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第137話 半年後の世界

4部スタートですが、いきなり時間が経過しています。申し訳ない。

 中立の立場だったエルフが、魔族との協力関係を表明した。


 理由として、異世界人達のことが挙げられたが、協力関係の最大理由は、イガリアとの休戦協定にあると同時に発表される。

 魔王の懐の広さゆえという噂までながれ、ヒサオにとってみれば、歓喜する結果となった。

 

 そのイガリアとの休戦協定に基づき『コルクス』という村がアルツ近郊に作られた。

 アグロやブランギッシュからは獣人や魔族達が。

 そしてアルツにいた人間も少なからず移り住み始めた。


 すでにブランギッシュはアグロを超す大きさの街となり、巨大な城壁と城の建築に着手していた。

 その背景にあったのは、もちろん精霊使いたちの働きもあったが、なにより大きいのは物流の流れにこそある。


 切っ掛けはヒサオが考え、アグニス夫妻が始めた、美味い料理の普及。


 アルツの街で始まった『異世界亭アルツ支店』は、無気力だったアルツ住民たちに活力をあたえ、美味い物を食べたいという欲求を高めることに成功。


 一つの欲求が高まると、次々に別の欲求が生まれだす。

 その欲求を満たさんとし、アルツに多くの物資が流れ始める。


 逆もまた然り。

 儲けの匂いに敏感な商人たちは、過激なまでの先行投資を行いはじめ、大儲けをした者たちも少なくはなかった。


 物流に最も貢献しているのは荷馬車と駅馬車であった。

 効率的な流通路が求められ、街道の整備が始まる。

 アルツ、コルクス、アグロ、ブランギッシュ、セグル、そしてエーラム。

 この6つの村と街を巡る物と人の流れは、それぞれの土地を豊かにしていった。


 無条件降伏したはずのアルツであったが、その気配すら無いほどに人々の顔には笑みがあった。

 魔族との休戦協定なぞ信用できるかと最初こそ言われていたが、それもいつしか聞かなくなり、今ではジェイド王の英断を称える声があがりつつある。


 イガリアで明るい話題が続く。


 魔族との休戦協定が決まり、半年の間で多くの物と人が流動する。

 流れる人の中には、これまで閉鎖的な種族とされていたエルフたちもいた。


「師匠、精霊樹の樹液がきれてますよ! 今朝もってくるんじゃなかったんですか!」


 早朝からミリアの声が、一軒の家から響いた。

 木造建築2階建ての家屋である。

 現状の帰還魔法研究室として建築されたものだが、普通の家となんらかわらない。


「おー すまんすまん。ちょっと行ってとってくるわい」


「今転移したら、魔力不足で帰ってこれないじゃないですか!」


「おっと、そうじゃった。ヒサオはどこじゃ?」


「いませんよ! すぐそうやって、ヒサオの魔力を使おうとしないでください!」


 2人ともが白衣姿である。

 オルトナスはボタンを閉めず、あけっぱなし。一応洗濯はされているようだが、おそらく一緒の部屋にいて影をひそめている少年がやっているのだろう。

 ミリアはといえば、編んだ金髪を肩にのせ、青い目をつりあげ、オルトナスにダメ元での説教中。こちらはボタンをキッチリ閉めているようだ。


「なんじゃケチくさい。あんなダダ漏れ状態なんじゃし、つかわんと損じゃろ」


「ヒサオは、魔力製造機じゃないんですよ?」


「似たようなものじゃろ。あれは、スキルなのか?」


「さぁ? 私にもわかりません」


「ふーむ。ミリアでも(・・)分からんのか……」


 チラっとミリアに意味深な目を向けて言うイケメンエルフ。

 その視線に気付かぬ様子のミリア。

 ひたすら影をひそめ、師のいいつけどおりのデータ取りを続ける若草色の髪をした少年。

 2階にはアルツから派遣された研究者が一人。そして純魔族の一人とゼグトがこの研究所に勤めている。ゼグトは研究ではなく、人間に対する監視役としてだが。


 もっと人数をいれようとしたらしいが、施設の状態を考慮し、しばらくはこの人数でやっていくとのこと。本来であれば、研究を行っていた人間が、あと3人はいる予定だったらしいが、現状では難しいのだろう。


