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第113話 悩みあれこれ

 アグロにつくと、皆が別れ始めた。

 アグロの街も復興途中だけど、ブランギッシュもほっておくわけにはいかない。

 基本この2つの街に別れるんだけど、俺達異世界人組と、フェルマンさんは、カリスさんに報告したあとエーラムに移動し魔王と会うことになる。

 とりあえず今日一晩は、いつものポンズさんの宿で宿泊だ。


「ふぅー オッサンと寝泊りも久しぶりだな」


 ベッドにドサリと腰を落とし座る。


「ヒサオ。報告はすませたのか?」


「ああ。フェルマンさんと一緒にしてきたよ。イルマはそのままブランギッシュに戻ったけどね」


「あやつも指揮官ではないのか?」


「そうだけど、イルマの場合、現場指揮官タイプだから。報告みたいなことは向いていないんだよ」


「ふむ。まあ、お前たちが良ければそれでいいが…」


 何かを口に含んだまま言いあぐねている様子にみえる。オッサンにしては珍しい。


「気になることでもあるの?」


「……魔王というのはどういう御仁じゃ?」


「え? どういう―……うーん、頼りになるとは思うよ?」


「なぜ顔を捻った」


 いかんつい無意識にやってしまった。


「どういえばいいのか……」


「掴みどころがない感じか?」


 俺の様子を見てそう思ったのだろう。オッサンの言う通りかもしれない。


「そんな感じかな? あのカテナっていう人を会せるのが心配?」


「魔王じゃしな。ワシの世界の魔王というのは、傲慢不遜を体現したような奴だったらしい」


「オッサンの世界にもいたのか……」


「そうじゃな……そういえばミリアも2度の世界で魔王討伐を目的とし呼ばれたらしいの。魔王というのはそこら中にいるのではないのか?」


「俺の世界にはいませんでしたけど!」


 少しだけ声をあげたけど、別に怒っているわけではない。

 だいたい魔王はいないかもだけど、裏で世界を牛耳っている奴は、いるのかもしれない。


「まあ、大丈夫だよ。会っていきなり勇者は殺すとか言わないはず」


 何しろ元勇者だし。

 俺の母さんとも知己だったらしいし。そういうことは言わないだろ。

 そう言えば、2年A組の一族ってたぶん元勇者達だったんだよな?

 それが起源の魔族になって、亜人たちを助けた。っということで間違いないはず。


 あれ? 母さんと一緒? 人間たちを裏切って亜人側についた?

 じゃあいつから? 

 それにまだ生き残りがいるとかいっていたけど、もう千年以上前の話じゃなかったっけ? なんで生きてるんだ?


 ……もしかして、魔王のあの青白い肌ってスキルとは違う?

 あまり言いたくなさそうだったから、深く考えないようにしていたけど、色々おかしな点があるな。

 今度、人がいないときに尋ねてみるか。


「どうしたヒサオ? 急に考えこみはじめおって」


「え? あ、うん。ほら、オッサンがつれてきたヒガンちゃんが、可愛いね~とおもって」


「なぬ! 突然どうした!」


「い、いや…」


 特に何も考えずに言っただけだけど? そんなに反応しちゃうわけ?

 オッサンの実の子ではないとは聞いているけど、扱いは実の子レベルだな。


「オッサン、エーラム行きでいいの?」


「バカモノ。カテナを1人にしておけるか。あいつには弟が世話になっとる」


「そういえば言っていたな。弟さんの嫁候補だっけ?」


「まぁの。なんとしてもカテナだけは元の世界に帰さねばならぬ」


「……」


 カテナさんだけ(・・)は……か。オッサン悩んでいるんだろうな。

 そりゃあ、あれだけ可愛がっている子供がいるなら、別れづらいか。


 あのヒガンっていう子供も謎だよな。

 たぶん、あの子をつれてくるのが大事な目的だったんだろうけど、具体的にそれでどう変わるんだろ? 

 オッサンは教えてくれる様子がないし、フェルマンさん達は聞かないようにしているみたい。

 おれも深く考えないほうがいいんだろうな。

 おれがモヤモヤと考え事をしていると、オッサンはゴソゴソと布団の中にはいっていく。

 もう寝る時間か。俺も……あ。


「ちょっと外で通話してくるよ」


「ぬ? 例の報告か?」


「うん。じゃあ先に寝ててくれ」


「わかった」

 

 部屋の扉をバタンとしめ、一階へと降りていく。コタに連絡をいれるためだ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 人気のない一階へと降りる。食事をするテーブル席へと座ると、携帯を空間から取り出してコタへと電話をかけた。

