第131話 久しぶりの3人
今回は短め。ここで切るべきだと神がいっていた。
『背に腹はかえられん』
という理由で、オッサンも交渉大使の一員となりました。
それはいいんだが、
「では、コリンも!」
「ヒガンも!」
オマケが2つ、ついてきた。
「駄目です」
「駄目はだめなのです!」
「そうなのです!」
……ヒガンちゃん。君コリンに似てきたね。悪いところが。
2人については、オッサンになんとか説き伏せてもらったけど、条件がついた。
『ユミルでの用事がすんだら、必ず直ぐに帰ってくること!』 という事だが。
生活費を渡さないといけないので、それはもちろんなんだけど、じゃあ戻って来たら仕事の方はどうすんだ? という話。
「終わったら、また鍛冶仕事にもどるわい」
「止めたり戻ったり……いいのそれ?」
「ガーグス達に泣きつかれた」
「あ、はい」
このオッサンは、どこまで頼られているんだ。
これは一種の出稼ぎ労働なのかもしれない。大使の名がなくぞ。
その大使という言葉についてだけど、俺達が知る大使とは若干異なるらしい。
大使と名がつく職についた人=魔王直属の部下。という意味らしいのだ。
だから、俺が外交大使についた途端、魔族さんたちがいきなり『様』づけし始めたのだろう。だけど、獣人の皆さまは違う意味で『様』づけしているようだが……
というわけで、あらかた問題が済んだので出発となる。
「ヒサオ。本当にいくのですか?」
「さっさといけ」
どこから聞きつけたのか、馬車に乗りかけたところをテラーに呼び止められ、馬野郎に追い出されかけている。なにがどうしてこうなった?
「言われんでも行くわ!」
「行くぞヒサオ」
「馬車がでちゃうわよ」
いっそ、その馬車をこの馬野郎に引かせてやろうかと思った。
馬車の後ろに乗り込む俺達。ちなみに荷物の一切合切は、俺の保管術でしまいこんでいる。
そうそう馬車で思い出した。
物資運搬のこともあって、今現在、セグル<>ブランギッシュ<>アグロの間をいくつかの馬車が走っている。荷馬車はもちろん、乗り合い馬車のような感じで、色々な人が行きかう感じになった。流通が良い感じに流れているんだけど、ミリアにとってみれば不満らしい。
「ブランギッシュにも転移魔法陣を設置してもいいはずよね」
馬車の後ろに乗り込み出発すると、隣にすわったミリアがいう。
「そうだけど、アレって使えない人もいるし、馬車のほうがよくないか?」
「使える人にとっては便利じゃない。緊急時の移動なら、断然魔法のほうが便利よ」
すぐに移動できないのがご不満のようだ。気持ちわかるが、
「こうした旅もよくないか? 俺けっこう好きだぞ」
「え? ……そ、そう。よかったわね」
言いながら、ミリアの顔が横へとむけられ表情が見えなくなった。機嫌を悪くしたのかと思ったが、そうした様子でもない。むしろ逆のような気がする。
「ヒサオ。鎖帷子のほうはどうだ?」
「ん? これか」
着ていた白いシャツを開き胸元を見せる。銀の光沢を放つアダマン製の鎖帷子がそこにはあった。
これで100万なり! 鑑定してみたら、150万って出てビックリした。お買い得すぎる。アダマンって凄いレアなんだな……
「具合いいよ。とくにひっかかりもないし」
「ならよい。着心地が悪くなったらいってくれ。調整してやる」
メンテナンスありで、この値段。超お買い得といっていいだろう。
ちなみにこの鎖帷子につかわれたアダマン鉱石って、最後にとっておいたものらしい。持っているのはいいが、作ったとしても買い取る人がいるかどうかで、悩んでいたとか……つまり俺の注文は、渡りに船だったようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
セグルについて、さっそくユミルに転移。つくなりミリアが地下室をキョロキョロ見回して、
「……あれ?」
「どうかした?」
妙な声をだしたかと思えば、石でできた階段をかけあがっていく。
ここってオルトナスさん家のはず。前に来た時と変わらない光景だし、妙なことはないんだけど、
「どうしたんじゃ?」
「さぁ? とにかくいこうぜ」
「ふむ」
一足さきに1階に向かったミリアを追いかけると、玄関口でまたもキョロキョロしていた。
「ミリア、どうしたんだよ?」
「誰もいないのよ」
言われ周りをみた。確かに誰も鑑定に引っかからない。
「出かけているんじゃ?」
「だとしても、誰か一人はいるはずなんだけど……監視を解除したの?」
「監視?」
……そういや、前にきたとき騎士風のイケメン男と、桃色頭の幼女がいたな。あれって魔法陣の監視をしていたのか?
