第168話 鬼畜
ーエーラム
フェルマンさん達が昨晩帰ってきた。
直に報告したいからと言われ、俺の魔力でエーラムへと飛ぶ。
俺も一緒に聞くこととなり、謁見の間にいるんだけど、
「ドワーフは駄目だったか」
「はい。もう少し早くついていればと、悔やまれます」
「それは仕方がないよ。それより、君たちが無事でよかった」
「ありがとうございます」
魔王様はいつも通りだけど、フェルマンさんは、どこか気力を振り絞っているように見える。無理してなきゃいいけど……でも、空元気だとしても落ち込まれるよりは良いか。
「しかし、託宣が変わったってどういう意味だろ? 内容の変化なのか、それとも託宣そのものの変化? どっちにもとれるよね」
魔王様のいう通りだな。
それに、コタの言っていたことも気になる。
前に、託宣が現状のままでいるのだろうか? とか言っていたし、早くつきとめたほうが良いかも。
何かアイディアがないかな~?
イガリアだと現状の託宣がわからないし、かといって、帝国やオズルに知り合いはいないし……一応鑑定ずみのやつはいるから、通話できるけど……
皇帝陛下様と、将軍様かぁ。まあ、無理だな。敵の俺に教えるわけもない。
……敵?
いや、向こうは俺のスキルのこと知らないから、適当にごまかせばなんとかなるか? 託宣ごっこのようにすれば、俺が敵だってバレないんじゃ?
とはいっても、何て話すんだよ。
また託宣のふりして、託宣のこと聞く? ……ないな。怪しまれて終わるだけだ。
どうにかして、通話をつかって情報を引き出す手段がないかな?
………情報を引き出す……直接ならこの間のように交渉術で……
……………
まて………
できないよな? これ?
いやいやいや、ないだろ! これはない!
できたら、自分自身に引くわ!
「ヒサオ」
「へ? あ、はい」
考えこんでいると、魔王様に呼ばれていたらしい。2人が俺をみている。
「何か面白いこと考えた?」
「なんで、面白いことになるんですか。いつも真面目に考えていますよ」
「……うん。まあ、そうだね……うん」
何その反応! 俺から顔を逸らすほどのことなのか!
「魔王様、ヒサオは真面目ですよ」
ナイス、フェルマンさん! あんたなら、分かってくれると思っていたよ! もう、魔王様と立場かわってしまえ!
「ただ、結果が面白いだけです」
「ちょ!? フェルマンさん、なんなんですか、あんたまで! 魔王様より酷い!」
「僕は酷いこと言ってないと思うけど……」
「自覚がないんですか! それって怖すぎますよ!」
なんだこの漫才は! どうしてこうなる!
俺はちゃんと真面目に、託宣の事を考えていたというのに、扱いがひどい!
「それはいいから、何を考えたのか教えてくれると嬉しいんだけど?」
よくねぇええええ! と叫びたくなってきた。
ちょっと、色々つかれたので、深呼吸を一つ。
息を整えてから、考えた事を話した。
「「…………」」
2人そろって絶句してしまった。
無理もない。俺ですら、そうなる。
「ヒサオ……ちょっと聞くけど、それ、いつから考えていたの?」
「今、ふっと……」
「今……今ね……うん……コタ君が返せっていうわけだ……」
「は? コタが何か?」
聞くが答えてくれない。まるで聞かなかったことにしようとしているようだ。
「ヒサオ。誰かで試していないだろうな?」
「だから、今、思いついたんですってば。フェルマンさん、頭とんでいませんか?」
「……すまんが、どこかに意識が飛びそうになった。俺はここにいるんだろうか?」
「そこまで!?」
そう来るとは思わなかった。文字通り、自分の居場所を確認するかのように、両手をみたり、足元をみたりして、うんうん頷いている。
なんか、頭にきた。
そりゃあ、俺も呆然とするだろうけど、ここまでの反応をされると、ちょっと苛立つぞ。
「わかりました。じゃあ、試しましょう! 相手は、フェルマンさんで!」
「……なん、だと」
「よろしくフェルマン。がんばって」
「魔王様!?」
逃げたな魔王様。あんた流石だよ。汚い。汚すぎる。
ということで、今回の実験台は、フェルマンさんになりました。
ゼグトさん。よかったね。長が仲間になるよ!
―――教えたら殺されるな。黙っていよう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結論をまず言おう。
大成功だ!!
外にある待合室から、謁見の間にいるフェルマンさんに通話。
そのまま取引をしようといい、交渉術を発動。
様子の変化については察するだけしかないので、そのまま取り引きを開始。
この時の問題として、真交渉術で追加された能力が使えないことが判明した。
通話交渉術とでも名付けようか?
