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33 ヴィルヘルミネ、困る!


 ダントリクの説明によると敵は別動隊を組織し、フロレアル宮殿を急襲しようとしているのではないか――とのことであった。言われてみれば尤もな話で、グスターヴが曲がりなりにも革命を成就させようと言うのなら、国王の処遇は避けて通れないことなのである。


 またグスターヴが群衆を吸収したことで、部隊の実数が分かりにくくなっていた。

 ましてや武器庫を襲撃して民衆にも武装させているから、部隊から数千人規模で切り離し別動隊を作っていたとして、ヴィルヘルミネ側には敵軍の実態を把握する術が無いのだとダンドリクは言っている。


 実際、偵察兵はグランヴィルへ入ったグスターヴ師団の実数を、一万一千と報告していた。だからこそ国王シャルルはヴィルヘルミネに三千五百の兵を預け、賊軍の討伐を依頼したのである。


 ゆえに、万が一ダントリクの予測が正しかった場合、大問題であった。

 しかもこれをヴィルヘルミネも承知していたとあれば、ランス軍にとっては実に由々しき事態である。


 現在、フロレアル宮殿には五百の衛兵しかいない。仮にグスターヴが三千程度の兵を別動隊として動かし急襲させたとしても、間違いなく落ちるだろう。

 しかもグスターヴの意図が、交渉にあるとは限らないのだ。となれば国王一家の命さえ、危ぶまれるのであった。


 この予測に、最も狼狽えたのはアデライードだ。彼女は王族であり、王妃マリーとは親友と言っても良い間柄である。

 だから彼女は悠然と笑みを浮かべるヴィルヘルミネをキッと睨み、「ミーネ様! 知っておられたのでしょう!? であれば当然、策はおありなのですよね!?」と迫っていた。


「へ!?」

 

 ヴィルヘルミネ、晴天の霹靂である。


 ――んなもん、あるわけなかろ!


 などと内心ではすぐに思ったが、これを言ったら大好きなアデリーに嫌われてしまう。そんな不安を抱えて、赤毛の令嬢はムッツリと腕を組んだ。足りない頭で、何とか策を考える。

 ともかく金髪巻き毛の美女を鎮める為には、国王一家の安全を最優先させねばならない。


 ――ええと、ええと、そうじゃ!


 ヴィルヘルミネは一つの案を思い付く。我ながら名案であった。


「――敵将グスターヴはどこにおるのじゃ? マルス広場に、確実におるのじゃな?」


 令嬢の発した言葉は、敵主将の所在を明確にしろという意味であった。

 ヴィルヘルミネ的には、もうこれ、ゴメンナサイして降伏しよう! と思ったのだ。

 攻められる前に頭を下げれば、人間、意外と許してくれるものである。


 何せこの少女は、弱者に強く強者に弱いヘタレ。であれば既に優勢であるグスターヴの勝ちを認めて、国王と王妃の命を助けて貰えればいいのじゃ! と思い付いたのであった。


 だがしかしヴィルヘルミネが率いる諸将は皆、生粋の脳筋達である。

 特に金髪の大親友ゾフィー=ドロテアに至っては、常に脳の筋トレを怠らないという徹底のしよう。ならば彼女の辞書に、「降伏」も「撤退」もあろうはずが無い。


 という訳で早速ヴィルヘルミネの意図を勘違いし、ゾフィーが拳を握り締めて言う。


「はい、敵将の姿はマルス広場にて確認されております。しかし――なるほど、流石はヴィルヘルミネ様。敵が別動隊を率いてシャルル陛下を狙うように、我等は賊将たるグスターヴを直接狙う――というわけですね!」


 ――違う! 何を言っておるのじゃ、ゾフィー! 余は降伏したいのじゃ! ここはこっそり敵将との接点を持つのが、お前の役目じゃろ!


 などと令嬢は思うが、誰も彼女の意図など察しない。むしろオーギュストは「ヒュー」と口笛を吹き、それが正解! とばかりに肩を竦めていた。


「ゾフィー=ドロテア、流石にミーネが親友って言うだけあるね。彼女のことを、よく解かっている」


 ――やめよ! そうではないぞ、オーギュ!


 ヴィルヘルミネはもう、口から魂が逃げ出しそうだ。ぜんぜん違う、お前ら分かってないにも程がある――と思ってた。


「ヴィルヘルミネ様の策は理解しました。しかし仮に敵将を討ち取っても、その前にフロレアル宮殿が襲われてしまえば、どうなさるおつもりか? まさか陛下を――王妃様を見捨てても、賊を倒せれば良いと仰るのなら、わたしは――」


 長机にダンッと両手を突き、アデライードが言い募る。

 

 ヴィルヘルミネは完全に自分の意図から逸れた会議の流れに、もはや白目を剝きそうなのであった。

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[良い点] 令嬢「(降伏する)のじゃ!」 ゾフィ「突撃ですね!(脳筋)」 周囲「さすミネ!」 [一言] セリフを半分しか喋れないコミュ障の令嬢のほうが全面的悪い!
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