181話 もう一度
「総力戦って、どういう……」
「私が動かせるだけの人間をすべて動かしました。本来ならパーティとして秀でた方を呼びたかったのですが、今年の生徒は個として秀でた方が多かったですからね」
そう言ってビエントちゃんとセレナさんはゆっくり微笑み、メランちゃんは相変わらずよくわからない表情になった。
この3人とは何度も力を高めあった。勝って負けて、勝って負けてを繰り返してきた。パーティじゃないけど、仲間といえるかも。
「みんな……協力してくれるの?」
「あぁ。もっとも私は姫のためだけどね」
「私は自分のためですよ? 勘違いしないでくださいね〜?」
「……右に同じ」
心強い。けど、これでもまだ魔王には届かない。あの人の意思を変えるほどの力が集まったとは言えない。なぜなら、今はリリーがいないから。
「ユーシャさん、そう暗い表情をしないでください。まずはリリーさんをお迎えに行きましょう」
そう言ってアルティス学園長はどこかもわからない道へと歩き出した。
「え? どうしてリリーへ続く道がわかるんですか?」
「それは……後にわかることです」
結局謎は謎のまま、アルティス学園長について行くしかなくなった。
振り返ってみんなの表情を見ると「行こう」って訴えているような気がした。
……うん、行こう。こんなところでお別れなんて許さない。まだまだリリーとは見たい景色がある、世界がある!
「行こう、みんな!」
みんな黙って頷いてくれた。
アルティス学園長について行くと小さな扉の前にたどり着いた。
「では、代表して私がノックしますね」
コンコンコン、と丁寧に3回ノックをしたアルティス学園長。中から反応は……ない。
「姫はいないのかい?」
「いや違う……きっと、私たちを巻き込みたくないから聞こえていないフリをしているんだよ」
「さすがリリーの恋人だな。おっしゃ、ならこの扉をぶっ飛ばせばいいんだろ?」
シルディが腕をグルグル回して壊す意思を見せた。
◆
わからない。
なぜアルティス学園長が私の部屋の前にいるのか。
わからない。
なぜ苦渋の絶縁をしたその10分もしないうちにみんながいるのか。
わからない。
なぜパーティ以外の子もいるのか。
わからない。
なぜ私はこの扉を塞いでいるのか。
「……こんな扉、壊せるなら壊してやりたいわよ」
「聞こえたよ! リリー!」
「……ユーシャ?」
「なら遠慮はいらねぇよな。オラっ!」
シルディの怪力で、私の扉はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。塞いだはずの扉を、何の躊躇いもなく開けた。
1番に私の元へ駆けつけてきたのはユーシャだった。
「ユーシャ……」
バチンッ!
右頬に鋭い痛みが走る。遅れてユーシャにビンタされたのだと気がついた。
「どうして私たちを突き放すの……」
「……わかるでしょう? 魔王には勝てないし、説得も通じない。頭数を増やしたって、それは同じことよ」
「……魔王と負けた時、リリーは『やっぱり』って思ったでしょ」
ユーシャにそう言われ、ハッとした。
「もう一度行こう。今度は私たちを信じて」
そう言ってユーシャは私を抱き寄せた。頬の痛みと真逆の柔らかさ・温かさを全身に感じる。
「……うん」
今度行けば、魔王は間違いなくユーシャたちを躊躇いなく殺すでしょう。
でも、そうはさせない。私たちが私たちを信じた時、絶対に負けないパーティになる。
「アルティス学園長、策はあるんですね?」
「さぁ? 力技なら一つ思いついていますけどね」
それを聞いてさらに安心した。3年間見てきたけど、この人は何か特別なものを持っている。それに賭ける価値は十分にある。
「ごめんね、みんな。……行きましょう。今度こそ、夢の実現のために!」




