170話 いざ、魔界へ
みんなの頼りがいのある言葉に喜びの感情が湧き上がってくる。
2年半前。あの時はがむしゃらに魔界へ突っ込もうとした。でも今は違う。確固たる強さを持って、この戦いを終わらせるために行くんだ!
「でもいいの? そんなに簡単に決めちゃって」
「あの時は私たちも弱かったけど、今ではそこそこ以上にやれるもんね」
「そうです。私たちならできます」
「みんなで……強くなりましたから!」
「ちょいと刺激の強い卒業旅行みたいなもんだろ」
みんな……本当に心強いパーティになってくれたものだわ。この3年間を誇りに思う。
それと同時に、本当に私たちの夢に向かって動き出すんだという高揚感も湧いて来た。もちろん簡単に解決できるものではない。でも、ここでやらねばいつやるというのか。
「行こう。明日出発するわ!」
「「「「おー!!!!」」」」
頼もしい掛け声が街に響いた。
家に帰るとボロアパートが迎えてくれる。3年間、よく壊れずに生活できたわね……。
「お帰りなさい、卒業おめでとうございます、姫様♪」
「ただいま。イビルちゃんも帰ってきてる?」
「たぶん帰ってきていると思いますよ。隣から音が聞こえてきたので」
まったく、イビルちゃんが編入してきた時は何事かと思ったわ。魔王の分身体が学校にいるというから、なんとなく体が強張るし。
私はイビルちゃんの部屋のインターホンを鳴らす。
「はーい。何でいやがります?」
「明日魔界へ行くわ。私たちパーティメンバーでね」
「……それを私にお伝えする意味、わかっていやがりますよね」
「もちろん」
言うまでもなくこれは宣戦布告。ただし、イビルちゃん側から魔王へ情報伝達はできないから、これが早急に漏れる心配はない。じゃあ何で今イビルちゃんにそれを伝えたかと言うと……
「イビルちゃんもこない? 魔王をぶっ飛ばすの」
「自分で自分をぶっ飛ばすことに、その当人を誘う神経がどうかしていやがりますね」
まったくの正論をぶつけられた。これは反論の余地0ね。まぁ来たくなければ好きにすればいいんだけど。
ただイビルちゃんも学校ではかなり優秀な部類に入っていた。
ビエントやメラン、セレナにニアン・メルティら中堅どころと並ぶ存在としての地位を確立していたからね。それを味方につけられるのならつけておきたいのは本音よ。
「あなたは魔王の分身体であって魔王ではない。そのことをじっくり考えておくのね。あなたは何がしたい? あなたはこれから何でありたい? 勇者学校を卒業した今、あなたとしての生き方が問われているわよ」
「私の……生き方……」
そう、イビルちゃんが勇者学校に来たのは……いや、そもそも生まれた理由が勇者学校に通う私を監視するため。それならばこの子がどうするかは今後のイビルちゃんの存在定義に触れる。
「明日朝7時。校門前で集まることになっているわ。そこから先は好きになさい」
イビルちゃんが今から魔界へ飛べば魔王にこの話は漏れる。そうなれば私たちの夢の実現は限りなく不可能に近づく。
それでもイビルちゃんに話したのは、彼女なら自分というあり方に向き合えると思ったから。さぁ、どんな答えが出るかしらね。
私は今日はぐっすりと眠り、翌朝、清々しい気持ちで目覚める。
アスセナを連れ、校門前に集まればみんなもう揃っていた。
「遅いぞリリー」
「シルディから言われる日が来るとはね。さて……行きましょうか!」
私たちの夢の実現のため、今から私たちは……魔界へ行く!