 これについていえば、所長であるオルトナスにも問題があった。

 この所長、1人でつっぱしる悪癖がある。


 思い立つと何もいわず、どこかにいって何かを持ってきて、ふとした実験をして成功させるという、ナニソレズルイな爺さんだ。見た目は若いが。

 そのチート爺さんの実力をもってしても帰還魔法の実現はいまだできていない。


 そもそも、その爺さんの弟子であったメグミの考えを引き継いだ研究が続けられている。

 ということは、メグミのほうがナニソレズルイだったという事実になるわけで、このことはミリアも察していたりする。

 つまり、2人のナニソレズルイが揃っていても帰還魔法の完成はできなかったという事になる。

 それを考えると頭痛がするので、ミリアは考えないようにしていた。


 さて、なぜエルフの話から、オルトナスの事になったかというと、現在コルクスに住んでいるのは彼等だけではないからだ。


 ユミルから流れてきたエルフ住民が、このコルクスに住み始め出している。

 ダークエルフもそうなのだし驚くことではないのだが、今まで閉鎖的な社会で暮らしていたエルフ達がやると、何があった? と思ってしまうらしい。


 その関連で、現在ヒサオが魔王の元へ通話をしている。


 場所はブランギッシュにある自宅兼大使館。

 今日やるべき仕事も終わってないのだが、どうもエルフ達のことが気になり確認の連絡をいれている最中だった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「アルフヘイムが危なかったなんて聞いていませんよ」