「ちょっと外の様子を見てくるから、ここで待ってて」
と言い残し玄関から出ていくが、待っていられなく後をおう。
おー……森だ。
森の中に建てられた丸太建築の家か――何かと大変そうだな。
ログハウスのような家が2軒……ご近所様かな?
ところでミリアは? と思えば、もう一軒の家からでてきた。
「誰もいない……」
声がどこか寂しげだ。実家にかえってきたら、誰も家族がいなかったような声だ。
「俺探そうか?」
「あ、そうか。お願い」
検索鑑定のことを思い出して、さっそくオルトナスさんを……
名 前 オルトナス=エウロパ
位置情報 オルトイア城 精霊樹の間
……精霊樹って前に魔王さんが言っていたやつか。このままをミリアに教えると、
「予想はしていたけど、やっぱり師匠が関係していたのね」
「なんだ、知っていたのか?」
「あくまで予想よ。それに、たぶん……いえ、いきましょうか」
歩き出すミリアに俺とオッサンがついて行こうとすると、
「まてミリア。ここはモンスターがでるのか?」
唐突にオッサンがいってきた。
「……そうね。たまにでるけど、さほど強くはないわよ。それがどうしたの?」
「ふむ。なら、ヒサオ、ワシの盾をよこしてくれ」
「ああ、はいはい。ちょっと待ってくれ」
俺の保管術でオッサンの盾とランスを預かっていて、それが欲しかったようだ。
「盾だけでいいの?」
「ああ。咄嗟の場合に対応したいだけじゃからの。攻撃はミリアに任せてもよかろう」
「わかった。よいしょっと」
開けた空間からオリハルコンの盾を取り出す。夕暮れ時のような茜色の盾である。
「ほい。ミリアは杖が欲しいか?」
「私はいいわ。ジグルドにつくってもらった腕輪だけで十分だし」
普段から腕につけている銀光の腕輪。ルーメスという名の鮮血色をした宝石がつけられ、美術品といっても通じるような品だ。それを天の長衣という白いローブの上からつけている。
「まあ、モンスターがでたら、俺の鑑定に引っかかると思うけどな」
「そういえばそうじゃったな。メーターとかいうのが見えるのじゃった」
「懐かしいわね。最初の頃はそれで助かったわ」
2人からの視線がムズ痒いな。
メーターだけの状態だと鑑定ウィンドウは開かないから、携帯には登録されないのがちょっと残念……まあ、全部登録されたらされたで困りそうだけど。
ミリアが言ったように、2匹ほどモンスターがでてきたけど、本当に雑魚だった。
「これでテラーのやつもいれば、最初のころと一緒か」
「さそってもよかったんだけど、いまのテラーって、イルマとほとんど変わらない立場みたいだからな~」
「ほ? なんじゃヒサオ。お主、テラーに対して恨みはないのか?」
「いつの話だよ。もうないよ」
「そうね。殴り合った仲だしね」
そういってクスクス笑うミリア。
「どうしたヒサオ?」
「え? なにが?」
唐突にオッサンが俺の顔を見て聞いてくる。
「顔が赤いぞ?」
「……あれ?」
言われてみれば、ちょっと顔がほてっているな。
「なに? 風邪? 神聖魔法かけてあげようか?」
ミリアがクルッとふりむいて言ってくる。
「ん――いや、特に熱は感じないし、大丈夫だろ」
「そう? 無理しなくてもいいからね。また最初の時のように倒れられたら困るし」
「なんだよミリアまで。いいからいこうぜ」
まったく。この3人だと、色々恥ずかしいこと知られていて困ることあるな。
でも、まあ……
(悪くはないか)




