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◆ エリオス国王陛下の顔


 なんとか愛するイヴァンヌを城に連れてくる事に成功して、特別客室へと案内するように手配した。


 いつものーー 普段なら、気の置けない仲間として、乳兄弟のトニーとケビンは軽口を叩く仲なのに、城に戻ってからの二人には、気軽さが無かった。


「お前たち、どうかしたのか? 」


 トニーが口火を切った。

「いやあ、参りました。 私はイヴァンヌ様の侍女、リナに惚れたようです 」


「は? 」


 すると今度はケビンが

「エリオス様に、触発された訳ではありませんが、私はエナを好んでおります 」


 乳兄弟の二人はニカリと笑い

「「 いやあ、お互い好きになった令嬢が被らなくて良かった 」」と、エリオスの前で握手していた。


「は? お前たち? 本気か? あの侍女達は、一筋縄ではいかないぞ! ましてや隣国の、暗部の者達だぞ! この王国の法を忘れたか? 」


 二人はジト目でエリオスを見つめると


「イヴァンヌ様に、婚約者の申込みを入れている時に、国王にならなくても良いとか、思いましたよね? そんな事を考えていた人に。 人の事、言えますか? 」


「う! 何故それを! 」


 ケビンが間髪入れず

「何年、お側に仕えていると思っているのです? 」

 トニーも

「逆に俺達だって、惚れた女と一緒になりたいのは、一緒ですから! 」


 エリオスは渋々と返事した。

「はあ、分かったよ。 でも、あの侍女達の気持ちも大切だろ? …… 何より、あの二人には、帰る場所がある 」


 それを話すと、二人は沈黙した。

 エリオスも、乳兄弟の二人をよく分かっている。

「先ずは、イヴァンヌの部屋に行ってくるよ。 話はそれからだ 」

 二人は神妙に頷いた。



 



 挿絵(By みてみん)



 イヴァンヌの部屋の扉は開いていた。

 中から話し声がする。


「イヴァンヌ様、私とリナはここでお別れになります。 急ぎ汽車で帰りますが、一週間近く、お一人にしてしまいます。 ご実家より、至急侍女の手配をお頼みしますので、お待ちくださいね 」


 イヴァンヌが不安そうだ。

「えっ? 帰ってしまうの…… 」


「私達は、ポートリアの暗部の者です。 セダム国王にバレてしまっては、国の協定でこのセダムにいつまでも滞在する事は叶いません。 それに我が国も、近いうちにある事が動きます。 どうか、私達を帰らせてくださいませ 」


 リナも続けて話す。

「イヴァンヌ様。 寧ろ今は、このセダムにいる方が安全ですから。 侍女達が来るまで、大人しく待っていてくださいね 」


(イヴァンヌは二人を帰すのか? だが、二人の声に緊張があるな )


「駄目! 何故だか分からないけど…… 今、貴方達を帰す事は、いけない気がするの! 帰らないで! 」


「もう、イヴァンヌ様の甘えん坊 」

 


「エナ、リナも。 何を隠しているの? 何でそんな、覚悟を決めた顔をしているの? 答えて! 」


(イヴァンヌの国で、何かあるのか? 私も共に、聞くことにするか )


コンコン


「外まで丸聞こえだ。 エナとリナは、ポートリア公爵家の影だったか。 幼い頃に拾われたか? 」



「私の家も、リナの家も、元は子爵家でした…… ある貴族の企みから襲撃されたのです。 父も母も兄弟も皆殺しにされました。 私とエナが隠れていた場所も見つかり、殺されそうになったところを、ポートリア公爵様に助けていただきました 」



「そうか。 それで何故、君たちはそんな悲壮な顔をしているのだ? 答えて欲しい 」

「…… これから先は、我が王国の問題です。 セダム王国には関係ありません 」



「も、もしかして…… シンシア様も何か事を起こすの? シンシア様も危ないの!? 」


(シンシア? )


