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第118話 族長として

 翌朝になり、朝食をとったあと話あった。

 まずは勇者3人の今後だけど、これについては、


「話あった結果、3人とも眠ることにするよ」


 どうやら一致したようだ。ケイコを気絶させずにすんだ。


「ごめん、ヒサ君」


「いや、助かったよ。コタにあれこれ言われずに済む」


「……心配してた?」


「そりゃあな」


「そか」


 こいつ、頬を朱に染めやがって……何とか無事に帰りたいな。


「ジグルド。まかせる」


「安心しろ。必ずジンドの元へ帰す」


「頼む」


 この2人はあいかわらずのテンポで会話をするな。要点だけで終わる素晴らしさよ。

 思っていたよりすんなり決まったな。

 まあ、煮え切らないのが一人いるけど…


「フェルマンさん、まだ悩んでます?」


 城へと向かう途中、悩んでいますと顔に書いているようなフェルマンさんに声をかけてみた。


「……仕方がないだろ。いきなりあんな話をされたんだ」


「それはそうですけどね」


「俺は部族の長なんだぞ。自分が納得できないのに、部下をつれ戦えるか」


 やっぱり昨日の話が原因か。自分が知っていた歴史と違いすぎて消化不良みたいな状態なのかな?


「でも、あの話からすると、先代はしっていたんですよね?」


「……たぶんな。今思えば、そんな感じもあった」


「例えば?」


「俺がニネンエークミについて聞くと困った目をしたり、歴史を教えてもらうときも、時折矛盾があるようなことを言っていた。あれはきっと誤魔化そうとして誤魔化しきれなかったのだろう」


 あー なるほど。と、隣を歩く俺が頷いた。

 じゃあ、親父さんは納得したうえで、魔族として動いていたってことか。それは、フェルマンさんもわかっているだろうし、あえて言うことでもないけど……だから悩んでいるのかもしれない。


「……親父は、なんであんな話を」


 ボソっとつぶやく声がきこえ、予想どおりと思い、それ以上話をしなかった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 昨日のように玉座にすわりまつ魔王さんに、3人の意思を伝えると、


「わかった。君たち3人はここに残ってくれ。あとで案内するよ」


「あれ? 魔王様、俺達は見ちゃだめなんですか?」


 一応見ておきたかったんだけど駄目かな?


「んー すまないが駄目だ。あそこは例外中の例外でね。できるだけ人をいれたくない」


「そういわれたら仕方がないです」


「とにかくこの3人は預かるよ。ぼくが責任もって守ろう……」


 言いながら魔王の目がむいたのは、フェルマンさんだった。


「フェルマン。悩んでいるようだけど、君はどうする? まだ、魔族として僕に協力してくれるのかい?」


「……私は魔族としての誇りを捨てるきはありません」


 言うフェルマンさんの声は、しぼりだすようだった。


「うん。ありがとう。今は、それだけでいいよ。君の父もそんなことをいっていた気がするし」


「……父も悩んでいたのですか?」


 尋ね聞くと、魔王さんが手と顔をふった。


「君の父親だけじゃない。ほとんどの者が悩んでいる」


「皆……それでも従っているのですか?」


「それも違う」


「え?」


「表面的には従ってもらっている。でも、僕が信頼できないと思ったら、すぐ離反するだろう。獣人やエルフのように」


「選ぶのは私達のほうだと?」


「そう。その権利が君たちにはある。僕たちはその選択に身をまかせるしかない」


 顔をゆがめ、まだ何かを秘めているような笑みをみせてくる。

 フェルマンさんは、少し悩んだが、最後には首を縦にふった。


「見定めるためにも、この先も以前同様の協力をお約束します」


「……うん。族長の目だ。皆もそんな目で僕を見定めてるよ。これからもよろしくね」


「ハッ!」


 フェルマンさんの気持ちが定まったのかな? 気持ちが引き締まったような返事だった。


「じゃあ、まずは、ジェイド王子の護衛を頼もうかな。まあ、こっちは誰でもいいけど、人選はフェルマンにまかせるよ」


 おっと、その人選にいれらるかもしれないな。その前に、これを確認しておかないと。


「1ついいですか?」


「うん? 文句ならきかないよ」


 いや、そうじゃないから。こんな場面で言わないから。


「ラーグスの件です。北に逃げたようなのですが……」


「……昨日言っていたね。何かあらたな武器開発をしたものを持って逃亡したとか。気にはなるけど」


「持って逃げたものなんですが、おそらくエンジンに相当するものかと思います」


「………………」


 あ、固まった。

 魔王さんが、半開きで口を開いたままだ。

 金魚のようにパクパクしないだけましかな?


