第145話 小太郎の現状
今回は不必要だったかな~ とも思いましたが載せることにしました。
ヒサオの友人である小太郎が、パソコン前に座りカタカタとキーボードをたたいていた。
「なるほど、こういう考え方もあるのか」
と、感心したような声をだしたあと、鼻先を指先でこする。
遠藤 小太郎。
冷たく冴えるような茶の瞳。髪はストレートな黒い短髪。唇は薄く出る声からは知性的なものを感じさせた。
大人びた顔立ちをしており、両親に心配されることがほとんどない中学3年生。恵子の両親からも信頼されており、将来的な展望も明るいぞ。
「これはどう考えるかな?」
カタカタと再度キーボードを走らせると、それに対する返答が数分待った後にかえってきた。
小太郎がパソコン前にいるのは、自作ブログを使っての、意見交換である。
なにの? と言われれば、世界同士の干渉問題についてだ。
例えば今、小太郎がうった文書というのは、
『世界を一つの船として考えた場合、その船同士の衝突は起こり得るだろうか?』
といったもので、これに対する返事は、
『おそらく、航路を時間あるいは歴史と考えてのことだと思うが、その考えだと高さがない。世界には並ぶもの。つまり平行世界だけではなく、上位世界という考え方もあるので、船という考え方だけでは成り立たなくなる』
疑問に対する答えではなく、例えが間違っていると返された。
「上位世界か。確か、ヒサオも落ちるような感覚があるって言っていたな。それにミリアというエルフも空から落ちてきたとか……」
聞いていたことを思い出していると、別の相手が、
『ブログ主が聞きたいのは、衝突のことだろ。世界同士が衝突なんてありえねぇよ』
と、コメントに対する、さらなるコメントが別の相手からされた。
小太郎が自分でつくったブログというのは、『異世界にいったら困ること』といったタイトルのもので、最初の頃はネタ的なものだったが、ここ数日は小太郎の誘導的な話題ふりで、多次元世界論について語られることが多くなってきている。
「なぜ、ありえないのか教えてほしい…っと」
そんな簡単な一言で、すぐに、
『仮に世界を一冊の本だとするだろ? そうすると、本と本がぶつかっても、そこに登場するキャラ達にはぶつかったという認識すらないんだよ。だから、衝突したという観測ができない以上、存在しないのと一緒だ』
『それだと、本の所有者にはわかることになります。衝突したという事実が発生することになりませんか?』
『このブログ主は世界の中にいるキャラ達にはわかるだろうか? という意味で聞いているんだろうが。ここまでの話で察しろよ』
コメをする人々の間で話が進み、それを読みながら小太郎は自分なりの考えを進めていいく。
他者の考えを得ることで、考えを深くしていくという手法を好むようだ。
「……なら、これは?」
カタカタカタカタ
『本に登場していたキャラが、別の本に登場した場合はどうだろ? 本来ありえないはずのキャラが登場するわけだから、その本の中で異変が発生するんじゃないだろうか?』
『おいおい、ブログ主よ。お前は、作者しか知らないような先の話をキャラ達も知っている前提で話を進めたいのか? いつから方針を変えた』
以前から荒っぽい発言をしている人が、ツッコミをいれてきて、ハッと小太郎も気付いた。
そういうことになるのかと気付き、頭を冷静にさせようと立ち上がり部屋をぐるぐる回りはじめる。
ヒサオ達の助けにならないだろうか? と始めた小太郎のブログも、今では物好きが集まりだして、結構な速さで会話が成立している。
それは助かるのだが、時折喧嘩腰で口論しあう人達もいて、対処に困ることがあった。
(やっぱり某提示版で話すべきだったかな~ でも、あの提示版だと色々な人が別の話題を持ちだすことがあって、聞きたいことが聞けない時もあるし)
だからこそ自分でブログをつくり、そこで話題の誘導をおこなっていたわけだが、それはそれで困ることもあるらしい。
(託宣発生の理由が12代目魔王の考察の通りだとするなら、それは異変を本のキャラ達が知ったことになる)
ということは、例えが本では駄目だ。
やっぱり船のような感じではないだろうか? と考え、再度席につくと、さらにコメントが追加されていて、どれどれと読みだす。
『このブログ主や、コメントをする人たちは何を言いたいのかよく分からない。多次元世界の考察は色々とでているが、宗教的なものから量子力学の話まである。真剣に知りたいのであれば、物理学の研究をまとめたサイトを覗くべきですよ』
『でた、真面目君!』
『物理学や宗教的なものも含めて、ネタ的な感覚で話あっているだけなので、真剣に考えないでください』
『ところで、先にブログ主がいっていた船についてだけど、その上を飛行機が飛んでいたら上位世界的な位置になるんじゃないかしら?』
『おっと、話が戻りましたか? 言われてみれば、それもそうですね。迂闊でしたよ』
『おいおい、俺の本としての例えにご不満が? でも、反論できねぇわ』
読んでみると、自分が書き込みする前に、誰かが船のたとえ話に戻していた。
(そうか船だけじゃだめだけど、その上を飛行機が飛ぶことを考えれば)
あれ、そうなると…
『船だと仮定すると、今度は衝突した場合、乗船している客たちには分かりますね』
そう打ち込むと、今度は、ありえないといっていた人が、
『そりゃそうだな。だけど、世界ってそんなにモロくできているか?』
『世界衝突と物理衝突を同じように考える事に無理がないかしら?』
『本も船もたとえ話としては駄目ってことかな? いや、それ以前に世界を他の何かで例えるのは無理があったのではないだろうか?』
『そういや、どっかのエライ人が泡で例えていたような気がした。あれなら、衝突ではなくて、合体とか融合になるんじゃないか?』
ピクリと小太郎の目がとまった。
そういう考え方もいいな。
でも、これも、どこかしっくりこない。
近いけど、何かが違うきがする。
うーん……
(考えるだけ無駄なのかもしれないけど……)
そうは思っても、3時間もしないうちにヒサオのほうから、その日起きた出来事の報告がくるため、考えずにはいられなかった。
自分ひとりの思考では、無理がありすぎると考え、こんなブログをつくりはしたが、情報をまとめるのに一苦労しているようだ。
「魔王さん思った以上に、待ち焦がれているようだし、そろそろ返事をしないとな。まったく、思った以上に難題だ。12代目魔王の考察どおりとしたら……うーん」
自分の考えに没頭しだした小太郎をよそに、彼のブログ内において、さらなるコメントが載せられているが、いつまでたっても結論がでない。
当人たちにとってみれば暇つぶしが目的なので、最初からでるわけがない。
それでも小太郎にとってみれば、思考材料の一つにはなっているのだろう。
カタカタと、ブログを利用しての雑談じみた多次元世界の話を小太郎は続けるのであった。