 ここ最近は、夜になると電話してコタに報告をいれるようにしている。

 ケイコもこっちにきたせいで、むこうの親御さんも心配しているし、なによりコタ自身が軽くパニックを起こしやがった。


『もしもし、待ってたよ!』


「今晩は。恵子は元気です。じゃあ、また明日」


『待ってよ! それ報告になってないから!』


「軽いジャブだ。気にするなよ」


『時間もあまりないんだから、つまらない冗談はやめてくれない?』


「つまらないとか! ああ、でも昨夜とほとんど変わらないぞ? だいたいケイコと昨日話をしただろ? ってそっちだとどのくらい前?」


『2時間30分ぐらいまえかな?』


「そのくらい我慢しろよ! 今度から2日に1度にするか」


『ヒサ、ひどいよ! 戦争に恵子も参加したんでしょ? 心配して当然だろ!』


「え? いや、戦争というか、戦争前の救出作戦だな」


『……それ、具体的にはどういう感じ?』


「4人で敵の城にのりこんで、地下に囚われていた2人を救出。そのまま自力で脱出?」


 言っていて思うが、なんて無茶なことをやらせたんだろ。怖いわ。


『ヒサ! なんてことをやらせるんだ!』


「考えたのは俺じゃないんだが、別に反対もしなかったけど」


『当然ヒサもいったんだよね?』


「おれ? いや、外で戻ってくるのを検索鑑定しながら見守っていた」


『鬼なの? 悪魔なの? いじめっ子なの?』


 なぜ、その3つ。


「言いたくなるのはわかるが、作戦実行した4人に何かあれば分かるようにする為だったんだぞ」


 あの場合、4人の状態に変化が見られれば、俺たちはすぐに突撃するつもりだった。

 そして陽動をかけて、脱出を手助けするはずだったんだよ。

 もし、駄目だったら別の手も考えていたけど、まずはどこにいるのか把握できる俺がフェルマンさんの側にいないと駄目だったってことだ。


「って、こうしている間にも時間が過ぎていくんだった。本日の連絡事項は一つだけだ。俺たちはアグロに無事ついた。明日にはエーラムにいって、3人を魔王に会わせるよ」


『魔王か……人間なのに魔王やっているんだよね? そのあたりの理由ってわかったの?』


 コタも同じような事考えたか。今まで考えないほうがむしろおかしいけど。


「いや。聞きづらいってのもあるけどな。何か事情があるようで、深く立ち入りたくなかった。それに俺やらかしているし」


『例のペナルティーね。でも、もう聞いておくべきじゃない? アルツが降伏したんでしょ? なら帰還の研究情報が手に入るし、そうしたら本格的に合同研究がはじまる。魔王のことも知っておいたほうがいいんじゃないかな?』


 コタのやつ落ち着いてきたな。ケイコが無事だとわかるとこれだ。これで隠しているつもりなんだろうな。


「……だよな。絶対2年A組の一族だって何らかの行動をしたはずだし。それだって参考になるだろう」


『うんうん。もしかすると、魔王の方から話してくるかもしれないね』


「だといいな」


『明日会えるんだよね?』


「予定ではな」


『じゃあ、2時間30分後にまた連絡よろしくね。僕は寝ているけど』


「そっちは夜か。これも時差というべきか」


『そうなんじゃない? 恵子のご両親には連絡しておくよ。戦争のことは抜きで』


「ああ、頼む……ああ、ちょいまて!」


『え? なに? まだ何かあった?』


 言っておくの忘れてた。


「んとな、ラーグスが逃げた」


『うん? それ聞いたけど、北の方にでしょ?』


「そう。それでな。聞いた話だと、どうもエンジンみたいのを作って、持ち逃げしたらしい」


『はぁ!? そっちの文明でエンジンなんてできるの!』


「分からない。そもそも俺達の世界と文明の基本が違うんだよ。精霊とか魔法がかかわってくるみたいだし」


『……いいな、ヒサもケイコも実際にみれて。僕も見たいよ』


「ついでに人間がバッサバッサ切られていくところも見れるぞ」


『やっぱりやめておくよ。僕は平凡な一般人でありたい』


 まるで俺がすでに違うような言い方だな。いっておくが、ケイコも見てるぞ。


「でだ、もし装甲車とかつくりだしたらどうしたらいいか、アイディアない?」


『……それを僕にきくの? 精霊の力や魔法の力を見ているのってヒサじゃないか。どの程度の力なのか、僕わからないんだよ?』


「うーん。呪文一発で広範囲が闇に覆われます」


『……え?』


「ちょっと唱えれば300m先の場所に3mほどのゴーレムが出現します」


『ちょ! それで装甲車おしつぶしなよ!』


「いや、だって土だぜ? 引かれて砕けるんじゃない?」


『砕けてもいいじゃない。足止めになるし。もし装甲車だったら、乗りあがってひっくり返る可能性だってあるよ』


「あ――うん」


 言われてみればそうかも? なんだか、近代兵器より精霊のほうが怖くなってきた。


「なんとかなりそう?」


『なるんじゃない? 装甲車とか戦車の中には、走る棺桶って言われたものがあるってさ。中途半端な技術でつくったら、無駄に兵を殺すだけじゃないかな?』


「……もしかして心配して損した?」


『その時にならないとわからないな~』


「そか。分かった。相談したらちょっと安心した」


『まぁ、作られないのが一番いいけどね』


「そうだな。じゃあ、きるな。おやすみ」


『ちゃんと2時間30分後によろしくね~』


「気が向いたらな」


『ちょ!』

 

ガチャリ


 有無をいわせず切った。ウハハハハハ。


 ――俺も寝よう。明日は魔王との謁見か……もう何もいわれないよね? ね?

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