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第163話 考察の先へ

「おはようございます。魔王様との謁見をお願いしたいんですけど」


 コルクスに戻るなり、ブランギッシュ経由でエーラムへとやってきた。

 目的はもちろんコタとの約束を果たすためだ。

 いつものように他の人が来ているようで、待合室で暇をつぶした後、魔王様の前へと通される。


「やぁ、ヒサオ。今日は、コタ君との話の件だよね?」


 今日も青年モードか。最近、この姿でいるのが多いな。


「はい。お約束どおり、連絡を取ろうかと思っています」


「うん。頼むよ。確か、制限時間は5分。それでもう一度通話をしようとしたら30分近く待つんだよね?」


「……いえ、違います。一度きれたら1時間近くまつことになりますよ。だいたい50分前後ですね」


「あれ? そうだったっけ? ごめん記憶違いをしていたようだ」


 軽く耳元に指をあて、カリカリしている。

 忘れていても当然だと思うので、気にしなくていいと思いますよ?


「こっちの世界だと制限時間なんてないのに、異世界との通話は違うって変わっているよね」


「そういわれましても……」


 好きでこうなっているわけじゃないんだ。

 コタの仮説だと、スキル補正による同期? が関係しているらしく、それが何を意味しているのか、俺にはさっぱりだった。

 それぞれの世界で、違った時間速度になっているため発生している問題らしいが今一つ理由が分かりづらい。

 どっちも1時間は1時間だとおもうんだが、なんでだろうな?


 まあ、細かいことを気にしていても仕方がない。まずは目的をすまそう。


「じゃあ、コタに連絡をいれます。通じたら、すぐに携帯をお渡しします」


「お願いするよ」


 はいはい、今すぐにと、携帯をポチポチっとな。

 トゥルル――… ガチャ


『おはよ。お待たせ。ごきげんよう。そして、おやすみ』


「オイ、コタ! まて、ほら、例の件だから!」


『うん。知ってる。ちょっと寝起きだから、頭がボーとしていてね。もう大丈夫。魔王さんと代わって』


 まったく、本気なのか冗談なのかよくわからないやつだ。時間がないというのに。


「出ました。魔王様、どうぞ」


「ありがとう。ほんと助かるよ」


「?」


 助かる? なんでだ?


「あ、ちょっと離れていてね。コタ君と内緒話したいから」


「……はぁ」


 なんかこう、俺のスキルと携帯なんだけど! と言いたくなるが、あきらめよう。離れないと話ださないようだし。

 外にいた門番さんたちが中にいるので近くに向かう。いい機会だし、少したわいもない会話でもするか。

 離れた俺を見てから、魔王様がコタとの会話を始めた。



 ―――――――2人の会話(ヒサオには聞こえません)――――――



『もしもし、魔王様ですか?』


「そうだよ、コタ君。ほんとすまないね」


『いえ。時間もないので、早めに話を進めますね。頼まれていた話ですけど』


「うん。それそれ。どう思う?」


『……たぶん、無理だと思います』


 聞いた瞬間、魔王の顔が曇った。


「理由は?」


『まず、魔王様の考察ですが……』


 現魔王の考察。

 歴代魔王が考えたように、当然、現魔王であるムラタ=カズヤも考えを巡らせていたわけだが、彼の考察は、これまでのとは違っていた。


 12代目魔王の考察をもとに、どうにか託宣を完全に消し去る方法はないか?

 そこに重点をおいたわけである。


 ムラタ=カズヤが考えたのはこう。

 託宣の発生原因に、自分達が召喚されたことが関係しているのであれば、いまいる自分達が全てこの世界からいなくなれば、託宣はきえるのではないか? というものだった。


『これがもし当てはまるのであれば、死んでしまった魔王様のクラスメイト分だけ、世界の繋がりが弱まっていると考えられますよね』


「そう……だね」


『なら、託宣にも影響がでるのでは?』


「………すでに、世界の繋がりとは関係がなくなっているという考えは?」


『だとすれば、魔王様たちが、その世界からいなく……帰還できたとしても、託宣は変わらないままとなりますよ』


「……」


 駄目だったか。と、携帯をもったまま顔を落としてしまう。

 思いついたときは、希望を手にしたような感じすらあった。

 ヒサオを通じて、コタロウと歴代魔王の考察について語りあったときは、この相手なら、自分の考えを後押ししてくれる理由を教えてくれるのでは? とも。


 だが、その相手は、背中を押すどころか駄目だしを口にする。

 そこに文句はない。むしろ、コタロウの考えが正解のように思えた。

 しかし、希望が絶望にかわった瞬間というのは、理屈ぬきで不満を覚える。

 待ち望んでいただけに、落胆した様子を隠せずにいた。


「わかった。別の手を考えてみるよ」


 言い終わった後、携帯を耳から離しかけたとき、


『待ってください。その為の話があります』


「……え?」


 思いがけない声をきき、すぐに耳に携帯を戻した。


『まず、託宣の存在理由についてですが、僕は緩衝剤やワクチンのようなものだと思います』


「ちょっとまって。どういうこと?」


 心の準備がまったくとれていない状態で、突然話され戸惑ってしまう。


『それを今から説明します。よく聞いてください』


 魔王の戸惑いなど知らないとばかりに、コタロウの話が始まった。


 歴代魔王たちの努力によって、世界同士の接近が行われていることは確定している。

 原因は勇者召喚だと思われるが、どうしてそれで託宣が発生したのか? という根本的な部分を考えた。


 12代目の考察によれば『同じ歴史をたどろうとして~』とある。

 おそらく、世界の同化現象的なものが起きると考えたのだろう。

 託宣が告げている内容から考え、この結論に至ったのではないだろうか?