携帯をつかっての交渉術な為か、交渉につかえる材料情報が表示されなかった。
さすがにこれまで表示されたらチートを通りこしている気がするし、それはそれでよかったような、悪かったような気がする。
……ところで、これいつからできたんだろう? もしかして、かなり前からできたんじゃ?
やめよう。自分で自分に呆れそうだ。
「便利すぎるというか、卑怯すぎるというか……前例がまったくないスキルだけど、というか、こんな事を考えるヒサオが鬼畜というか……」
「魔王様、ちょっと言い方がおかしいです」
「あっ! ……なんか僕まで、おかしくなってきている。まず、落ち着かないとね。で、フェルマン大丈夫? むちゃくちゃ顔色わるいよ」
「ハ、ハァ………ウッ! ……なんというか、頭の中に手を突っ込まれて、ぐるぐるかき回されたような……ゼグトの気持ちがよくわかっ―――う、ウプ!」
吐くなよ! 絶対ここで吐くなよ!
……こらえたようだ。危うすぎる。
「ゼグトさんもイルマも、そこまでは言っていませんでしたけど?」
「それ、もしかして、通話を併用したからじゃない? あれも頭の中に聞こえてくるものだし。交渉術単体だけでも、頭痛に悩まされるらしいじゃないか。両方同時だとしたら、ダメージがひどいのかも」
な、なるほど。なんて酷いスキルなんだ。心と脳の両方にダメージを与えるとか……使えるのが俺でよかった。絶対くらわないもの。
「と、とにかくだな。ヒサオ。この術を使うときは、長時間は避けろ。あまりに酷い。酷すぎる! 絶対つかった相手に恨まれるぞ」
「あ、はい」
「お前、分かってないだろ!」
「いや、だって、敵に恨まれても別に平気ですから」
「……一理ある」
相手を選べってのは、よく分かっている。
だけど、敵に対してまで遠慮する必要なんかどこにもない。
問題があるとしたら、使うことによるペナルティーの危険性だ。
いつも使うときは、邪魔がはいらないように注意をしていた。だからこそ使ってこれた。
だけど、通話交渉術は、相手の状態が見えない。
交渉中に横やりがはいったら、どうなるのか、さっぱりだ。
リスクが高すぎる。
この問題を解決できる手段が俺には思いつかない。
だけど、もし、これによって情報が得られれば、今後の危険を回避できる可能性も高い。
ハイリスク&ハイリターンか。
どうする?
「ヒサオ。また一人で考えているね?」
「あっ! ……つい」
「ハァ――まぁ、それはいいけど、今度はなんだい?」
ちょっと機嫌を悪くさせてしまったのか、不機嫌そうな顔をし聞いてくる。
考えたばかりのペナルティーのことについて言うと、
「あれか。確かにやっかいだね。ラーグスの時の邪魔って、ヒサオがやったんだっけ?」
「はい。まだ終わっていないのに気絶させたら、俺に不利なペナルティーが付加されました」
厄介すぎる問題に、俺と魔王さんが頭を悩ませ始めると、ジーとみつめてくる視線に気づいた。
「な、なにか?」
相手はフェルマンさん。なんだろ?
「……思ったのだが、ヒサオ。お前が邪魔をしたから、お前にペナルティーがいったのだな?」
「え? ……はい。そうですね」
確かに、あの時はそうだった。
だけどそれが?
……て、フェルマンさん? もしかして……
「その顔は、言いたいことが分かったようだな」
「え、えぇ――でも、それって」
いいのか?
だとしたら、今までの悩みが、一気に解消されることになるんだが。
でも、それを確認するには……
ジーとフェルマンさんを見ると、プイっと顔を逸らされた。
「フ、フェルマンさん?」
「俺は嫌だ。もう2度とごめんだ」
言う前に逃げられた。仕方がないから魔王様をみると、
「何その目。僕で試すとか考えていないよね?」
お怒りのようだ。顔は微笑んでいるけど、頬がひきつっておられる。
だとしたら、誰で……
キョロキョロと周囲をみると、扉前に魔族兵の2人がいるわけで……
「「………」」
2人そろって、顔を逸らしやがった。さては、しっかり聞いていたな。
でもね……
「魔王様、あの2人で、どうでしょう?」
「うん。そうしようか!」
「「!?」」
流石魔王。ためらいがない。
あんた、根っからの魔王だわ。
こうして犠牲者を確保して、第2実験が開始された。
さてさて、どうなることやら――頼むから変な事にだけはならないでくれよ。




