173話 ラーヴァナ
魔王城はお世辞にも堅牢な守備を誇っているとは言えない。むしろ城としてはガバガバすぎると言える。これは魔王の絶対的自信が現れている。どんな敵が入ってこようと、魔王がいれば問題はない……ということね。
でもとりあえず今の私たちにとっては好都合ね。
「1階から3階はショーットカットするわよ。4階のあそこ、見えるかしら」
魔王城4階には魔界の中でも限られた人にしか知らされていない入り口がある。そこから入り込めば1階〜3階の警備は無視できるってわけ。
秘密の入り口へそっと飛んでいく。5人で移動となると結構目立つんだけど……たぶん大丈夫でしょうきっと。
なんとかバレずに秘密の入り口へ到達した。ここを知っているのは幹部クラスだけだから見つかったら厄介だったのよね〜。
ホッとしてドアを開けると、やけに力を入れなくても開くな……と疑問に思った。というか……軽すぎる!
「みんな下がっ……!」
ゾクっとした。ドアの向こうから出てきたのは魔王四天王の一人であるラーヴァナ。禿頭の老人は私たちを視界に入れると驚いたような顔を作った。
「ここでエロジジイか……!」
なんとも運の悪い。魔王四天王の一人と出会うなんて相当珍しいこと。その中でも特にこのラーヴァナにだけは会いたくなかった。
「……リリーよ、そちらの者どもは人間であるな。あぁ臭い臭い。じゃが悪くない。若い女子じゃな」
「……見逃してもらえないかしら?」
「いくら魔王様の娘のお主でもそれはできぬ。人間をここへ連れてきたお主はもはや敵と見なさざるを得ん」
エロジジイかつハゲのくせに頭の回転は早い。私が襲撃をかけにきたことをもう把握したようね。
「なぁリリー、この爺さんくらいなら倒せるんじゃねぇか?」
「迂闊に攻撃しないで。ラーヴァナは変な魔法ばっかり使う変態だから気をつけて」
「変態とはまったく失礼な話じゃな。じゃが若い娘に変態と呼ばれるのも悪うない」
そう言って驚いた顔をニヤニヤとしたすけべ顔に変えたラーヴァナ。
この筋金入りの変態め……!
「まぁ一度くらいは見逃してやろう。魔王様にも報告しないでやる。お主のことは孫娘のように可愛いでな」
「それはどうも。でも残念。私たちは今日で魔王の強権を終わらせにきたのよ」
そう言うとカッカッカッと乾いた笑いを漏らすラーヴァナ。何が面白いのか、その笑いは止まることを知らない。
「リリーやろう。あの人のことはわからないけど……私たちならできるよ!」
「そうです! 私たちなら勝てます!」
「同感ですね。何なら、私一人でも射抜いてみせましょうか?」
みんなはやる気十分みたいね……どうするべきか……。
ラーヴァナとはできるだけ戦いたくない。その理由は戦うとしたら痛いほど痛感できると思う。でもここで戦わなければここから去ることを意味する。つまり、失敗するということ。
これまで頑張った三年間が水の泡になる。それは……それだけは……。
「やってやりましょう。ラーヴァナを……倒す!」
「ワシを倒すか。面白いのぉ面白いのぉ。じゃが弁えよ人間どもよ。知では貴様らが優れていようと、武ではワシらには勝てぬのだと思い知るが良い。『セラレーション』」
ラーヴァナの魔法が発動する。まったくの予備動作と準備時間なしに魔法を使えるのは流石としか言えない。
「……は?」
「えっ、あれ? みんなは!?」
私の目に映ったのはユーシャと、私たちが入ろうとした秘密の入り口の反対側。
まさか……シルディ、ヒラ、アルチャルと分離された!?
「急ぐわよ、ユーシャ!」
「う、うん!」
私たちは仲間の元へと駆け出した。




