93話 体育祭練習②
「じゃあ動かすわよ。合図は私がするから、同時に風魔法を発動する。いいわね?」
「はーい」「は、はい」
ユーシャとヒラの答えが返ってくる。それをしっかり確認してから鉄球を見つめた。これを動かすとなるとかなりの力がいる。……よし
「いくわよ! 3・2・1……」
「「「『ウィンド!』」」」
3人で同時に風魔法を放つ。鉄球はその風の煽りを受けて徐々に前に進んでいった。
「よし……ってあれ?」
前には進んでいるんだけど……徐々に右へと進路を逸らしていた。
なるほど……左にユーシャ、真ん中に私、右にヒラがいるから力の影響的に右に向いて行っちゃうんだ。
「ならこれを等倍にしないとね。アルチャル、『ブースト』はヒラにかけてあげて」
「はい。かしこまりました」
「よ、よろしくお願いします!」
ヒラに『ブースト』をかければそれなりに進路は整うはず。
「いくわよ! 3・2・1……」
「「「『ウィンド』」」」
ヒラに『ブースト』がかかってかなり安定してきた。でも動きはゆっくり……。もうちょっと威力とか、色々工夫していかないと優勝は難しいかも……。
「うわぁ……あの人凄いねぇ」
ユーシャが指差したのは1人で鉄球を動かしている少女。おそらくパーティを組まず1人でいることを決意した子ね。
その子は鉄球をまるでサッカーボールかのように自在に動かしていた。なんであんなに上手くいくのかしら……。
「あぁ、彼女なら同じクラスですよ」
「え、そうなの!?」
アルチャルと同じクラス……ってことは少しはあの子のこと知ってるのかしら。
「まぁ私、教室ではボッチなので顔と名前を知ってるくらいですが……」
「あ、そう……」
アルチャル……ボッチだったのね。寂しかったらウチの教室に来てもいいのよ?
「でも変な話だよなぁ。あんなに目立つくらいならランキング戦でももっと上にいてもおかしくないだろ」
「あぁ……彼女は人と接するのを嫌うから、ランキング戦は休んでいたの」
「えっ」
そんなことあるんだ……もしかしたらパーティを組んでいない人の方が強者揃いって可能性もあるのかも……。
「侮れないわね。まだまだこの学校には強者がいるわ……」
それはそれとしてあの子はどうやって球を動かしているのかしら。人と接するのが苦手……なら直接聞きにいくのはNGよね。
私はただただ鉄球をコロコロと動かし続ける少女を黙って見つめる。見たところ風魔法を使っている様子はない。だとしたら何を使っているの? 特殊な魔法を使っているってことは……相当な強者ってことになるけど……。
「いや、難しいことを考えたって仕方ないわ。私たちは私たちのやり方で勝ちにいきましょう!」
「「「「おーー!!!!」」」」
というわけで地道に風魔法で動かしていく作戦に。これが案外難しいもので、だんだん魔力が減っていって疲れるのなんの。
「はぁ、はぁ……」
もうヒラの息は完全に上がりきっている。残念だけど今日はここまでね。
「とりあえずやれることはやったわ。1位になれるかはわからないけど……どうにかしましょう。他の方法とかも考えておくから」
風魔法は正攻法の1つであることは間違いない。でも……100点の回答とは言えない気がする。
だとすればどうすればいいの……
考えを巡らせているうちに今日の実習が終わってしまった。もう本番にかけるしかないか。私やみんなのひらめきを信じよう。これがダメでも他の競技で挽回すればいいしね。
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