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第100話 戦いのあとの祭り

 砦にはいったのはいいが、酷い有様だった。

 殆どが人間の死体だらけなんだが、これを片付けるのか……

 戦場へと向かったファルマンさんとテラー達はいないが、イルマ率いる獣人達に交じり俺とケイコも後始末に加わる。


「ケイコ、きついならいいぞ?」


「でも……」


 正直俺もキツイ。体力より精神が。


「血の匂い。きついんだろ? わかるよ。ほんと無理しないでいいから」


「……ごめん」


 やっぱり限界だったようだ。青ざめた顔をしながらケイコが離れていった。


 城を脱出するときは無我夢中だったらしいが、こういう死体処理の状況ともなると話がちがってくるからな。

 砦の外に死体をもっていって焼く作業をしているんだけど色々な意味できつい。

 ケイコのやつ夢でみなきゃいいけど。

 そんな心配しながら死体運びを中断し、壁によりかかっていた俺をイルマが見つけやってきた。


「おい、テラー達が戻ってきたぞ」


「お? 無事おわったみたい?」


「まだわかんねぇけど、見た感じは大丈夫そうだったな」


「そっか。まあ、今回は色々恵まれたからな」


 ふぅ、と大きなため息をつき、壁から離れる。


「しっかし、託宣が無いとここまで楽だとはな」


「予想はしていたけど、突発的なことにまるで対処できてなかった?」


「ああ。いつか脅した研究員のようだったぜ」


「そういえばいってたな。モロかったって」


 前に会談で話していたやつだな。


「……なぁ、託宣があるとどんな感じになるんだ?」


「なんだ聞きてぇのか?」


「一応頭にいれておこうかと思ってさ」


 情報はあって困るもんじゃない。というのがここ数カ月でよくわかった。得られる機会があるなら使うべきだな。


「そうだな……例えば今回砦攻めで、俺達がつっこんだけど、普通なら門にたどり着く前に大きな被害がでる」


「……え? なんでだよ?」


「そこを通るのが知っていたかのように罠が設置されてんだよ」


「罠……」


「もっといえば、設置したやつらが意味を把握するのは、使用された後らしい」


「設置しておいて、それがどういう意味なのかもわからないってことか?」


「そういうことだ」


 これは思ったよりひどい。ガーク村で託宣による人の間引きを聞いた時以来のショックだ。


「でもよ、直接戦闘なら獣人たちのほうが強いんじゃないのか?」


「あめぇ― どんなに早く攻撃しても。そこに攻撃がとんでくるってバレてるように避けるし、攻撃はこっちの急所をついてきやがる」


「そこまで細かいのか!」


「ただ、その託宣が下る速度についていけねぇやつには何とか勝てるけどな」


「ああ、聞き取り速度みたいな?」


「じゃないか? そこらは聞いているやつらじゃねぇとな」


 それもそうか。

 しかしそんなに酷いのか。

 もし託宣がスキルみたいなものだとしたら、自己判断までしてくれ予知系スキルかもな。


 と、話をしていたら門からフェルマンさんたちが入ってきた。

 おーおー、爽やかな顔しやがって、よっぽど鬱憤がたまってたんだな。


「きたな。イルマ、いこうぜ」


「ああ。話もきいておかねぇとな」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 2連続での戦闘が行われたにもかかわらず、誰も疲れた様子をみせない。

 こちら側の被害がほとんどなく終わった戦闘だったというのもあるが、今まで溜まっていた何かを発散したような感じなんだろう。

 その夜は、片付けがおわった砦内部で宴が始まった。


「精霊使いマジすげぇよ! アグロの時もおもったけど、あんなのいきなりやられたら、俺達だってあぶねぇ!」

「いえいえ。術の発動中は無防備になりますからね。護衛についてくれる方々がいてくれて大助かりですよ」

「護衛っていう名の突撃兵だったけどな!」

「ちがいねぇ!」

「つかよ、強化魔法つかったエルフのねぇちゃん凄かったな。エイブンさんに合わせて攻撃もしていたし、なんだよありゃあ。俺たちの出番ないかと思ったぜ」


 勝利の宴の飛び交う会話のなかミリアのことが話にでてきた。俺も思うが、いまのミリアは汎用性が高い。

 前は最高位の攻撃魔法を使えたらしいが、特化型にするより今の方が良いんじゃないかな?


「まあ、敵の総大将やったのは、テラー様だけどな」

「そうそう。みたぜ~ 逃げだしたのをすぐに見つけて、こうバッサリだしな」

「あん時も、エルフのねぇちゃん、援護にまわってたよな。あれも凄かった」

「ああ、みたみた。あのエルフって異世界人なんだろ? 前にテラーさんが裏切ったっていう――あっ……」

「……この馬鹿」


 盛り上がっていた会話が消沈。周囲の声が小さくなるが、他がうるさく騒いでいるため、あまり影響なかったようだ。

 あまり表面化していないから考えないようにしていたけど、周囲の獣人さんたちも気にしてくれていたのかな?


 ……よし!


