172話 飛んでいこう
「みんな、できるだけ力をセーブするためにゆっくり飛ぶわよ」
そう、みんなもう普通に空を飛べるようになった。そんなケースは稀で、私たちの他に同学年で飛べるのはセレナとメランくらい。あとビエントも風の力を応用すれば飛べていたかな。とにかく誰でも飛べるわけじゃないの。みんな優秀ってことね。
これならすぐに魔王城につく。道中魔物が襲いかかってくるかもしれないけど、それくらい今の私たちなら楽勝だわ。
「やっぱリリーは飛び慣れてるよなぁ」
「そりゃ……小さい頃から飛んでたし」
「わ、私なんてつい先月飛べるようになったばっかりなのに……」
そう、このパーティーの中では1番飛ぶのに時間がかかったのはヒラだった。でもまぁ結果的に飛べているし、かなり優秀な方だと思うけどね。3年生の夏に開催された個人戦でもベスト16まで残ってたし。
「気にすることはないわよ。早い遅いは仕方のないことだわ」
「そうだよヒラちゃん。それより、前を向いて飛ばないと木にぶつかっちゃうよ」
「は、はい!」
ユーシャがさらりとフォローを入れてくれた。
私はユーシャに向けて感謝のウィンクを飛ばすと、ユーシャは私に投げキッスで返してくれた。う〜〜甘酸っぱい!
「いつまで経っても赤点スレスレだったシルディより優秀だから、胸を張りなさいヒラ」
「お前は相変わらずアタシに容赦ねぇな」
まぁ……成長したところ、しないところはいろいろよね。
ちなみに外見的な変化を言えばアルチャルは髪を短く切ってしまった。腰まで伸びていた髪は今や肩に触れるかどうかという長さになっている。
他のみんなは外見的な変化はないわね。
「……ん? みんな、魔物よ!」
「おっ! 来たな〜!」
シルディがわかりやすく燃え上がっている。それと同じくらい物理的に燃え上がっている魔物が現れた。火の魔物、サラマンダーね。
「リリー、あの魔物はどう倒せばいい?」
「普通にぶっ飛ばす。あ、尻尾は切っても生えてくるから意味ないわよ」
「了解! わかりやすいね」
「ユーシャ様、1秒後にお飛びください。せやっ!」
アルチャルの放った魔法の矢に、ユーシャが飛び乗って移動する。私たちの撹乱作戦の一つ。
「『デビリティ』」
ヒラの衰弱魔法が発動した。これでどんどん弱まっていくはず。……と思いきや、逆に暴れ出してしまった。最後の力を振り絞る気ね。
「ゴアァァァァッッ!」
渦巻く火炎が私たちを襲う。でも残念。その程度の炎なら……
「『エレメンタルドレイン』」
シルディの属性吸収魔法で吸い取ってしまう。さぁ、ようやく私の出番ね。
「おら決めてくれ、リリー、ユーシャ!」
「えぇ!」「うん!」
「『エレメンタルコネクト』」
シルディが吸収した炎は私とユーシャに均等に分け与えられた。これで炎が魔力消費なしでエンチャントされた。
「リリー、いける?」
「もちろん。ユーシャとなら!」
「「『コネクト・フレイム』」」
ユーシャの輝く黄金の炎と、私のおどろおどろしい黒い炎が混ざり合い、一つになる。これが私たちの合体技!
「「はぁぁぁぁあ!」」
繋がった炎はサラマンダーを飲み込み、本来火に耐性を持つはずのトカゲを丸焼きにした。
勝利が確定した後、私たちはみんなで向かい合って親指を立てた。
もう何度も経験した、それでも何度でも嬉しい勝利。それを噛み締めるようにみんな笑顔になる。
「さぁ行きましょうか。あと少しよ!」
こうして私たちは飛び続けた。そして30分後……
「見えた……あれが……」
「魔王城か……」
「こ、怖いです……」
「気圧されるな、私!」
みんな四者四様の反応を見せる。
「乗り込むわよ」
私は静かに宣言した。




