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第130話 転職?

 停戦の段階が過ぎ、正式な休戦が結ばれた。


 魔族達の中には不満を漏らすものは多かったと思う。

 ゼグトさんもその一人だけど、フェルマンさんが我慢しているので、口に出すことは我慢しているようだ。


 そのフェルマンさん達に連れられジェイドが帰るんだが、その間際に、


「会食の料理レシピはもらえないかな? できれば君が……いや、君は…」


 おれが異世界人だということを忘れるくらい、料理を気に入ったらしい。

 仕方がないので、ユリナさんがレシピを書いてジェイドに渡した。


「ありがとう、本当にありがとう!」


 ジェイド王がゴブリンのユリナさんと大喜びで握手してから帰っていく。

 皆がいなくなったあと、魔王さんに呼ばれたのでいつもの謁見の間へと向かった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「彼……帰る時は少しかわったね」


「え? そうですか?」


 そう言われても、俺にはよくわからない。フェルマンさんならわかるかもしれないが、俺にはさっぱりだ。


「うん。まぁ、偏見みたいのが薄くなった気がする」


「……そういえば、オニギリの件でゴブリンがどうこう口にしていましたね」


「そうだったね」


 なんか魔王さん元気ないな? 料理レシピを渡したのが気に入らなかったのかな?


「もし日本食が1000年前にもあったら……」


「え?」


 唐突になにを?


「……なんでもない。それより今後の事と、今回の報酬について話そうか」


「あっ! っと、報酬のことは、俺だけじゃなくてですね」


「わかっているよ。あのゴブリン夫婦の事だろ。もちろん、それも考えてのことさ」


 よかった。

 今回だした料理のメニューは俺の考えだけど、黒曜米を美味しく料理できたのは、あの2人のおかげだ。


「あと戦争から、ここまで活躍した分の報酬金は別に考えさせてもらう。そっちはフェルマンに渡すから、分配金をもらってくれ」


「え? 俺もらえるんですか?」


「……君、命がけで戦争に参加したんでしょ。そりゃあ、もらえるさ」


「いや、でも。俺はフェルマンさんについて回っただけのような……」


「そうなの? 報告書類だとそんな感じじゃなかったけど……まぁ、その辺はアルツから戦争賠償金をもらってからの話になるから、後の話になるよ」


「はぁ――」


 フェルマンさん、どういう報告したんだろ?


「そうだね~ アグニス夫婦には20万ずつ。合わせて40万の報酬としよう」


 これには同意して頷いた。

 米をうまくしたいという実績もふくめると、もっと多くて良いと思うんだけど、今回のコレは、それ抜きでの報酬だろう。


「で、君だけど……うーん」


「え? あの同じでいいですよ?」


「そうもいかないんだよ。外交大使としてブランギッシュでも働いているし、それも含めると同じというわけにはいかない」


「……ああ!」


 そういえば、そっちの給料的なものもあった。確か一ヶ月で50万だっけ?


「よし。君は80万だ」


「………んっと、外交大使の給料と今回の料理コースを足して?」


「うん。料理のほうが30万。大使仕事が50万。たしか、前に報酬を渡してから、一ヶ月たっているよね?」


「ですね」

 

 これ俺の一ヶ月の給料50万固定コースかな? ちょっと、もらい過ぎな気もするが、実際のところどうなんだろ?

 ということになって、ペリスさんがニュっと出てきて、俺に金貨のつまった袋を渡してよこす。どうやら財布を握っているのは、この人達のようだ。


「あと、君の今後のことだけど、ヒサオはどうしたい?」


「え?」


「ほら、外交大使っていう名目になっているけど、あれって僕が無理やりしたようなものじゃない」


「ま、まあ…」


 何をいまさらな感じがするんだが!


「ブランギッシュのことで十分な実績を残してくれているし、このまま継続でもいいんだけど、君たちは元の世界に帰りたいわけでしょ?」


「はい」


「だとしたら、その外交大使という役職は邪魔になってきてない?」


「………うーん」


 どうなんだ? わりと今のままでも自由に動けている気はするんだが……

 あぁ。でも、書類仕事が溜まってきているな。ブランギッシュが大きくなってくると、その分人口も増えてくる。そうなると苦情もふえてきて、俺の仕事が増えるってわけだ。自由が徐々に効かなくなるだろうな。