「ん? どこいくのヒサ君」


「ちょっとヤボ用」


 酒の飲めない俺とケイコは、皆から少し離れて食べていたんだ。

 さて……テラーはと……って、探すまでもなかった。今日一番の大手柄を立てたからな。みんなあつまって色々騒いでる。

 あの中に入っていくのか……やだな~ でも、もういい加減ケリつけときたいしな。


「ちょっとごめん、とおしてくれる?」


「あ! はい、どうぞ」


 ……なぜそんな丁寧口調? ホント最近こういう人増えたな。俺に対して怖がっているっていうかなんて言うか……また馬野郎が何か言ってないだろうな?

 まあ、通しくれるのはありがたい。


「テラーちょっといいか?」


「ヒサオ? ええ、もちろん」


 ラフな姿にきがえ、酒を飲んでいたようだ。ほんのり顔があかくなっているな。


「悪いけど、おれと喧嘩してくれ」


「……え?」


 うん。静かになったな。こうなるとは思ってたよ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 飲むのをやめて、みんなが俺とテラーを囲むようにしみている。

 場所は外。

 ぶっちゃけ勝てるとはおもっていないが、こうでもしないと気が晴れない。


「んじゃいいか? お互い素手な。スキルとかなしだ」


「え、ええ? いいですけど、これに何の意味が?」


「ないよ。あるとしたら、俺がさっぱりしたいだけ」


「は? 喧嘩で?」


「うん。じゃあいくぞ」


 返事もまたずに突撃。まずは左ジャブで様子見だ。


「ひ、ヒサオ?」


 飲んでるくせに余裕ですか。そうですか。くそ! ジャブがかすりもしないって泣けてくるんだが!


「喋ってると、舌かむぞ」


 といっている俺が噛んだら洒落にならんから、それ以上は喋らずジャブに右のローキックも混ぜてみた。


「まってっ!」


 といいつつ、これもジャンプで躱すかよ。後ろに避けてくれれば壁に追い込めたのに。

 サッと俺の横にまわりこんで、軽く両手をあげ構えている。

 構えはしたが、攻撃してくる様子がない。んじゃ遠慮なく攻撃してやる。まずはこれだ。


「え? ヒサ―――グッ!!」


 俺が構えを解いた瞬間、油断しやがったらからそのままタックル。避けかけていたけど遅かった!

 腹にタックルがきまったあと、テラーに体重をのせて押し倒す。ああ、ちょっとだけエロイ。

 そのまま右拳をあげて、一発!


「グッ!」


「「あぁ――!」」


 外野うるさい。嫌なら見るな。

 2発目! 3発目! と顔をなぐるたびに、声がきこえてくる。

 やりずらい!

 注意が外野にむいた瞬間、テラーが上半身だけの力で俺をどかした。

 俺のレベルもそれなりにはあがってるのに、まだ届かないか。だとは思っていたよ。


「……ペッ。ヒサオやってくれましたね」


「はん! いつかの仕返しだ。おれなんか携帯やられたからな!」


「やったのは、ラーグスだったはずですが……まあ、いいでしょ」


 おっと? 鼻から血がでて、ちょっとはやる―――て、おま!?


「ぐほ!」

「フン!」

「ッ!」

「セイ!」

「ぶへ!」


 上から順に、まず右ストレートが俺の腹に。そのあと顔面に左フック。最後にローキックで両足をひっかけ、俺の顔面が地面にキス……ちょっと遠慮なさすぎませんかね~ 

 というか早すぎて避けれません! あっというまに利子つけて戻しやがって!


「て、てめぇ」


「まだやりますか? 実力差は目に見えてるでしょうに」


「関係ないんだよこういうのは!」


 ひくに引けない男の事情というのがあるんです! わかってください! ってことで、再度タックル!


「おりゃ!」


「見え見えです!」


「ぶへ!」


 あっさり避けられ壁にごっちんこ。俺が壁にぶつかってどうする。

 鼻、大丈夫か? おわったらミリアに見てもらおう……


「遠慮はしませんよ!」


「え? あぶぶっぶぶぶぶぶぶぶ!!」


 鼻を押さえていたら、連打された。俺の顔が左右にゆれまくる。


「こ、この……」


「まだやりますか?」


「……おまえ、やりますか? といいつつ、嬉しそうだな」


「え?」


「スキあり!」


 いや本当にうれしそうだったんだけどな。

 そして決まる俺のヤクザキック! 超久々だぜ! 

 これでラーグスも気絶させたんだよな……あ、いやなこと思い出した。ペナルティなんてなければ……


 あ、いけね。


「この!」


「うお!」


 いかん。右のハイキックが俺の頭にあたりかけた。両手をつかってブロックしたからよかったものの、態勢が……て! それだめえええええ! 


「あぶし!」


 くずれたところに、思いっきり左ストレート……こいつ左のほうが右ストレートより強いじゃないか……


 そのままパタリと倒れた俺は、小さくなっていく声を聴きながら気絶した。やっぱりこうなったか。




 様子をボーとみていた一人のエルフがつぶやく。


「……やればできるじゃない」


 呟いたエルフは、人混みをかきわけ、戦い終わった男の元へと近づいていった――

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