◆ 国王陛下カエレムと王妃ローザ
お祖父様はまず17年前の王城の様子から話してくれた。
▽ ▽ ▽
今日も王城では暗殺者の死体が見つかった。
王家が信頼するポートリアの暗部に見つかると、暗殺者は証拠隠滅の自害をするのだった。
昨日も王妃の食事に毒が盛られた。
日常茶飯事のように、王妃の暗殺を目論む輩が後を絶たなかった。
それは生まれて間もない頃から、王太子エドワードにも言える事だった。
黒幕は分かっている。
前国王陛下の弟、筆頭公爵のヨークだ。
ヨーク公爵は、前国王の亡き後に自分こそが、この王国を継ぐと思っていた。
だが、当時17歳の王太子カエレムが即位をしてしまった。
ヨーク公爵の
「どうしてだ!? まだ弱冠17歳の王太子が継ぐには、早過ぎるのではないか!
35歳と経験も積み、血気盛んな私が次代を継ぐまでの礎になろうというのに!」
まだその当時は、前国王陛下の家臣が大勢残っていたお陰で、ヨーク公爵の暗澹たる野望はあっけなく潰えてしまうのだった。
(くそ! 覚えておれよ! )
ヨーク公爵の野望の火種は、いつまでもプスプスと燻っていった。
若き国王カエレムを潰すには……
--いずれ王妃になるローザと、後々に生まれるかも知れない次代の王太子は目障りだな……
今度は作戦を変えた。
少しずつ…… トロ火で煮詰めていくように…… 王城には、ヨーク公爵の手のものが紛れ込んでいった。
それはどこまで辿ればヨーク公爵まで行き尽くのか、皆目見当もつかない程に。
ゆっくりと……
ゆっくりと……
まだ若き、国王陛下カエレムの想像すら出来ないものだった。
浸潤する………… ヨーク公爵。
浸潤される……… 国王カエレム。
ヨーク公爵は、王家の不満分子をかき集め金をばら撒き、他国からも自身に忠誠を誓う人材を集めていった。
ハハハハハ!なんという事か!……
これならもっと早く、事を起こせば良かったではないか!!
私は今の、国王カエレムが立つ、王家に忠誠を誓う馬鹿から壊してやる。
なに…… 私が国王になれば、その時また組み直せば良いだけの事だからな。
ヨーク公爵の欲は、深い井戸を覗き込む様に、どこまでも…… どこまでもキリがなく落ちてゆくのだった。
それから18歳になるのを待って、国王カエレムと侯爵家ローザが婚儀を挙げ、翌年には王太子エドワードが産まれた。
だが心が休まる日は訪れない。
あれ程、朗らかで優しい王妃ローザも気落ちする事が増えていった。
銀色の髪に緑とオレンジ色の珍しくも美しい瞳…… の王妃ローザ。
やがて真っ赤なソファーで、暗い海を漂うように力無く座るローザの姿を見て、カエレムは辛い決断に同意せざるを得なくなった。
「ローザ…… ゆくのか? やはり駄目なのだろうか…… 」
カエレムが縋るようにして、愛するローザが下した決断を聞いた。
ローザは苦渋を滲ませて話す。
「陛下…… 弱い私をお許しください。 私の我儘ですわ。 今は一旦、この王城から退きましょう。 このままいけば、大切な王太子のお命を守る事も出来ませんから」
「しかし明日、馬車を出すと狙われる事は必至ではないのか!?」
「陛下、それが狙いなのです。 早急に決めた出立なら、ヨーク公爵からの暗殺準備は間に合わないでしょう。 だから、一度死んだことに致します 」
初めて小さく笑うローザ。
ローザの不安からか、落ち着かない様子を心配するカエレムだが
「しかし…… お前はどうして、昔から極端な秘策を練るのだ? 」
笑っていたローザが下を向き、暗い顔に戻った。 だが、その瞳は決意に満ちていた。
「陛下…… このままいけば、私も王太子もヨーク公爵家や違反分子からいつかは殺されてしまいますわ。
思っていた以上に闇は深いのです……。
だから私は、ポートリア公爵と話合いを続けて、馬車の事故を偽装する案を練りましたの。 この状態が続くのなら、王太子は9歳を迎えた時、ポートリア公爵に預けることも考えています。 あの子が自分自身を守れるようにするために…… 。 いずれ陛下のお役目を手伝える様に、種を蒔くのです。 陛下、我儘ついでに…… 。
陛下には、出来れば年に何度か視察を兼ねて、私に会いに来てはくれませんか?」
「私が会いに行くことも、考慮させているのか?」
「ええ、このパルムドール王国は、遠い領地の道整備が滞っていると聞き及んでおりますわ。 ですから、『私と王太子の死』のきっかけを利用するのです。 王国全ての街道整備の理由付けとして、着手するのも一興ではありませんか?」
「それまでに、奴らの尻尾を掴むのもアリか…… だが、ローザは良いのか? お前の死の知らせは、私に新たな王妃候補が出て…… ゆくゆくは、新たな王太子が生まれるかも知らないのだぞ 」
ローザは寂しそうに笑う。
「ふふ、陛下。 私には子が一人…… 。 エドワードだけでしたから。 それなら、それも仕方のないことでしょう 」
ローザは王太子を授かった後、毒のせいで身体を壊すと、二度と子が産めぬと言われていた。
「仕方ないなんて…… 。 だが、ヨーク公爵を欺くには、誰か一人を仕方なく側妃を娶るしかないだろう。…… しかし私にも考えがある。私の妃は、其方だけだから 」
王妃ローザは、幼い頃から許嫁として共に過ごしてきた国王陛下カエレムの気持ちをこれっぽっちも疑ってはいなかった。
「カエレム…… 愛しています。 でも、無理はしないでね 」
「ローザ、私もお前だけを愛している。 私の妃は、ただ一人、ローザだけだよ 」
二人は、想像もつかない時の別れを惜しむ様に…… お互いの温もりを忘れない様にしっかりと抱き合った。
次の日の深夜…… 国中に、弔いの鐘が鳴ることとなったである。
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