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第101話 仲間

 いてててて。

 あっちこっちが痛い。

 テラーのやつ最後のほうは遠慮なかったな。

 記憶にあるのは、最後の左ストレートだけど、腰がはいったいいパンチだったぜ。


 世界とれるんじゃね?


 ……バカなこといってないで起きるか……ってあれ?


「気付いた?」


「お、おぅ。で、これは?」


 俺の腹がさらけ出されていて、そこにミリアの手がおかれていた。


「治療よ。獣人の攻撃をモロに腹にくらっていたから、内臓が少し危なかったわ」


「マジか!」


 あいつどんだけ遠慮なしだったんだ。


「嘘よ。そこまでひどくないけど。一応、魔法をかけておいたわ」


「ミリアさん、そういうギャグは怖いっす」


「フフ。大丈夫そうね。他に痛いところある?」


「うーん」


 両手をあげ手を握ってみる。大丈夫だな。足の方は…問題ない。

 おもえば、顔と腹と首筋がやられたのか。あと地面にキス…‥


「顔のほうの傷って大丈夫かな?」


「うん。そっちはもう薬をぬったわ。血もとまってるわよ」


「薬なの? 魔法じゃなくて?」


「外傷に関していえば、魔法より薬のほうがいいわ。魔法に頼りすぎると、自然治癒力が徐々におそくなるから」


「そういうものなのか……たすかったよ」


 と、いい、起き上がろうとすると、


「もうちょっと寝ててもいいわよ……」


「え?」


 すっと俺の目にミリアの手がのってきて目隠しされた。


「いいから寝てなさいよ。明日の朝にはここでるんだから」


「……ああ、そうだな。ミリアこそ寝ないとだめだろ?」


「私は大丈夫よ。これくらい研究でなれてるわ」


「そうか……そういえば、母さんの本どうだった?」


「………」


 あれ? 返事がねぇな?


「どうした?」


「ううん。メグミさんの必死さが伝わってきて……すごくあなたに会いたがっていたんだろうな~って……」


「あ、ああ、最後のページか」


 俺も最初にみさせてもらったページ。あれをみたのか。


「それだけじゃないわ。発想がとにかく凄いし、その原動力がどこにあるのかも、すぐにわかった」


「そんなにか? 俺魔法のこと知らないから、何かいてるか分からなかった」


 そういや、ミリアに魔法の習得禁じられてたんだった。魔王に頼んでもだめだったし、あきらめるかな~

 そんなこと考えていると、手がすっとどけられて、目の前にミリアの青眼があった。ちょっと近いんですけど!


「知らなくても無理はないけど、アレを師匠と2人で考えて進めていたなんて思うと、とんでもない天才よ」


「そ、そうなの?」


「そうなのよ!」


 あ、こいつ興奮してやがる。妙に鼻息が荒い。


「あなたの母さん何者なのよ? 普通の主婦だったんでしょ? なぜ短期間であそこまでのことができたの?」


「……それ俺にきくか?」


「……そうね。ごめん」


 急にしおれて、顔が離れた。ふぅ―


「そこまで真面目に謝らなくてもいいって」


「そうね。ちょっと私おかしいかも?」


 俺に言わせれば、かなり変だけど、まあ、たまには…


「あと、母さん。主婦ではないと思う。離婚していたわけだし」


「え? そうなの?……そういえば、あんたと、お母さんの名前しかなかったわね」


「早苗バァちゃんのことだろ? うん。聞いた話だと、俺が生まれて2ヶ月ぐらいで別れて、家にもどってきてすぐに失踪したらしいぜ」


「……そういう話になっていたのね」


「ああ、蓋をあければ勇者召喚だもんな。誰もわかるわけないよ」


 諸手をあげて冗談みたいにいうと、ミリアがクスクス笑った。こういうところは可愛いんだよな。

 実際こいつって、美人だと思うし、笑うと可愛い。あとはすぐ殴るところがなければ、結構いい感じなんだけど……いやいや。


「どうしたのよ? ちょっと赤いわよ?」


「なんでもない。それよりちゃんと寝るから、おきるぞ」


「変ないい方ね?」


 このままだと、オチオチねてられねぇ。どこか別のところでゆっくりと寝たい。

 ガバっと起き上がると、部屋の扉がコンコン叩かれて、


「ミリアいいですか?」


 テラー? の声だな。


「はいってきていいわよ」


「はい………失礼!」


 スーとあけて、バタンと扉しめた。なぜ!