「いや、無理でしょ? なに? え? どうして作れるの? ちょっと君の知識って……あ、もしかして、君がきた時代の教育内容ってかなり進んでいるのかい?」


「進む? あー そうか。俺と魔王様って、ほとんど同じ世界のような気がしていましたけど、異なる可能性もあるんですね………えっと、じゃあ、こういうのは知っています?」


 といって、俺は携帯電話をとりだしみせると、


「なにこれ? おもちゃ?」


 あ、やっぱりか。


「これ携帯電話といって、俺がいた世界で普通に使われる電話機です。いまじゃあ、これより便利なものありますけどね」


 スマホほしいんだけど、とりあえずこれで間に合っているから、買い替えていないんだよな。


「電話? これが? 電話線どこにもつながってないよね? どういうこと?」


「……そこからでしたか」


 考えもしなかったけど、ごく普通に当然だったよな。

 俺と魔王さんの世界は似た世界かもしれないけど、少なくとも時代は違うようだ。


「えっと、この携帯については、あとで説明を。とりあえずさっきいっていた、俺の一般教養ですけど、そこまでは高くないです。成績もわるかったし……」


 生きていてすいません、という言葉がなぜか脳裏に浮いた。


「なに一人でめげているんだい? 勝手におちこまないでくれるかな?」


「はい。まあ、そういうことなのでエンジンの仕組みもザッとしか知らないので作れといわれても作れません」


「……じゃあ、なぜ作れたんだ?」


「完成ではないと思います。ですが、それに近いものはできたのかと思いますね。ジェイド王子も詳しくは知らないと言っていました」


「……うーん、困るな~ もしエンジンとか量産されたら、自動車とかバイクとかでてきそうだ。あんな機動力の高いもので移動されたら、対応しきれないよ」


 そっか。

 俺は戦車や装甲車のことを想像していたけど、機動力があがれば、それだけで先手がうてる。それは大きな戦力になるのか。

 移動速度の向上か……こっちもなんとか…ん? なんかツンツンと……


「ミリア、なに?」


「……ねぇ、ヒサオって、やけに魔王様と親しくない?」


「え?」


 そこで気付く。

 俺をジーとみる目に。


「昨日から思っていたのだが……ヒサオ。お前、魔王様の正体をしっていたのか?」


 フェルマンさん。そんな俺にジリジリ寄らないでください。男に迫られる趣味はないです。


「これってどういう状況なのか知らないけれど、ヒサオ君は、何か隠し事をしていたのかな? しかもミリアにまで……」

 

 ルインさんまで! というか、なぜ怒っているんです! 目でわかりますよ!


「まあ、ヒサオじゃしの」


 オッサン! そんなこと言うな! カバーしてくれ!


「ヒサ君だしね~」


 ケイコ! てめぇ!


「………」


 カテナさん。なぜ無言で俺を見つめるんでしょうか?


「これどういうこと?」


「えっと、ですね……」


 ここはせめて張本人に出張ってもらうとしようか。


「魔王様!」


「最初に会った時に教えたはずだけど、何、黙っていたの? ひどいね、ヒサオ」


「まてや! ちがうだろ! あんたが隠しておいてくれって……あっ!」


「「「「「「……………」」」」」」


 ジーと俺達を見ている視線が痛い。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 全部暴露しました。

 ええ。そりゃあ、もう。

 俺は懲りたね。前はペナルティー隠してやらかしたし、今回は魔王様の事知っていて隠していたし。

 あれだ。人間オープンが一番だな。

 うん。俺15歳にして悟ったわ。


「もう隠していることないわよね?」


「ないない。ミリアに睨まれるようなことしてない」


「………」


 怖い。今までで一番怖い。心の中にまではいってきそうでスゲェ怖い。

 殴られたほうがまだましかもしれない。

 そんな目でジーとみられてて、蛇に睨まれたカエルのようだった。


「ミリア……君はやはり……」


「え? なに兄さん。何か言った?」


「……ヒサオ君………いやいい。私が口を出すのは無粋というものだ」


「はぁ?」

 

