64話 魔界へ②
私の言葉を聞くと安心したのか、ベルゼブブはハグを解く。……おっぱい大きかったわね。
「じゃあ奥へ行こうか、リリー」
「うえっ、う、うん!」
「何をそんなに慌てているの?」
「な、なんでもないわよ!」
首と手をぶんぶんと振って違う違うとアピールする。おっぱいのことで頭がいっぱいだったなんて知られたら引かれる……。
「そう? 何か悩みがあるなら教えてね」
大人のスマイルでベルゼブブは微笑みを私に投げかけてきた。色っぽい……。
ベルゼブブに案内されて奥へと進むとどんどんメイドたちがお出迎えしてくれた。みんな「リリー様」と呼んでくるから気が落ち着かないっての。
「この部屋だよリリー、入ろうか」
「うん!」
その点ベルゼブブは呼び捨てで呼んでくれるから嬉しいわ。アルチャルも早く様付けやめてくれないかな……。
「あ、あの! 私は……」
「あぁ、アスセナももちろん入っていいよ。アスセナから見たリリーの成果も聞きたいところだからね」
というわけで3人で部屋へ。応対室というべきか、なんだかシックな部屋に入る。なんか……緊張してきたわね。それに報告することなんて考えてないし。
「さぁ、報告を始めてもらおうか」
社長室の机と椅子のセットみたいなところに腰掛けてベルゼブブが腕を組む。
「あ……えっと……何から話せば?」
「何でもいいさ。リリーが人間界で、勇者学校で何を見て何を感じたのかを声で伝えてくれればね」
どうしよう〜! 裏切った前提でただただ人間界も勇者学校も楽しんでいたからそんな目で見たことないよ……。
「えっと……人間たちはみんないい人たちばっかりだったわ。それに可愛くて優しいの。人間界では服もたくさんあってね、ご飯も美味しくて……」
「ちょ、ちょっと待った。リリーが何を感じたのか教えて欲しいとは言ったけど……そうじゃない。魔界にとって何が脅威となるかを教えて欲しいな」
ぐっ……! やっぱり今のじゃ誤魔化せなかったか。なんとかなぁなぁにできないかな〜って思ったのに。
「えっと……その……」
どうしよう……。ユーシャは間違いなく魔界にとって脅威になるんだろうけど、そんなこと言ったらユーシャに魔の手が……。それだけは絶対にダメ! となると何を言えばいいのよ! ……あっ! そうだ!
「か、仮想戦闘空間って言ってね、なんか意識だけを別空間に飛ばして模擬戦ができるシステムがあるの。それを活用されたら人間たちは強くなるな〜って思ったわ」
「ふむ……聞いただけでは100%の理解はできないけど、たしかに厄介そうな産物だね。体験したのかい?」
「う、うん。痛覚はほとんど無くして戦闘できたから得意を伸ばすにはもってこいの装置だと思う。あぁいう開発力はやっぱり人間の方が上だと思ったわね」
よし、なんとかそれらしいことが言えたわ! アスセナが心の中で拍手しているのがなんとなく伝わってくるわね。
「ふむ……やはり人間の頭脳は計り知れないね。魔界でそんなものを作ろうと思っても不可能だろうから、また魔力のゴリ押しは変わらず……。ありがとう有益な情報だ」
良かった〜。なんとか納得してもらえたわ。
「それで? 勇者学校には適正存在になり得る者はいたかい?」
「い、いやいなかったわよ! みんな私以下の強さしかいないわね、あはは……」
バリバリの嘘だけど大丈夫かな……。ユーシャとかアルチャルは結構魔界の脅威になる存在だけど……。
「リリーは"そのまま"でも結構強いからね。下に見えるのは仕方のないことだ。まぁ今のところは安心してもいいと報告しておくよ」
「う、うん。よろしく……」
これ魔王が質問に来ていたら終わっていたわね。圧でついつい話しちゃいそう……。嘘ついたら殺される! って身体中の細胞が震え上がるものね、あの人の前だと……。




