169話 さぁ、記憶を戻しましょう
卒業式。
入学したての頃には想像もつかない場所。そこに今私たちは立っている。
「長いようで、短かったよな」
シルディがポツリと呟く。
この3年間、本当に学校側には振り回されてばっかりだった。イビルちゃんが転校して来たり、突然無人島に連れて行かれ、パーティポイントを消費しながら生き残るサバイバル実習をしたり、雪山に行ってスキーをしながら魔物を狩る謎のイベントに参加させられたり、文化祭と称した魔法の出店を作るイベントがあったり。
「充実した3年間だったわね」
残念ながら、私とユーシャの夢……いや、私たち5人の夢になった「人類と魔族の和解」はまだ成立していない。攻めた動きができないまま、3年が過ぎてしまった。
あとユーシャとイチャイチャしながら3年が過ぎたとも言えるわね。恋人になったのだから当然でしょう?
「これも皆さんがいたおかげです」
卒業式前だというのにもう泣きそうなヒラ。この3年でかなり強くなったけど、泣き虫なのは相変わらずね。
「そうですね。シルディ以外の皆さんのおかげです」
「おい待てコラ」
アルチャルも相変わらずね。でも実はシルディのこと、好きなんでしょう? 知ってるのよ、私。
だってユーシャといる時の私みたいな目でシルディを見ているし。
そういう私の成長した部分といえば、恋愛面かしら? 最初は探り探りだったけど、今ではデートもお手の物……だと思う。詳しくはユーシャに聞いてください。
今ここにユーシャはいない。卒業式の答辞の練習をしに行っている。
「みなさん。式が始まるので体育館に移動してください」
先生が教室の前の方から声をかけてきた。さぁ終わるのね。この長いようで短かった学園生活が。
体育館に移動して、用意された自分の席に座る。
しばらくするとアルティス学園長が壇上に立ってお話を始めた。
「みなさん、3年間お疲れ様でした。その努力が戦場で報われることを心より願っています……が、私の願いは別のところにあります。いつか争いのない世界が生まれるよう、小さき存在ですが祈らせていただきます」
アルティス学園長も争いのない世界を望んでいたのね。……というか、普通そうよね。戦うより、仲良くなった方がいいに決まっているもの。
「それでは3年間の最優秀パーティを表彰します。最優秀パーティは……リリー・ユーシャ・シルディ・ヒラ・アルチャルのパーティです。そのパーティポイント、実に525pt。史上最高のポイント数です」
私たちは体育館中から拍手を浴びる。照れくさいわね。
ユーシャはそれら一つ一つに応じるように丁寧にお辞儀をした。ピンク色の髪が揺れて、私をドキッとさせる。
在校生からの送辞と、ユーシャの答辞を終えて、私たちの卒業式は終了した。
「ねぇリリーはこれからどうするの?」
「もちろんみんなと一緒にいるつもりよ。でも……まずは魔界に一度帰るよう言われているわ」
「そっか……じゃあここで少しのお別れだね」
しんみりとした空気が私たちを包む。するとアルティス学園長がこっちに近づいて来た。
「さぁ、記憶を開けましょう。ラファエル」
「だーかーらー! 真名で呼ぶなっての!」
アルティス学園長の微笑む顔が見える。……あれ? 私、何か大事なことを忘れていたような……
「さぁリリーさん、思い浮かべた言葉を口にしてください」
「……みんな、私と一緒に魔界へ行きましょう」
自分で言ってて驚いた。そうだ、これは2年半前、みんなに言おうとしたこと。なんで忘れていたんだろう。
この言葉に、みんなの答えは……
「「「「もちろん!」」」」
とても、頼りがいのある答えだった。




