第147話 奪還作戦開始
ヒサオ視点です。
アルフヘイム奪還作戦が開始される日となった。
前日には全ての兵たちがアグロ砦に集合。
これはエルフ達もふくめてだ。
ユミルから転移していくことができないため、オルトナスさんが作り出す新式の転移魔法陣をつかうことになる。
「もう一度言うが5名ずつじゃ。最初の100名まではヒサオの魔力を使うが、それ以降は各自のものとなる」
その最初の100人は中庭で整列しており、砦の外に残った兵達がいる。
総勢3000人という話だが、俺の予想以上の兵があつまったな。
オルトナスさんの話が終わると、フェルマンさんの視線が一番前に並んでいる5名へと向けられた。
テラーとエイブン。それとかつての部下だったという3名だ。
この5名が最初の突入部隊となる。
もし、この5名によって精霊樹が無事なことが確認されたら、次の5名が派遣されることになる。
そして、その次なる5名の中には、ミリアとオッサンがいた。
(大丈夫かな?)
チラリとミリアをみてみる。
いつもの天の長衣に、世界樹の杖。そして腕にはルーネスの腕輪つけている。
見ていると、俺の視線に気付いたようで、大丈夫とばかりに頷いた。余裕ありそうなのが頼もしい限りだ。
「先にもいったが、精霊樹がある部屋に魔法陣を繋げる。状態確認はすぐにできるじゃろう。駄目だと判断したなら、渡した魔法石をつかいもどってきてくれ」
先陣をきる5名がそろって頷いた。
もし精霊樹が無事であり、部屋に兵がいた場合はすぐに倒し後続を待つことになっている。
「はじめるぞ」
「魔法陣が光ってからのってください。でないと、魔力を吸い取られるから」
一応注意として、転移の手順を軽く説明する。
魔法陣は、最初に触れた者から魔力をすいとり、魔法を発動させる。
なので、先ず俺が魔法陣に触れる。そのあと光だしたらどく。
転移する人たちが俺に変わって魔法陣の上にのり、転移していくという流れ。
もちろん、テラーやエイブンは知っているが、中には転移そのものが初めてという人もいるだろう。
だから説明しているわけだが、その説明中にオルトナスさんが幾何学模様のような魔法陣を描きおえていた。
「できたぞ。だいぶ楽に描けるようになったの」
額から大粒の汗を落としながら言う。
こんな短時間で汗を吹き出しているのに、楽だって言うのか。前はどれだけ大変だったんだろうか?
もういいのかな? とフェルマンさんをみると、軽く頷いてくれた。
ならと、できたばかりの魔法陣へとのると、俺の魔力を吸い取り、描かれた模様が薄緑色の光を放ちだした。
「いってきます。ヒサオ、通話のほうよろしくお願いします」
「ああ、わかってるよ」
テラーの声が魔法陣の上から聞こえてきて、軽く返した。
彼女たちが戻ってきたら、そのまま終わりになる。
この場にあつまった3000人は、そのまま解散になるだろう。
だけど、もしいけそうであれば?
その時は増援が必要になる。
その判断をテラーがするわけで、転移の少し後に、通話をすることが決まっていた。
奪還したい気持ちが強くでて、無茶な行動に出なければいいと思うが……
5名の転移が終わると場が沈黙する。
不安と期待が混ざったような感覚を覚えながら、少しの間待つ。
1分? 5分? もう10分?
