180話 苦渋の絶縁
やっぱりダメだった……この地上最強の魔王を倒すなんて、土台無理な話だったんだわ。他にも戦い方はあるけど……リスクが大きすぎる。その選択肢は無いようなものだわ。
私たちは地に伏し、魔王はそれを見て高らかに笑う。
「リリーよ、その人間たちと縁を切れ。さすれば今回の件、目を瞑ってやろう」
「何ですって!?」
あの魔王が、反逆した者に対して許すですって!?
「リリー……」
ユーシャが力無く私を呼ぶ。縁を切るってことはもちろん、みんなとはいられなくなるということ。
当然、ユーシャとの恋人関係も……。
「……私が縁を切ればみんなを無事に帰してくれると約束できますか?」
「……よかろう。次はないぞ」
なぜこんなに魔王は甘い対応を取る? いつもならすでに私たちの首は胴体と引き裂かれていてもおかしくない。それなのに生きて帰してくれるだなんて……
「リリー、そんなことしないよね? 私たちと縁を切るだなんて」
「でもそうしないと、みんな死んじゃう」
「リリー?」
私は魔王に跪き、忠誠を誓うポーズを取る。
「魔王様、どうかこの者たちをお帰しください。私はここで、自分の天命を全うします」
「うむ。次はないぞ」
魔王の言葉には重みがある。もちろん、次は情け容赦なく殺すということでしょう。
私は涙を堪えて振り返る。
「さぁ、みんなお別れよ。今までありがとう。元のルートから帰るといいわ」
「おいリリー! そりゃねぇだろ」
「そうです! あんまりです!」
「ここでリリー様が諦めて、どうするのですか!」
みんなから反対の声が飛ぶ。
それだけで、私は幸せなのだと気がつけたわ。
「みんな、ありがとう。さよなら。『ブラック・ウェーブ・シューティング!』」
私は黒い衝撃波をみんなに向かって発動する。必然、飛ばされたみんなは魔王室の外へと追いやられた。
……ごめんなさい、私だってこんなお別れはしたくなかった。それはわかってちょうだい。
魔王室の扉は自動で閉まり、ユーシャたちが扉を叩こうと開きはしない。
「ふん。人間の学校へ送り込んだのは間違いだったか?」
「……いえ。私を成長させてくれました」
「お前を戦場から遠ざけるためだったが、結果的に近づけてしまったな」
「……え?」
「ふん」
魔王はマントを翻し、玉座へと戻っていった。
私を勇者学校に送ったのは……戦場から遠ざけるため?
「なんなのよ、いったい……」
私は未だ扉を叩くユーシャたちを背に、魔王城にある自室へと向かう。その足取りは人生で一番、重いものだった。
◆
リリーは厚い扉の向こうへ消えていった。
私たちは泣きながら扉を破壊しようとするけどびくともしない。
「くそッ! どうすりゃいいんだ!」
みんなどうすればいいかわからず混乱している。そんな時後ろから足音が聞こえてきた。
「み、みんな。とりあえず後ろに集中しよう!」
みんな一斉に後ろを向く。足音が近づくにつれ、緊張感が増してきた。
「ふふ、予想通り苦戦中のようですね」
「え……」
「あ、アルティス!」
魔王城から出てきたのはアルティス学園長。それに……
「姫がいないね、何かあったのかい?」
「……魔王、屠る」
「屠ったらダメなのではないんですねぇ?」
セレナさん、メランちゃん、ビエントちゃんまで!
「さぁ、総力戦と行きましょうか」
アルティス学園長は静かに微笑んだ。