 ……ああ、わかった。俺とミリアが隣あっていたからだ。変な誤解しやがっただろ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「さきほどは失礼しました」


「何にも失礼じゃない」


「まったくよ。誤解よ誤解」


「そうでしたか?」


 でていったテラーを連れ戻して説明するまでちょっとだけ時間がかかった。


 まあ、ちょっとはいい雰囲気だったけど、俺とミリアってそういう関係じゃないし、そりゃあ可愛いとは思うけど、俺は何度も殴られてし、そういう相手として考えるのには、いささか思うところがありまして、なにいってんのか俺もわからなくなってきたぜ、ばかやろう。


「ヒサオ、なに苛立ってんの?」


「なんでもない!」


「苛立ってたんですか?」


「見たらわかるじゃない」


「……私はわかりませんでした」


 分からなくていいんです! まったく、なんでこんなに苛立つのか――というかモヤモヤか?

 ……どっちでもいいや。深く考えるな俺。


 部屋には3つのベッドがあって、俺が横になっていたベッドの上に、ミリアが座ったままになっている。

 俺はその前に腰をかけて話をきいているんだが、テラーのやつがどこかに腰をおちつけようとはせず、俺の前でつったっている。背が高いから、見下ろされている感じでちょっと嫌だ。


「てか、どうしたんだよ?」


「ああ、えーとですね……怪我は大丈夫ですか?」


「いたいよ。普通にね」


「……すいません。ちょっとやりすぎました」


 テラーが頭を下げた瞬間、俺の頭にゴツンって!


「いって!」


「もうちょっと言い方あるでしょ」


「何がだよ! 痛いものを痛いって言って何がわるい!」


「自分から喧嘩うったんだから、やせ我慢ぐらいしなさいよ!」


 怒鳴られた……やっぱこいつ嫌い……


「すぐヘコム。ちょっとはカッコ……」


「あ?」


「なんでもない!」


「あの……やっぱりかえったほうが?」


「「いろ(て)!」」


「は、はい」


 話が進まん。こいつ本当になにしにきた? ちゃんと話すか。


「さっきの喧嘩のことならもういいぞ。あれは俺の気持ちをすっきりさせたかっただけだから」


「……できたんですか?」


「んー まあ、もういいかな?って感じにはなった」


 たぶんジグルドやミリアもこんな気持ちなんだろうな。

 チラッとミリアをみてみるが「なによ?」っていう感じで睨まれた。


「そうですか。いえ、望むのであれば、殴っても構いませんよ?」


「一方的に女を殴る趣味はありません」


「……え、女」


 ん? なんでそこで反応?


「女だろ? おかしなこといったか?」


「え、ええ。そうですけど……」


「ヒサオ……あんた、ちょっと見ない間に……」


「なんだよ? 変な事いったか?」


「いえ、いいんですけど……」


「なんだよ、いったい……ああ、そういえば、テラー」


「は、はい?」


「以前の時って、お前、俺達の事どう思っていたんだ? 例えば、標的とか? あるいは任務対象とかさ」


 これは聞いておかないと、この先ひっかかりそうだし確認しておこう。


「そう……ですね。たぶん、任務対象という感じでしょうか?」


「やっぱりか」


「だと思ったわ」


 どうやらミリアも考えていたらしい。そりゃ一緒に牢屋にいれられた仲だし、考えることは一緒って感じか。


「なにか?」


「あの時は、俺達のこと仲間って思ってなかったから、裏切ったって感じ薄いだろ?」


「……たぶん、そうですね」


 認めたか。こいつも考えていたのかもしれない。気のせいか尻尾とワンコ耳がしょんぼりしている。


「んじゃ今度は仲間でいいんだな?」


「……え?」


 いまのでわかってほしかったんだが、これまた言うのはずかしいんだぞ。

 まあ、いうけどさ。


「俺達の仲間でいいんだな? 俺や、ミリアや、オッサンと仲間でいいんだな?」


「……いいんですか?」 


 だから恥ずかしいんだって。ミリアなんか、横むいて笑うの我慢してるだろうが。


「もう聞かないぞ? 俺達と仲間でいいんだな?」


「……はい。はい…はい」


 声がちょっと涙声になってるぞ…やめれ。


「よ、よし。そういうことで今後、よろしくお願いします」



「はい! 宜しくお願いします!」




 こうして俺達はようやく仲間になれた……かな? 

 とりあえずミリアは声をあげるの我慢しながらベッドを叩くのやめてくれ。 

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