185話 反抗期
「なんだ……その姿は!」
白く、黒く、点滅するように輝く私に魔王は疑問を投げかける。
「この姿は……ヒラが発案し、アルチャルが構想を練り、シルディが背中を押してくれてできた姿。そこにユーシャの力と私の力を組み合わせた、私たちパーティの集大成よ!」
きっかけはヒラの何気ない一言だった。「ユーシャさんとリリーさんの力を合わせたらどうなるんでしょうね」というもの。そのふわっとした案を、アルチャルが考え、練習方を確立してくれた。挫折した時はシルディが熱い檄を飛ばしてくれた。そして今日、やっと完成した!
「すべては……この世界を平和にするために!」
私は拳を握りしめ、魔王に向けた。
ユーシャのお母さんとアルティス学園長は微笑んでいる。きっとこれも、計算通りなんでしょうね。
「ほざけ! 『ブラック・ウェーブ・シューティング』」
魔王が繰り出す、全力の『ブラック・ウェーブ・シューティング』。まともに受けたら丸一日立てなくなるでしょうね。
「『モノクローム・ウェーブ・シューティング』」
白黒混ざった衝撃波で対抗する。この姿の全力を尽くしてなお互角ということに衝撃を受けた。魔王の強さは私の理解のさらに上にあったのね……。
「リリー! どうする?」
私に力をすべて渡し、地に伏しているユーシャから尋ねられる。これで倒すつもりだったけど無理だった。なら第2案を用意するしかない。
「……直接攻撃を叩き込むわ。サポートが必要だけど……」
私のパーティはみんな力を使い果たし、疲労困憊状態だ。だから頼れるのは……
「私たちしかいないわけだね、姫」
「まぁ任せてください。道くらいは作ってあげますよ」
「……屠る。譲渡」
「頼んだわよ、みんな」
ここまで温存していた個人組に任せることとしましょう。
私は魔力の巡りを右腕に集中。そして一気に駆け出した。
「近寄らせると思ったか? 『ブラック・ウェーブ・シューティング』」
黒い衝撃波が前方から押し寄せてくる。
「いきますよ、セレナさん!」
「あぁ! 合わせてくれたまえ」
「「『ヴァイスサイクロン』」」
白い風が背にぶつかる。その勢いで『ブラック・ウェーブ・シューティング』を突破した。あとは……魔王本体のみ!
「バカめ! 『デモンズシールド』」
魔王は私を遮るシールドを張った。でも残念……そういう盾にめっぽう強いのよ、この子は!
「屠る! 『サウザンドスラッシュ』」
一撃にして千斬り。私たちを苦しめた剣撃が魔王の盾を襲い、バラバラに砕いた。
「なにぃ!?」
「お父さん、これが私の反抗期よ。……受け止めて! 『モノクローム・デリーボ』」
私の拳は魔王の腹に直撃した。
「ぐぅぉお! だがまだだ! この程度で倒せると思うなぁ!」
そんな……! この一撃でもダメだなんて!
そう思っていた瞬間、魔王室の天井が割れ、何かが落ちて来た。
「『ディアブロ・プーニョ』でいやがります!」
降って来たのはイビルちゃん。魔王の頭に拳をクリーンヒットさせた。
「お……のれ……」
魔王はそう呟き、ついに倒れた。
もちろん死んだわけではない。この程度で倒せるほど魔王は弱くないし、何より魔王の死が目的ではない。
私たちは気絶した魔王を持ち上げ、玉座に縛りつけた。数分も経たないうちに魔王は目を覚ます。
「……負けたか」
「えぇ。私たちの勝ちよ」
「……イビルよ、なぜ攻撃した。お前は我の……」
「私はイビルでいやがります。魔王ではありません!」
イビルちゃんは高らかに宣言した。自分を見つけたみたいね。きっとアスセナが話してくれたんだわ。
「……ふん。くだらぬ……が、我は敗者だ。人間に二度も負けた愚王だ。何も言うまい」
「……私たちの要求は2つ。人間界への侵攻を止めること。そして魔人と人間の和解」
「……わがままな娘を持ったものだ」
魔王はそう呟き、ゆっくりと笑ってみせた。
そして3日後、この世界から戦争はなくなった。
次回、最終回です。




