94話 体育祭練習③
そして次の日……座学を終え、体育祭の2つ目の種目の実習の時間になりました。
「2種目目は徒競走です。……よーいドン! ってするのでわちゃわちゃするでしょうけどね。パーティの中から代表して1人を選んでもらいます。まず30分時間をあげるので代表を選んでください」
むっ……これは重要ね。私たちのパーティ、誰が足が速いのかしら。イメージ的にはユーシャよね。草原をダッシュで駆け巡っている感じ。
兎にも角にも30分で見極めないとね。
「というわけで、代表を決めるわよ。とりあえず……『ウィンド!』あの地面の割れ目がゴールね」
風の魔法で地面を削ってゴールを定める。わかりやすいでしょう?
「あ、あの……私、走るのは自信ないので辞退させていただきます」
ヒラからそんな言葉が出てきた。別に本番じゃないんだから代表選考くらい走ればいいのにと思いつつも、強要することはできない。
「わかったわ。じゃあゴールのところで誰が1番だったか見てもらえる?」
「は、はい! いってきます!」
小走りでゴール地点へと向かうヒラ。まぁ確かに走り方が変だから走りには自信ないのかも。まぁちょっと可愛いからいっか!
「あとのみんなは参加ということでいいわね?」
「あぁ! 当然だぜ!」
「走るよ! めいっぱい走るよ!」
「弓兵は走力も必要ですから、見せてやります」
ヒラとは真反対にやる気を見せる3人。特にシルディは昨日何もしていなかったからか特にやる気が見える。
この3人に任せてもいいかなと思ったけど、勝負となると私も負けたくはない。誰が出てもいいけど……ここで負けるのは癪ね。
「なら……私もやってやるわ!」
メラメラと湧いてくる意欲を示してスタートラインに着く。
「ヒラー! 合図お願い」
「は、はい!」
たぶんヒラは全力で叫んでくれているんだろうけど、あんまり聞こえない……。でもまぁ耳をすませば何とかなるからいっか。
「それでは位置について! よーーい、ドン!」
ヒラの掛け声とともにスタート! 私もユーシャもシルディもアルチャルも地面を蹴ってダッシュ!
勝負は意外とあっさりと決まった。1位ユーシャ、2位アルチャル、3位シルディ、4位私。まぁそんなに差はないんだけどね。
「ふぅ。じゃあ私たちのパーティの代表はユーシャってことでいいかしら?」
「ん。異議なし」
「ユーシャ様であれば応援するのみです!」
敗れたシルディとアルチャルは素直にユーシャに譲ることに。
「よーっし、私、頑張るね!」
うんうん、結構速かったし、期待できるんじゃないかな? 他のパーティはどんな感じに……
「え、ええっ!?」
信じられないものを見た。風魔法とかをターボにして加速してる!? ただの徒競走にも魔法を使うの!?
「そんなのアリ……?」
「どしたの? リリー」
周りを見ていなかったようで、ユーシャはよくわかってない顔で私に尋ねてきた。
「みんな魔法を使ってるわよ? ただのかけっこじゃないみたい」
「ええっ!?」
どうやら純粋にかけっこを始めたのは私たちだけみたいね。なんだかそれはそれでかなり恥ずかしい……。わんぱく娘みたいじゃない。
「と、とにかく魔法を使って走ってみましょう。ユーシャ、いけそう?」
「う、うん。なんとか!」
魔法の扱いに関して、ユーシャに不安はない。でも走りながらっていうとかなりの器用さが必要になる。もう一度パーティの代表選考してもいいけど……できるだけ代表者の練習を優先したい。ユーシャを代表ということで進めましょう。
「よ、よーし。『ウィンド』」
手で風を起こして加速。さっきよりかなり速くなれたけど、他のパーティと大差ないかも。もしかしたら……上手くいかないかもしれないわね、この体育祭。




