43話 アーチャーとママ
「やったー! 大勝利〜!」
そうね、ユーシャの言う通り、大勝利だわ。盾役を破って残った攻撃役を叩いての完封勝ち。恐ろしいほどに完ぺきだったからね!
「みんなナイスだったわよ! 特にヒラ、ナイスサポート!」
昨日少し落ち込んでいたヒラを勇気づける。そのためだけじゃなく、実際いい働きをしていたから褒めるんだけどね。
「あ、ありがとうございます!」
うんうん、いい顔をするようになったわね。
「よっーし! このまま優勝まで突っ走ろー!」
「「「おー!!!」」」
ユーシャのかけ声に反応して、現実世界に意識を戻す。ここからは観戦の時間ね。
大きなモニターに食いつくみんな。案外まじめに見ているじゃない!
でもどのパーティも似たり寄ったりね。ぶっちゃけ見てて飽きてきたわ。盾役と攻撃魔法の役、それからたまーに支援役がいるくらい。まぁ……私たちもそうなんだから言える立場にないんだけど。
……なんて、思っていた時だった。
「何あの子! 1回戦目にいた?」
「いたけどずっと動いてなかった……と思う」
他のクラスの子たちや1組のクラスメイトたちがざわつき始めた。それもそのはず、今画面には……弓矢で続々とHPを削る少女の姿が映っているから。
「アーチャーか。珍しいな」
シルディの言う通り、弓矢を主軸とした攻撃をする者は少ない。なぜなら防御力がほぼ0に等しいから。
「すごいね! 百発百中だよ!」
「ちょっと怖い……です」
ヒラが指摘した怖さというのは恐らく彼女の表情。まったく眉ひとつ動かさずに黙々と矢を放ち、HPを削る。まるで単純作業のように。
結局その少女が放った矢で相手の盾役をダウンさせ、その後仲間の攻撃役たちにバトンタッチ。少女はまたしても眉ひとつ動かさずに後ろで腕を組んで見守っていた。仲間が勝利をもたらす、その瞬間を、心底どうでも良さそうに。
「すごい……けどあんまり楽しくなさそうだね」
ユーシャの素直で真っ直ぐな感想。
「ふふ……そうね。ユーシャはそのままでいてね」
「ど、どういうこと!?」
そのまんまの意味よ♡ とは言わない。胸の内にしまっておく。恥ずかしいからね。
「あ、あのパーティともし当たるなら決勝ですよね……?」
「そうね。トーナメント的に」
あのアーチャーがどれだけ強いかは今の相手では測れなかった。今後1番注目しておく必要がある相手なのは間違いないわね。
その後は無難に試合が続き、ベスト8が決定した。
「ただいま〜」
「おかえりなさい、姫様♡」
う〜ん! やっぱり疲れた時にはアスセナが1番効くわ〜!
「ワシワシ〜〜!」
「きゃっ! 姫様!?」
「勝ったわよ〜アスセナ!」
抱きついて頭をなでなでしながら戦勝報告をする。
「おめでとうございます、姫様♪ あと3試合ですね♪」
「アスセナのお弁当もいつも以上に気合が入ってて美味しかったわ!」
「はい♪ 心をいつもの3倍込めて作りました♡」
あぁ……もうアスセナと百合結婚しようかしら。それも悪くないわね……でもユーシャの笑顔が脳から離れない! 私って最低かも……。ユーシャに一目惚れしてアスセナには甘えまくって。
「私はダメな子ね……」
小さく、聞こえないくらいの音量で呟いたつもりだったけどアスセナには聞こえたらしく……。
「姫様、こうです!」
「えっ!?」
強引に私を倒して膝枕をしてきた……!
「えっ、な、何!?」
「お家でくらい……私の前くらいでは、ダメな姫様でもだらしない姫様でもよろしいんですよ。いい子いい子」
膝枕をされながらアスセナに頭を撫でられる。……この子、ママなの?
「ありがとう。アスセナ」
ゆっくりと起き上がる。そして……
「私にダメになってもいいと言ったならとことんやるわよ♪ まずアスセナ、耳かきして!」
「……はい! かしこまりました♪」
学校では頼れるリーダーを演じている。でも……リラックスできる家でくらいはダメになってもいい……のかな?