 北の国ウース。その南西部にあるエルフの国アルフヘイム。

 かなり以前に人間達によって攻撃され半壊した話を、ヒサオようやくにして知った。


『かなりギリギリだったらしいから、一時的に住民を避難させたんだよ』


「それで、コルクスに?」


『うん。ユミルのほうでも手一杯だから、コルクスとアグロの両方に数人まわしてもらった。よろしくね』


「よろしく言われても、俺村長じゃないですよ?!」


『じゃあ、だれが村長なの?』


「今月はゼグトさんがやっています」


『……今月? 聞き違い?』


「いえ、あっています。先月はテラーが。来月は馬野郎の予定です」


『馬野郎……って誰?』


 そういえば、魔王さんとエイブンは会ってないか。


「いや、今はそういう話じゃなくてですね、アルフヘイムは大丈夫なんですか?」


『今は、ユミルの精鋭で防衛を固めながら、復興中だよ』


 復興中か。以前のアグロみたいな感じかな? あのときもアグロ住民を一時的にエーラムへ避難させていたっけ。


「でも託宣封印ができていたのに、ギリギリまで追い込まれたんですか?」


『ほんと危なかったらしい。どういうわけか、途中で撤退したらしくて、助けられた形になったようだ』


「撤退? 敵のほうが?」


『そう。不思議だろ?』


「ええ……現地で託宣が? いや、託宣封印できていたから出るわけがない。じゃあ、帝都のほうでそんな託宣が下った?」


『それはわからないよ。誰かを捕まえては吐かせないと』


「確かに――って、アルフヘイムが攻撃されたってことは、もしかしてムリエルもですか?」


 俺達がこの世界に来た時、3国にいるドワーフ達が一斉におそわれたことがあった。

 北のウースではコリンだけが生き残り、イガリアでは全滅。オズルにいたっては、生存不明状態。

 各々の状態は違うけど、託宣の内容はドワーフへの攻撃という点では一緒。

 ならば、今回のエルフ達への攻撃も、アルフヘイムにだけではないはずだ。


『もう隠す必要もないか。南のエルフ達も攻撃されたけど、こっちは無事だった。普通に託宣封印が働いている感じだったらしいよ』


 ムリエルは無事だったのか。オズルのほうでは、予想通りの展開になったわけでいいんだな。

 異常なのは北か……


「何か北と南で違いがあったんですか?」


『エルフ達の戦力バランスはほとんど一緒だよ。違ったのは人間側の戦い方さ』


「戦い方?」


 どう違ったのだと? と尋ねてみるとこんな感じだったらしい。



 北 ロナン帝国VSアルフヘイム


 一点集中攻撃で、結界がすぐに破られた。

 結界の破壊後、騎馬戦車(チャリット)隊がエルフ達を蹂躙。この騎馬戦車隊は、以前からある帝国軍の主戦力だったとのこと。

 エルフ側からの反撃もあったが、別方向から騎馬隊が襲い掛かる。

 結界をやぶった前面と、破られたあとに出現した騎馬隊。

 混戦している状況で、さらに帝国の獣人部隊が参戦。

 せっかくの精霊使いも混戦状態では意味が薄く追い詰められたが、どういうわけか敵が撤退。

 タイミング的にユミルからの増援と純魔族達の参戦が見つかったためでは? という考えもあるらしいが、実のところ理由が定かにはなっていない。


 簡単に言えば、実力で負けていたのに、なぜか途中で敵のほうから撤退した。

 これが北側の戦況だったようだ。



 南 リューガス公国VSムリエル


 結界を破ろうとするも、時間をかけすぎ。

 エルフ達の戦闘準備ができたとこで、結界がやぶられ、はいってきたところに魔法と弓による集中攻撃ができた。

 作戦らしい作戦もなく、エルフ達の攻撃はおもしろい様に当たるしで、なぜ攻めてきた? といいたくなる状況だったもよう。

 全滅寸前になった頃に、残った兵達が散らばるように逃げていったらしい。


 ついでに言うと、エルフの言う結界というのは、ダークエルフのとは根本的に違う。

 ダークエルフのほうは幻惑をかけ道を迷わせる。

 対しエルフ達の場合は、隔離結界ともいうべきもので、物の侵入そのものを許さないようになっている。



『もしかしたらだけど、北のアルフヘイムでは託宣封印が完全ではなかったのかもしれない』


「そういうこともあるんですか? かなり長いこと住んでいるんですよね?」


『そうだけど、ヒサオが前に教えてくれたように、託宣について曲解している部分が、まだあるかもしれないだろ?』


「ジェイド王に確認したやつですね。『勇者召喚された異世界人は、託宣にあたえる影響がない』っていう」


 以前思ったこの考えについて、ジェイド王に最終確認した。

 どうせなら、勇者召喚の決定権を握っていた王族にきくのが一番だろうとおもい、この内容について聞いてみたんだよ。そしたら案の定だったらしくて、むしろ魔族側が曲解していることに驚いたともいわれた。


『撤退した理由はわからないけど、今は動く気配がない。いまのうちにアルフヘイムの防備をかためながらの復興活動をしたい』


 そういうことで、住民たちの一時避難をしているわけか。まあ、わかった。


「とりあえず今月村長のゼグトさんには伝えておきます」


『う、うん。なんでもいいから、うまくやってね』


「もちろん。じゃあ、切りますね。また何かあれば連絡します」


 ガチャときり、うーんと椅子にすわったまま背伸びをした。


 北と南で、かなり違うな。

 とりあえず北は要注意だな。南はなんだかよくわからない。


 外は晴れか。


 昨日もミリアのやつテラーの家に帰ってないらしいな。

 研究に熱心なのはいいが、寝泊りはしっかりした方がいいと思うんだよな。

 ……よし、今晩の晩飯を奢りって事にして、こっちに連れ帰るか!


 そうと決まればさっそく!

 携帯を空間からとりだして、彼女へと連絡をいれた。

 今晩は何を食べるとしようかな?

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