「合同研究ってそろそろ開始されますか?」


「そのつもりだ」


 やっぱりか。でも合同研究が開始されても……あ、そういえば。


「合同研究ってオルトナスさんも参加するんですよね? もしかしてですけど、エルフが中立っていう話は……その……」


「……バレてる? うん。エルフの中立というのは、真っ赤な嘘でね。色々都合があって表面上は中立という立場のままになっている」


「それ、フェルマンさん知りませんよね?」


「……フェルマンだけじゃないんだけどね。カリス爺は知っているけど、他の部族長には話していない」


 うゎ! それ不味いんじゃ……あんた、頭をポリポリかいてる場合じゃないでしょ。


「いつかはと思っていたんだけど、歴代の魔王達みんなが保留しちゃって……結局僕の代まで……どうしよか?」


 チラっと俺をみてもどうにもなりませんよ? 何をどうしろというんだ。


「母さん繋がりで、察した人は多かったんじゃ?」


「あれは、紹介した相手がオルトナスだったから、あまり関係ないかも」


「え?」


「オルトナスは、昔から種族関係なく顔が広いのさ。中立のはずなのに、平気で結界の外にでて旅してまわっていてね。だからそれ関係で、僕とも知り合いだと思われている」


 なるほど。それでカリスさんとオルトナスさんが一緒にいても、誰も何も言わなかったのか。むしろ知らない俺だからこそ気付けたってことか。


「そうだ。バレてるなら、ヒサオが交渉役になってよ!」


「……はい?」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「と言うことで交渉大使になりました」


「意味わからないわよ」


「ワシもじゃ」


 ブランギッシュにもどり、ミリアとオッサンを自宅兼大使館に呼んで、久しぶりに3人そろって話をしている。

 魔王さんと話しあった内容を全部話したんだけど、意味不明と言われてしまった。仕方がないので再度分かりやすく説明。


「俺達は元の世界に帰還したいわけだ。でも、そのためにはエルフの協力もほしい。これはわかる?」


「うん」


「それは分かる」


 2人がソファーに並び座り頷いた。

 俺はといえば、そんな2人の前にすわり手を組みながら説明を続ける。


「でも、エルフって表面上中立なわけで、今のままだと合同研究に参加させづらい。なので、表向きでも協力関係という立場にしたいわけ」


 これにも2人は頷いた。さて……


「そこで、俺たちが間を取り持ったという形で話を進めたいらしい」


「「……」」


 呆れた目をされた。俺も聞いたとき、そんな目をしたと思う。


 早い話が、俺達が話をもちこんだから、エルフ達とも同盟を組めた。という形にしてほしいらしい。

 交渉大使なんて名前だけど、何もしなくていい。

 実際は、トップ同士で話を済ますので、俺たちは表向きの役者を演じればいいっていうことらしいのだ。


「それ、ヒサオだけでよくない?」


「うむ。ワシら何もせんのじゃろ?」


 最もな疑問なんだが……


「ここんところ、俺の評判が上がりすぎでして……その――」


「まさか、それが理由?」


「……呆れたわい」

 

 2人とも2重の意味で呆れた!


「だって、城にいる魔族にも『様』づけで呼ばれるんだぞ!」


 前から気にはなっていたけど、これでエルフの国との同盟も取り付けたとかなったら、俺英雄扱になるじゃねぇか! そんなのやだよ!

 なので、少しでも評判を分散させたいのと、異世界人達が望んでそうなったという表面的な信憑性の後押しも考えて、この2人を巻き込もう―――誘ってみようかと思いました。


「もう遅いんじゃない?」


 何をおっしゃるミリアさん。物事に遅いなんてないのです。エライ人がそういっていました! 意味違うけど。


「ワシ、ブランギッシュに家があるんじゃが?」


 俺もだよ! ここがそうだよ!


「でも、まあ、私はやってもいいわよ。今のところ働いていないわけだし、少しでもお金を稼いでおきたいわ。それなりにはもらえるんでしょ?」


「うん。一人、70万もら「やるわ!」…える」


 即答ですか、そうですか。


「オッサンはどうする?」


「む、むー……鍛冶をやるより稼げそうじゃが……」


 悩んでいるな。なにしろヒガンという子供を養う立場になっちまったからな。

 オリハルコンやアダマンなどの鉱石は使い切ったらしくて、多くの獣人や魔族の武具が充実している。

 アルツとの戦争のために使ったんだけど、問題はそのあとだ。


 武具がよすぎて買い替える必要がない。


 ということは、オッサンのように武具制作をしている職人にとって、客がつかない状態になっちまった。


 少しは従来からある品々が売れているらしいが、確実に客の足が減っている。今は、細工物とか、生活用品なんかのほうで食いつないでいるらしいが、それだってどこまで持つか……


 まあ、オッサンの家族だけならいいんだが、ガーグスさん達のこともあるからな。

 どうやら、あそこの鍛冶場の一員となったらしくて……というか親方になってしまったようで、またしても背負う人々が増えてしまっているようだ。


「少し考えさせてくれ。鍛冶場の連中とも相談をしたい」


「わかった。すぐに動くわけじゃないから、数日は返事を待てるよ」


「何かする予定なのか?」


「一応ユミルにいって、むこうの王様やオルトナスさんに会って話をしてくる」


「なんじゃ。結局やることはあるのではないか」


「そりゃあね。黙ってここにいたら、フェルマンさん達にも怪しまれるだろうし」


 元々、各族長に黙っていたのがこんなことをする原因なのだ。


「ユミルの王さまか。じゃあ、私の出番ね」


「え? ミリア知り合いなの?」


「顔見しりではあるけど、ヒサオと魔王様ほどの付き合いはないわ」


「助かるよ。俺どうしよかと思ってたし」


 そういや、前に一度ユミルにいったとき、ミリアが城にいってて会えなかったことあるな。


「む―…」


 オッサンが腕をくんで悩んでいる。


「オッサン、鍛冶場の人達と相談するんだろ? それでいいじゃん」


「……いや、それはそうなのじゃが、別問題があったわ」


 まだ問題があったのか?


「どうしたのジグルド。相談ぐらいのるわよ?」


 オッサンの隣に座っているミリアが悩むオッサンの顔を覗きこむように聞くと、


「……コリンとヒガンじゃ。家を留守にするとしたら、ついてきかねん」


「「………」」


 俺とミリアは互いに顔を見合わせ、この大問題にどう対処しようか悩んでしまった。

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