◆ シンシアの幼少期 : エドワードとの出会い
ポートリア公爵家は、王都にあるペントハウスもこの目の前に広がる領地も、一番大きな場所を国王より賜っていた。
シンシアの実父は、肝が小さい男で…早くからポートリア公爵家の後継には無理があるのでは、と言われていた。
弟のアウデオが次期公爵になるだろうと、噂話が広がっただけで、早々にポートリア公爵家の一部であった男爵位を賜り、婚約者と出奔したのだった。
ポートリア公爵領に入ると、おばあ様が待っていてくれた。
シンシアを見つけると、目に涙を溜めてしっかりと、抱きしめてくれた。
「 おばあ様……? 」
「 はい、お祖母様ですよ。シンシアに会いたかったわ……何度も会わせて欲しいと、手紙を出したのだけど… 」
「 私に? 」
「 ええ、そうよ。 シンシアに会いたかったわ」
シンシアは自分が…誰からも愛されないと思っていたのに、祖父母に思われていた事がとても嬉しかった。
心の中から身体中に…何か暖かいものが一杯になって、溢れる気持ちを抑える事が出来なくなっていた。
初めて子供らしく、声を出して泣いた。
そんなシンシアを、おじい様とおばあ様は包み込むように優しく抱きしめてくれた。
「さあ、もう今日からここがお前の家だよ。
分かったなシンシア」
(ここが……私の、新しい家……)
シンシアはコクコクと泣きながら頷いた。
暫く泣いて、漸くスッキリしたのか…シンシアはやっと、辺りを見渡す余裕が出来た。
じっとこちらを見ている男の子が目に入る。
それに気がついたお祖父様は
「エドワードこちらに来なさい」
「はい」
言葉少なにシンシアを気遣ってくれているのか、声が掛かるまで待っていてくれた。
「 エドワード、わしの孫のシンシアだ。 今日からこの屋敷で暮らす事になる。 よろしく頼む。 なんと言っても今は、この屋敷を遊び倒している、お前の方が詳しいだろうからな、色々と教えてやってくれ 」
まずはエドワードに、私を紹介したお祖父様が、今度は私にエドワードを紹介してくれた。
「 シンシア、この子はエドワードだ。 あと何年かはこの屋敷で過ごすから仲良くしなさい。 良いね? 」
「「はい」」
シンシアとエドワードは、声を揃えて返事をした。
エドワードは、シンシアの手に持つ鞄をサッと持ち、部屋に案内してくれた。
「シンシア、俺の事はエドと呼んでくれ。こっちだ」
少し頬を赤くしたエドは、シンシアの歩調に合わせてゆっくり案内してくれる。
( 公爵と同じ銀髪に赤目なのだな。それにしても、なんてキラキラしているんだ )
シンシアはコクコクと頷いて
「 じゃ、じゃあ、私のこともシアと呼んでね 」
シンシアもほんのりと頬を染めて、エドに話しかける。
( うん、可愛い……シアか……)
エドは爽やかに笑うと、シンシアの手まで握りエスコートしてくれた。
シンシアは素早い対応に驚きながらも、エドについて行った。
エドの髪は赤いながらも、金色が混ざった綺麗な色だった。
瞳はオレンジとグリーンが混在する、これまた不思議な色合いだった。
(なんて綺麗な、男の子なんだろう………)
シンシアは少し年上の綺麗な男の子から、図らずもレディーの扱いを受けて…胸が小さく踊っていた。
手入れの行き届いた部屋は、シンシアの不安を和らげてくれた。
「あ、あのう…えっと、エド……ありがとう…」
「うん。シア、ゆっくり休んで」
「うん、分かった」
シンシアは部屋のベッドに寝転んだ。
ふかふかのベッドは、シンシアを優しく受け止めてくれる。
シンシアは今日の出来事と、これから先の未来を考えていた。
(お父様とお母様が死んだ…… 弟のアドも死んじゃった…… そして私を虐めていた、屋敷の使用人たちが罰せられたけど…… 私は目を逸らさず見届けた……
おじい様とおばあ様に会えた……
そして私はここに来た。
たった一日で、世界が変わって…
こんなに色々なことが起こった…… )
箇条書きのように…今日起こった事を、一つ一つ思い浮かべていた。
シンシアの取り巻く環境が変わり過ぎて……なかなか気持ちを宥める事が、難しかった。 小さな胸元に両手を置いて、静かに…ゆっくり目を閉じた。
(私に出来ることは?………うん、分かる気がする…… )
不思議なものだ………
ポートリアの血筋が成せる技なのか?
シンシアは、中から作り変えられていくように…気高い意志が沸々と湧いてくる。
私のこれからは?………そう!
もう、何も知らない子供じゃダメなんだ!
暗部の仕事は、何をするのだろう?
あれだけ…お父様もお母様も嫌がっていた仕事って? 弟のアドにも継がせたく無かった仕事………。
でも今日、私が選んだ道だわ……
おじい様の力になるの……
そうなりたい!
そうならなきゃ………
シンシアはこの日から、真っ直ぐな未来を固く心に決めた。
それはきっと、明るい場所も…暗い場所も…知らなくてはならないだろう。
私はポートリア公爵家の孫娘……
シンシア・ポートリア……
敬愛するおじい様のご恩に報いるわ……
シンシアは、将来の…哀歓する未来を決めたのだった。
やっとエドワードと出逢いました。
今日は3話投稿です。
あと一時間後に会いましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
楽しく読んでいただけるように頑張ります。
よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(__)m。
そしてこれからの励みになりますので
面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して
いただければ幸いです。