 なんだ? ルインさん急に落ち込んだぞ? この人も良くわからない人だな。

 オッサンとカテナさん以外が色々反応しめしたけど、落ち着くまで結構時間かかって、ようやく話しの再開になった。


「ラーグスの件は分ったけど、君には君のやることがあるんじゃないか?」


「え?」


「君、外交大使だろ。ジェイド王子のこともだけど、ブランギッシュのほうにも顔だしてほしいんだよ。しばらくいってないんじゃないか?」


 むしろ喜んでいきたいです。でもそれでいいのか?


「それは構いませんが、ラーグスの件はどうするつもりです?」


「うーん。今は手をだしてほしくないな。気にはなるけど、北には北の事情があってね。まあそれは南も一緒だけど、とりあえず、現地にいる仲間たちを信用してほしい」


「それでいいんですか?」


「うん。そもそも、彼が持っているそのエンジンもどきって君の知識が元でしょ? たぶん、託宣を邪魔するんじゃないかな? 最悪、ラーグスが異世界人扱いになるかもしれない」


「!? そういうこともあるんですか!」


「わからないよ。こういうことって初めてだし。ただ、基本的に僕は、国のことはその国に住んでいる魔族達にまかせてきた。彼らには彼らのプライドがあるからね。それを邪魔したくないっていうものある」


「色々考えているんですね」


「これでも魔王だからね」


 俺と魔王さんの間で話がすすみ、最後は2人でニコっと微笑み合った。


「あとは……そっちの2人だけど、えっと……エルフの子、名前は…」


「私? ミリアですよ」


 ……またか。昨日はちゃんと名前を呼べていたのに、いきなり忘れるとかあるのか? 


「そうそう、ミリア。君は世界樹の巫女といったね? 今でも世界樹と交感できるのかい?」


「そのことですが……申し訳ありません。今はおそらくできないと思います。前にいた世界で、無茶をしたせいで…」


「ん? ごめん。どういうこと?」


 魔王の目が明らかに変わった。

 俺と話しをしていた時とは違って真剣未が増している。


「簡単にいいますね。あまり話したいこともでないので」


「わかった。お願いする」


 そう前おきしたミリアの話はこうだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 1度目の世界。

 勇者召喚されたミリアは、最初5人の仲間を集め旅をしていたらしい。

 ところが、その旅の最中に1人やられ2人やられと、ミリアを含め3人になった時、残った2人がミリアを裏切った。


「裏切り?」


「はい。強敵を前にし勝てないと思ったのか、私を餌にし逃げました」


「………」


 半年以上一緒にいた仲間にそうしたことをされ、なんとか命を拾ったミリアは、仲間を頼ることをやめた。


 自分ひとりで魔王を倒す。


 そう考えたミリアは、自分を攻撃魔法特化へとスタイル変更。仲間と一緒のときは回復特化型だったらしい。

 これは以前からいっていた例の呪いによるものだろう。


「この呪いをつかえば、どれか1つの魔法系統を極めることができますが、逆に他の魔法が全く使えなくなるうえに、魔力感知も極端に下がります」


 前にテラーたちに襲われた時に聞いたやつ。


 この呪いというのは、常に魔力消費が必要な物らしく、ミリアがもっている世界樹の杖がないと効果を維持できないとのこと。

 術の発動までも時間がかかるものらしく、常にかけていないと、いざという時に使えないという話だ。


 そうした特定条件を満たし攻撃魔法特化スタイルになった。

 最高レベルの攻撃魔法を使い魔王軍を1人で殲滅。そのまま魔王も討伐し、無事帰還したらしい……が、


「私に待っていたのは、世界樹の声が聞こえなくなったという現実でした」


 無事に帰還はできたものの、ミリアにまっていたのは、落胆した村の住民たちの視線だったという。



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