62話 もしや大ピンチ
森に入って木を伝って歩く。といっても5人になったから隠れながらというのは無茶だったわね。私が真ん中にいれるから指示は出しやすいけど、この陣形が崩れる何かが起こったらマズイかもしれないわね。
「シャッー!」
「って思ってたら来たぁ!?」
木の上から降ってきたのは蜘蛛型の魔物! 結構気持ち悪い!
「よーっし! 戦うよ〜!」
ユーシャはノリノリで剣を構える。ランキング戦優勝が自信になったのか、魔物くらい怖くないさ! というスタンスね……。
「みんな、油断せずに。攻撃来るわよ!」
「シャッ!」
蜘蛛の魔物は糸を固めたような弾丸を射出してきた!
「シルディ!」
「おうよ! 『シールド!』」
蜘蛛の糸を盾でガードしてくれる。さぁ……ここからね!
「アルチャルは牽制を! ユーシャは仕留める気でお願いね! ヒラはユーシャに『ブースト』をお願い」
「はい」「うん!」「は、はい! 『ブースト』」
「はあっ! やあっ!」
アルチャルが弓を射る。蜘蛛は軽い身のこなしで避けるけど……流石に上手いわね、アルチャル。完全にユーシャの間合いにおびき寄せているわ。
「ユーシャ! 今よ!」
「うん! パワー!!!」
その叫びはどうなの……? とは思うけどユーシャの剣は魔物を一刀両断した。
「よしっ! ナイス勝利ね」
ちゃんとみんな活躍して倒せたし、文句のつけようのない戦いだったんじゃないかしら。
「でもちょっぴり心配だなぁ……」
「ど、どうして?」
普段ポジティブすぎるくらいにポジティブなユーシャが珍しく弱音を吐いている。
「実習では50分で終わりだけど……特別実習では2泊3日もこういう生活をするでしょ? 神経すり減りそうだな〜って」
たしかに……! ユーシャの言っていることは間違っていない。この森に入ってまだ5分も経っていないのに結構ストレスは感じている。なぜなら神経を使うから。これを2泊3日で続けるとなると……。
「確かにそうですね。ユーシャ様の言う通りです」
「どっかで交代で休める時間を作らねぇとダメだよな」
「交代制で見張りをしたり……でしょうか」
こんな感じで森の中での会議は続く。みんな共通しているのはこの苦労を2泊3日も保つわけがないという考えだった。
その後襲いかかる魔物を倒していき、ようやく50分が終了! なんとか今回も生き残れたけど……
「なるほどね。これを3日間も続けるのは現実的じゃないわね。もう少し楽になる方法を考えてみるわ」
「私も考えるよ! 今週だけじゃなくて、黄金週間にだって!」
「ならアタシも考えるぜ」
「わ、私もお力になりたいです……!」
「私も。これでも学年5位の学力ですので」
あ、アルチャルのクォーターテストの結果を聞いていなかったけど5位だったのね。流石、やるじゃない。
「みんなありがとう。明日からもこれが続くと思うから、色々な意見を参考にして特別実習も乗り切りましょうね」
今日は実習後すぐに解散することに。ファミレストークになるかな〜と思ったけどまだ4日間学校で会うし……ということで帰宅になった。
「アスセナ、ただいま〜」
「お、お帰りなさいませ、姫様……」
あれ? 何かアスセナに元気がない……どうしたんだろ。
「どうしたのアスセナ、どこか調子が悪いの?」
「いえ! ただ……姫様宛にこちらが届いていまして……」
アスセナが1枚の紙を手渡してくる。手紙……かしらね。
≪お久しぶりですリリー様。魔王様からの伝達です。次の黄金週間……つまりお休みの期間に魔界に戻り、成果を報告してください。魔王様は多忙のため別に担当の者がつくかもしれませんがよろしくお願いします。○悪魔将軍:ジェネット≫
なっ……こ、これは要するに召集するから来いってことじゃない!
「い、嫌よ! もう魔界を裏切ってるんだし……」
「でもそれを魔王様や将軍に知られたら……」
アスセナの言う通りね……間違いなく殺されるわ。
これは……大ピンチというやつじゃない!




