっておられる。

 だとしたら、誰で……

 キョロキョロと周囲をみると、扉前に魔族兵の2人がいるわけで……


「「………」」


 2人そろって、顔を逸らしやがった。さては、しっかり聞いていたな。

 でもね……


「魔王様、あの2人で、どうでしょう?」


「うん。そうしようか!」


「「!?」」


 流石魔王。ためらいがない。

 あんた、根っからの魔王だわ。


 こうして犠牲者を確保して、第2実験が開始された。

 さてさて、どうなることやら――頼むから変な事にだけはならないでくれよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