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◆ エリオス、イヴァンヌに惚れ直す


 普段、影の者が国王陛下に進言する事は無いだろう。

 だが、シオンは先代の王家から仕えるエリオスの師の様な存在だった。


「陛下、理由もなく隣国の事に口を挟むのは…… 感心しませんが 」


 しかしエリオスは、直ぐに話を遮った。


「シオン、理由はある。 私の妃になる人の祖国だ。 それだけで充分だよ 」


 イヴァンヌは、ぶわっと涙が溢れて、止める事が出来なかった。

 何と心強い事なのか。


 シオン隊長は、腕を組み思案顔をした。

 エナとリナには、その姿がポートリア公爵の姿にダブって見えた。

 歳の頃も同じなせいか、余計にそう見えてしまったのかも知れない。


 シオン隊長が、エナとリナの二人に向かって、徐に尋ねた。


「貴方達は、どこまで知っているのかな? 他国の暗部と、情報共有など前代未聞ですがな…… 我が国王陛下の命は絶対。

 さあ、どこまで話が進んでいるだ? 」


 真摯に向き合い、尋ねてくれた事で、リナとエナの心は大きく揺れた。

 イヴァンヌが、二人の手を握る。


 王妃としての風格を纏い、泣いた眼を腫らしながらも、二人を説得した。


「エナ…… リナ…… 無駄死にしては、駄目です。 ここで力を借りて、万全な力となれる様に助け合いましょう…… ね? 」


 エナが口を開いた。 リナも止めない。


「セダム王国の、お力を貸していただければ、心強いですね。 私たちの大切な、シンシア様や我が王国を守る、一助となります様…… 私たちの分かる事を、お話しいたします 」



 長い話を聞いた。

 エリオス達が思っていた以上に、パルムドール王国のカエレム国王やポートリア公爵達の働きぶりは、目を見張るものがあり、頑張って歯を食い縛っている事が分かった。

 決して、諦めずにヨーク公爵の巧妙な隙を狙っている。


 シオンが解決の糸口をエリオスに言った。


「パルムドール王国内の証拠は、ほぼ掴んでいる様ですな。 後は他国と、ヨーク公爵を繋ぐ証拠が有れば、話は早いですかな 」 


「ん、そうだな。 シオン、我が国にもヨーク公爵に、加担した者がいるのか? 」


 シオンは不敵な笑いを浮かべて、手下の暗部に命令した。


「すぐに、ヨーク公爵に絡んだ我が国の馬鹿どもの、資料を持って来なさい 」


「はっ! 」


 シオンはエリオスに言った。

「10分です 」


 一言告げると、本当に10分後に資料が届けられた。


 エナとリナは悔しそうな顔をしたが、様子を見守る姿勢は変えない。


 エリオスは、その資料に目を通して

「我が国の膿を搾り切る、良いキッカケが出来たな。 一石二鳥いや三鳥、四鳥か…… 砂糖や麦の買い占めで、捕まえた他にも 繋がりが見つかりそうだ。

 エナとリナは、やはり私の乳兄弟を連れて、パルムドール王国へ帰りなさい。

 この資料をすぐに複写しよう。

 カエレム国王にも書状を書き、我が王国が、味方になると、書き記そうではないか 」 


 イヴァンヌが、エリオスに抱きついた。

「陛下、ありがとうございます! 」

 そしてハラハラと美しい涙を流した。


 エリオスはイヴァンヌを、サッと抱きしめたが、直ぐに身体を離した。


「イヴァンヌ…… とても嬉しいが、先に済ませてしまおう。 これは速さが大事だからね。 これが終わったら、幾らでも私に抱きつきなさい 」


 私は頬を染めるイヴァンヌを見て満足したら、全ての資料を用意して、書状付きで四人が旅立ったのは、2時間後のことだった。



 不安げに見送るイヴァンヌの肩を抱いた。


「大丈夫だよ。 君の大切な人は、誰一人として傷つけさせないから…… 」


 イヴァンヌが私の肩に自分の頭を預け、ポツリポツリと言葉を紡いだ。


「陛下…… エリオス様。 私は、この御恩を一生忘れません。 それと同時に、王家の本来の責任の重さを、初めて痛感し…… 分かった気がします。 私がもし、自分本位となり、己の立場を弁えることが出来ないと思ったら…… その時は遠慮なく、私を斬ってください 」


 エリオスは、心の底からイヴァンヌに敬意を表した。


(私の選んだ妃は、最高だ!)


「イヴァンヌ…… それはお互い様だ。 共に励もう…… 私の愛する人が、君で良かった 」


 イヴァンヌが肩に掛けていた頭を、私に向けた。

 二人の唇は、自然と合わさった。








最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。

明日はモアナ編です。

これからもよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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