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17 オーギュストの才能


 ブーリエンヌ会戦の翌日、軍勢を北方に向けたバルジャンは、同時にレグザンスカ公爵へ使者を出した。会談を申し込む為だ。この時にバルジャンが突き付けた条件は、以下のものである。


 一つ。国王は政治的権力を完全に放棄すること。

 二つ。レグザンスカ家は武装を解除し、全ての爵位と領土を放棄すること。

 三つ。上記の二つを受け入れるならば、国王は国王としての権威を保証し、レグザンスカ家は財産と市民としての権利を保障する。


 条件の大半はオーギュストが考え、ダントリクが検討した。オーギュストには政治的野心など無かったが、幼い頃から兄に連れられて様々なことを学んだ結果、自然と政治的思考が出来るようになっていたのだ。


 ――すげぇな、オーギュスト。


 なんて素直に感動したバルジャンは、せいぜい鷹揚に頷いてこれを承認。かつ使者に志願したオーギュストの願いも聞き入れ、彼を特使として派遣したのである。

 ただしバルジャンは、一つの条件を彼に付した。


「いいか――……アデライードの姿が司令部になければ、条件を言う必要はない。ただ私が会談を望んでいるとだけ伝えてくれ。ただし会談の場には、必ずアデライードを同席させるよう伝えた上で、だ」


 当然オーギュストもバルジャンの意図することは、分かっている。この条件は、自分を死なせない為だと理解していた。

 それに彼が使者に志願したのは、アデライードの無事を確認する為でもあったから、どちらにせよ、この条件は望むところなのであった。


 幸いにしてアデライードはこのとき父と共にあり、司令部天幕に滞在していた。

 こうしてレグザンスカ軍の野営地に入ったオーギュストは、司令部の天幕でアデライードの姿を見つけるや、さっそく厳めしい顔の公爵に不遜な条件を突き付けたのである。


 むろんレグザンスカ公は話を聞くや怒りも露に、使者の首を刎ねて送り返そうとしたのだが――そこにアデライードが飛び込み、父の剣を弾いて見せたのだ。


 アデライードにしてみれば、二重の意味でオーギュストを斬られる訳にはいかない。国王の命の為にも、自分の幸福な未来の為にも――だ。

 このとき久しぶりにオーギュストとアデライードの視線は交わり、二人はそれだけで互いの意志を確認し合っている。


『協力してくれ、アデリー』

『もちろんよ、オーギュ』


 ヴィルヘルミネが見たら激しくプンスコしそうだが、本当に二人は愛し合っていた。それゆえに、息もピッタリなのである。


「父上! 国王陛下のお命と権威が保障されるのであれば、我等の目的は達せられたも同然でしょう! これ以上戦う必要など、ありますまいッ!」

「アデライード! 我がレグザンスカ家は武門である! それが戦いもせずに、なぜこのように屈辱的な条件を受け入れねばならぬのかッ!」

「父上が戦って名誉の死を遂げたいのなら、それは止めませんッ! ですが国王陛下は、王妃様はどうなるのですかッ! ――使者殿! 国王陛下のお命は、必ず保証して頂けるのですねッ!?」


 緑玉の瞳を向けられて、オーギュストは大きく頷いた。その点に関する限り、一点の曇りもない。

 今のオーギュストにとって、バルジャンの言葉は金科玉条である。彼が国王を殺さないと約束したのだから、これは天地創造にも等しく絶対であり、自信を持って答えることが出来た。


「その点に関してはバルジャン中将の名において、必ずや。我らとて、決して共和政府の言いなりになるものではありません。レグザンスカ家の皆様の安全も、むろん保障致します」


 堂々としたオーギュストの言葉に、レグザンスカ公爵もようやく剣を引いた。このまま戦っても、勝てるとは思えない。

 そもそも我欲で起った訳ではなく、国王一家の身を案じてのこと。これが守られるのであれば、確かにアデライードの言う通りなのである。


 こうしてレグザンスカ軍も降伏し、ランス最大の内乱は鎮まった。けれどバルジャンが王党派を降伏させるに際し、助命を条件にしたと聞くや、共和政府は上を下への大騒ぎ。

 マクシミリアン=アギュロンは即座に軍閥化したバルジャン軍団の解体を画策し、オーギュスト=ランベールを王都に呼び戻して、兄と共に捕虜交換式へ向かうよう命じたのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様でした。 どうらや、アギュロンさんは何がなんでも国王一家を断頭台送りにしたいようですね。 オーギュという「看板」を取り除けば、今の革命政府は国民から見れば「英雄に集っているダ…
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