「だから私達を、お返しください。 シンシア様の元に 」


 イヴァンヌを受け止めながら、私は提案した。


「君達は、私の侍従を連れて行きなさい。 船旅でだいぶ仲良くなったろ? 」


「「ご冗談を! 」」


「冗談では無いよ。 二人は、私の大切な乳兄弟だよ。 どちらも侯爵家嫡男だぞ! はは、そんな事はどうでも良いか。

二人が、君達に…… 寄り添いたいらしいのだ。 腕に覚えもある。 連れて行きなさい 」



「私達は、自分たちの身は自分で……では 」

リナが颯爽と荷物を持つと、トニーが荷物を奪って、リナの腕を掴んだ。


 エナにはもう一人の、冷静な侍従ケントが優しく鞄を持ち、エナをエスコートした。


 エナはエリオスに向けて、冷静に話した。


「侍従のお二人さんは、セダム国に帰れなくなるかも知れません。 どうか、お手を離してください 」


(おやおや、二人(ケントとトニー)は本気か…… 乳兄弟を、無駄死にさせる訳にはいかない。 それは侍女達も…… )


「私から国王に宛てる手紙を託そう。 トニーとケント。 レディー達のエスコートを頼んだぞ 」


 手紙を書くまで、暫く出発は出来ないだろう。


 イヴァンヌは

「私の留学が早まったのも…… もしかして、モアナ様も? 」


「はい。 イヴァンヌ様の出発の日に、モデルとして、反対の隣国に婚約者様とご一緒しています。 シンシア様は、最後の決戦の大切な駒を集めておいでです 」


「シンシア様…… 」


「シンシア様は、イヴァンヌ様とモアナ様の事を、とても大切に思っておいでです。 私達がここまで、イヴァンヌ様の事を無事に送り届けたとなれば、心より喜んでくださいます 」

リナは

「イヴァンヌ様、やっぱり可愛くて優しい王妃様が向いていますね。 私は、シンシア様の次に、イヴァンヌ様の事が好きですよ 」



「私も…… 二人が好き! 私の最後のお願いを聞いて欲しいの。 どうか、シンシアを守って! …… そ、そして、エナもリナも死なないで! お願い…… 」


 私は腑に落ちない事を訪ねた。


「シンシア嬢とモアナ嬢はイヴァンヌと、どのような関係なのだ? 」


「ああ、私達3人とも、一度は王太子の婚約者になりましたの。 その後、婚約破棄された仲なのですわ。 二人は、私の最も尊敬して愛すべき友なのです 」


「イヴァンヌ。 愛するという言葉は、今後一切、私にだけに使いなさい。…… それと聞き捨てならないのだが、それ程優秀なレディー達を婚約破棄した王太子はアンドリューとかいう奴か? 」


「よくご存知ですね 」


 私は深いため息を吐いて、乳兄弟達に部屋の様子を見張る様に言った。



「ここに」


「はっ!」


 我が王国の暗部の者が、二人現れた。

「今日はシオン隊長か…… 今、分かる限りパルムドール王国の報告を 」


 シオンは、ポートリアの暗部である侍女二人を見て

「良いのですか? 陛下…… 」

 エリオスは、大きく頷く。


「予定では、この二人。 私の乳兄弟達の将来の伴侶だ。 それで? 」


 エナとリナは後ずさり、ことの成り行きを見ている。


「それでは。 今、パルムドール王国の内部では、先代国王の弟ヨーク公爵を現国王のカエレム国王陛下が追い詰める時が、近づいております。 亡くなったとされるエドワード王子も変装して、アンドリュー王子の側近として、近づいております。 ポートリア公爵家のシンシア嬢が、リリアンという女をアンドリューにけしかけ、成功しています。 側室マリアンとヨーク公爵の子が、アンドリューではないかと思われておりましたが…… マリアンは、実に沢山の者と褥を共にしています故、実際は分かりません…… まだ続けますか? 」


 エリオスは腕を組んで、口元に笑みを浮かべる。


「シオン隊長、我が王国で、何が出来る? 」





最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。

あともう一話エリオスです。

明日もよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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