 ネット上で議論を重ねたコタロウも、同様の結論をだし、考察に間違いはなかったと確信した。


 では、なぜ、そんなものが発生したのか?

 これは発生原因についてではない。

 発生しなければならなかった理由となる。


「必要とされた?」


『ええ。近づきつつある世界にとって、託宣というのは必要存在なんだと思います』


 病気にかかった時、体内で免疫が作られるのと同様、危機を察知した世界もまた、託宣というものを作り出した。

 そして、同化現象という手段をもって、被害を最小限でくいとめようとしている。

 だが、そのためには、


『魔族達の絶滅が必要なようですけど、仕方がないとおもいますか?』


「思うわけがないだろ!」


 突然の怒声に、遠巻きにみていたヒサオと門番たちが同時に反応。

 自分へと向けられる視線を感じ、なんでもない、といったように手を振った。


『でしょうね。でも、世界の外側にある理なんて、だいたい理不尽なものですよ』


「まるで、見てきたような事を……」


『まさか。そんな事はできませんが、僕達がいる世界では、こういう空想的な話があふれていましてね、大体そんな感じで理不尽な設定になっています』


「こっちは現実問題として困っているんだけど、わかってる?」


『ええ。もちろん。ですが、そうしたネタ的なものも案外馬鹿にできないこともあるんです』


 例えば……と、言おうとしたが、時間が制限のことを思い出し、先を続けることにした。


『さて、ここからが本題となります』


 コタロウのいう同化現象というのは、歴史や文明を似せることにある。

 世界の中身をできるだけ同じにし、接触時の被害を抑えるためだろう。

 そのために魔族達を滅ぼそうとしているわけだが、どういうわけか何百年という歳月をかけているにもかかわらず、魔族は滅びず、拮抗状態のまま現在へと至っている。


『おかしいですよね?』


「それを僕に尋ねる、君がおかしいと思うけど?」


 まさか、自分たちが生存しているのが、おかしいと聞かれる日が来るとは思わなかった。

 どういう感情をもてばいいのかと、困惑してしまう。

 そんな魔王の複雑な心理状態を無視し、さらに話が続く。


 魔族の絶滅を狙うのでれば、何百年も戦う必要はない。

 極論をいえば、ミサイルでも作らせ、使わせればいいのだ。

 歴史の修正を行おうというのであれば、その過程において作られた兵器の数々を知っているはずなのだし。


 だが、しない。

 そればかりか、


『疑問2 何百年も戦争を繰り返しているのに、大砲もどきが作られたのがつい最近。長く戦争をしているのであれば、そうした武器の1つや2つ、とっくの昔に作られているべきでは?』


「それは僕も感じていたよ。人間達の文明は、僕達がこの世界にきたときから、あまり変わっていない。魔法があったからとも考えたけど、いくら何でも遅すぎると思う」


『魔王様も同じことを? では、なぜだと思います?』


「……たぶん、託宣のせいだろうね」


『同感です』


 託宣に頼る人間たち。

 そこから得られる情報をもとに動くため、思考能力や判断能力が低下している。

 だから文明の発達速度が遅い。これなら託宣がないほうがマシである。


 では、なぜ、託宣は、こうした疑問を感じさせるような行為を行っているのか?

 目的と思われるものと、まったく違う状態になっているのはなぜか?


 こうした疑問を抱いたとき、コタロウは閃きを得た。


『全ては真実の歴史の為』


 であると。


 いないはずの種族を絶滅させ、人間達が繁栄する歴史をスタートさせたいのではない。

 その前があったのだ。

 空想上の産物とされた魔族や亜人達は実在し、その絶滅までの過程(歴史)が大事なのだ。


 その時。


 その状態。


 これらがそろうまで、絶滅させるわけにはいかなかった。


 だからこそ、人間達を制御した。

 全ては、実在した人間以外の種族が、空想上の産物となる舞台を用意するためである。


「……じゃあ、僕達の世界にも、魔族や獣人がかつては存在したと、君はいいたいのか?


『ええ。まあ、ヒントは、ヒサオからですけどね』


 ミリアがヒサオにいったこと。それがそのままコタロウにも伝わっている。

 聞いた当初は、確かに妙だね。でも面白い話だ。といった程度に考えていた。


 だが、魔王達の考察をきき、ネットで議論を繰り広げ、コタロウは思いついた。

 彼等は、自分達の世界においても実在していたのでは? と。


 ミリアの疑問は、そのまま託宣が行おうとしていることに、関係していたということになる。

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