短いような、長いような、時間の感覚が分からなくなり始めた頃、視線が俺へと集まった。
『もういいんじゃないか?』と、皆が目で言っている気がし、携帯を使ってテラーへとつないでみた。
トゥルルー……ガチャ。
「聞こえるか?」
『ヒサオ! 至急増援をお願いします』
「どうした!?」
『精霊樹は無事でしたが、見張りの兵を仕留めそこないました。敵の増援がきています!』
「わかった!」
ガチャっときったあと、
「精霊樹は無事だ! ただし、見張りの兵が応援を呼んでしまったらしい。すぐに次を!」
「よし! 次だ!」
「ワシ等の番じゃな。ヒサオ頼むぞ」
「オッサン、気をつけてな。ランスを振り回しすぎるなよ」
「ふん。自分でつくった武器じゃ。誰よりもわかっとる」
「違いない。んじゃ、いくぞ!」
魔法陣を起動させたあと、オッサンたちと交代。
ミリアも一緒だったので、すれ違いざまに、
「無理はするなよ」
「ええ。でも早めに次をお願いね」
「まかせろ」
軽く声をかけあったあと、次なる5名が転移して消えていく。
光が収まったあと、次のメンバーを送ろうと魔法陣にのると、
「よろしくお願いします」
「はい、もちろん――って、確か……」
前にみたことある気がするイケメンエルフだな~ とおもっていたら、確かクロスとかいう人だ。
さらに、彼の後ろから桃色頭をした双子の姉弟が、ひょこっとでてくる。
「精霊さん……まもる」
「うん。ねぇさん。がんばろうね」
「ヒュース……まもって?」
「そこで僕なの!?」
……なんか、後ろで漫才が始まりだしそうだな。
クロスさんが、申し訳なさそうにしているけど、とにかく送ってしまおう。
ささっと彼等を送り出すと、今度は……
お前、もういくのかよ。
「なんだよ、その顔は」
「自重しろとかいわれてなかったか?」
イルマが次なるメンバーの中にいた。おまけにデュランさんまで。
「部下だけにまかせておけん」
「同意見だぜ。だいたい自重とか柄じゃねぇ」
「あ、はい」
言うだけ無駄だな。そもそも、後がつかえてる。さっさと送ってしまおう。
指揮をとっていたフェルマンさんが、転移していった2人をみて、悔しそうに口を曲げている。あんたまでいったら、こっちの指揮を誰がとるのよ。
そのあとも続々と送り出す。
そろそろ最初の100名が終わりそうだという頃に、
「ヒサオ、そろそろ、向こうの状況が知りたい」
「はい。じゃあ、イルマに連絡を入れてみます」
携帯をとりだし、ポチポチっとな。
トゥルル―…ガチャ
『……思った以上に歯ごたえがねぇな。このまま取り返せるんじゃね?』
おっと。だれかと会話中のようだ。
「イルマ。無事か? そっちの状況はどうだ?」
『ヒサオか。全然問題なしだ。精霊樹も無事だし、やってきた兵達もすぐに途切れた』
「お? 最初だけだったのか?」
『だと思うぜ。元々、城の中にいた兵が少なかったんじゃねぇかな?』
「そうかもな。わかった。まずは安心したよ。フェルマンさんにはそう伝えるけど、たぶん増援は続けるだろうから、無理だけはするなよ」
携帯をきり、フェルマンさんや周囲にいる人達に教える。
「わかった。ひとまずは安心か」
「はい。でも、今だけかもしれないので、油断はできません」
「もちろんだ。すぐに次をおくろう」
その次となるメンバーたちに顔をむけ、
「むこうにいったら伝えてくれ。城の確保がすんだら、街のほうも見てくれと」
「「「「「はい!」」」」」
フェルマンさんの指示だしに、新たに送られる5名が意気込みのよい返事をした。
この5名で砦の中にいた100名が終了となる。
砦の外にいた人たちも続くようにきて転移。
続々とやってくる兵達が転移していき、1時間ほどたった頃。
「ヒサオ、向こうはどうなってるか聞いてくれ」
俺も気になってた頃だしと、再度通話をすると、
『城の制圧は終わったが、ちょっとおかしいぜ』
「おかしい? なにがだ?」
『街の方にいた人間達の姿が消えてんだよ』
消えて?
それって近くにいる仲間に増援を頼んでるんじゃ?
「態勢の立て直し? だとしたら、まずいな」
『かといってどうするよ。打ってでるにしたって、敵がどこにいるかわかんねぇぞ」
「うーん。わかった。フェルマンさんに聞いてみる」
そのままを伝えてみると、もう少し味方をおくったら、自分も行くと言い出した。俺とオルトナスさんは、このまま作業を続け、終わってからくるようにとのこと。
「了解じゃ」
「わかりました」
俺達の返事をきくと、もう待てないとばかりに単独で転移していく。せめて、俺の魔力を使っていけばいいのにと思うが、考えるだけの心の余裕がなかったのだろう。俺も実際とんでいって様子をみたいんだけどな~
「精霊樹はどうなっておるんじゃろ……」
作業を続けていると、手持無沙汰なオルトナスさんが、魔法陣を見ながら独り言を呟き始めた。
「無事っていっていましたよ」
「何も手出しをせんのであればよいが、人間たちは、アレが何なのかわかっとらんからな」
「そういうものですか」
まぁ、実際のところ俺もよくわかっていないが。
「まだまだ時間がかかりそうじゃな……」
「そんなに気になるんですか? ここにいてもやることがないなら、先にいってもいいような気がしますが」
「うーむ。しかし、魔法陣の使い方が尋常ではないからな。何かあったら対処できんじゃろ?」
「言われてみれば、そうですね」
ミリアもこの場にいないし、送りつける人数はめちゃくちゃ多いし。オルトナスさんがいうように、何かの問題が発生しても不思議じゃないか。
という会話をしていると、転移魔法陣がいきなり光だした。
「え?」
「ん?」
「なに?」
「どういうこと?」
その場にいた皆が色々な声をだすと、魔法陣の上に5名の獣人兵が出現し、
「ヒサオ様、急ぎアルフヘイムに! 」




