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魔王の娘ですが勇者パーティが百合天国だったので裏切ることにしました。  作者: 三色ライト


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178/186

178話 魔王と対峙

「リリーか」


 ぞくっと、お腹がねじれるような思いがした。

 これが魔王の言葉が持つ重力であり、圧。


「ここまで来たわよ……」


 私は勇気を振り絞って声を出した。魔王は私たちに背を向けている。まだ魔王は私しかいないと思っているはず。

 ここで奇襲をかける? いや、できれば平和的に解決したい。こちらから仕掛けて厄介なことになるのは避けたいところだわ。


「卒業おめでとう……と言いたいところだがなぁ、リリー。お前は勇者の卵一人でも潰したか? お前の戦績を述べてみよ」


 魔王は振り返ることなく、私に問うてくる。


「勇者の卵となり得るものはいませんでした。それがすべてです」


 ユーシャの、シルディの、ヒラの、アルチャルの顔を見る。みんないくらかの恐怖は感じているようだけど、逃げようという者はいない。


「そうか。して、その者たちは何者だ? 人間の匂いがする」


 ……見ていないのに、わかっているわけね。化け物め……!


「私はユーシャ。あなたが殺した、伝説の勇者の娘!」


 ユーシャは高らかに宣言してみせた。

 その言葉を聞いた魔王はユーシャと同じく高らかに笑い、振り返る。

 鬼。そう形容するのが一番見合う顔に、私たちは怖気付き、一歩後ろに下がった。


「面白いことを言うものだ、勇者の娘を連れてきたとは……リリーよ、どういうことか説明してみよ」


 そう言って魔王は立ち上がる。玉座から腰を離した瞬間、留まっていた魔王のオーラとも言うべきものが放出され、私たちの足を絡め取った。


「説明……わ、私たちは、この戦争を終わらせに来た!」


「……ほう?」


「お父さん、この戦いをやめて! もう誰も争いで死ぬことがない世界を作って!」


 娘が父にわがままを言う。ただそれだけのことを、私は叫んだ。


「……何を言うとるんだお前は」


「……え?」


 魔王は本当に、心底意味がわからないという表情で私を見つめてきた。


「争いは生命の求める本質的欲求。それをやめろというのは理解できぬな」


「た、ただ戦いたいだけなら仮想戦闘空間がある! 誰も現実では傷つかない! それでいいじゃない!」


「ふん、わかっておらぬな」


 魔王は静かに笑い、私を見放すような態度を取る。


「さて、我の部屋に人間を連れてきた罰、どうつけるべきか……」


 魔王は剣を抜く。魔界に伝わる伝説の魔剣、[ディグラム]を。


「やめてよお父さん……戦いたくなんてない!」


「それは貴様が弱者であるからだ!」


 魔王は珍しく声を張り上げた。私たちはその圧に飛ばされそうになるところをグッと堪え、恐ろしいながらも向き合った。


「さぁ構えよ人間ども。貴様らを殺し、リリーにも罰を与える」


 剣を構えた魔王にもはや言葉は通じない。


「やるしかないよ、リリー」


「あぁ。こうなりゃ覚悟を決めようぜ」


「立ち向かいましょう。みんなで」


「リリー様が罰せられるところを見てはいられません」


 みんな、戦う姿勢を見せてくれる。

 もちろん、みんな戦いたくなんてない。その戦いを終わらせにきたのに、戦うなんて矛盾している。

 でも、魔王に対してできるのが戦いしかないというのなら……


「これが、この世界最後の命をかけた戦いよ」


 決戦の火蓋は落とされた。

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