167話 衝撃の事実
「ただ……いま……」
ユーシャと正式にお付き合いをすることになり、なんとなく恥ずかしくなって帰宅した。
ドアを開けると、アスセナのすすり泣きが聞こえてくる。
「あ、お帰りなさいでいやがります」
「い、イビルちゃん……」
なぜか私たちの部屋にイビルちゃんが来ていた。嫌な予感がする。すっっっごく嫌な予感がする。
「アスセナさんはなんで泣いているでいやがります?」
「まぁ……いろいろとあったのよ」
わざわざイビルちゃんに今回の恋愛騒動について教える必要はないと判断。というか、また引っ掻きまわされたらたまったものじゃないわ。
「それで? イビルちゃんはなんの用事?」
「あぁ、忘れかけていたでいやがりました。リリーさん、魔王からの伝言でいやがります。"夏休み中に魔王城に来い"とのことでいやがります」
「そう。魔王からの…………………………ん?」
今……魔王って言ったわよね? 魔王からの、伝言って言ったわよね!?
「ちょっと待って……イビルちゃんって何者なの?」
「何者って……隣人であり同志であると最初に言いやがりましたよ」
その言葉から記憶を辿る。確かに言ってたわ。
『今日から隣人として、同志として、よろしくお願いしやがります』って。
その同志って……魔界の人間ってこと!? 言葉遣いに気を取られてすっかりその可能性を排除していたわ!
「そ、それで魔王城に来いって……いつその伝言は受けたの?」
「ついさっきでいやがります。私は魔王様の生んだ分身体。魔王様からの一方通行ではありますが指示が飛んでくることがあるのでいやがります」
「魔王の分身体!?」
何それ怖い! とかそういう次元を遥かに超越しているじゃない! ってことは……私が魔界を裏切ったことは絶対にイビルちゃんにバレたらダメということね。
あまりの情報の供給過多に頭がパンクしそうになる。アスセナも泣き止んで驚いているくらいだし。
「言っていなかったでいやがりましたっけ?」
「言ってないわよ! そんな重要なことは先に言って!」
でも逆に分身体という確証は得られた。だって本物の魔王でもそういうことを私に伝えたりはしないだろうし。だってイビルちゃんを送ってきたことも黙ってやったわけでしょう?
………………………ん? それなら……
「なんで"あの日"は夜這いしてきたの? あなた魔王の分身体なんでしょ?」
あんまり思い出したくないけど、"あの日"のことを振り返る。私のことが気になるだの言ってたけど、魔王ならそんなことするはずがない。
「それは魔王様がリリーさんのことを好きでいやがるからに決まっているでしょう!」
「……はぁ?」
魔王が私のことを好きぃ!? そんなわけがない。
「仮に好きだったとしても夜這いはせんじゃろがい!」
もう自分のキャラが崩壊していることにも気がつかないほど、私はパニックに陥っていた。
「スキンシップを取りたかったでいやがります」
「スキンシップ……そう、スキンシップね……」
もうそれでいいやという感じ。深くまで考えていたら脳が追いつかないわ。
ちょっとは期待してもいいのかしら……親に、魔王に好かれているって。もちろん、親子関係としてね。
「とりあえず伝えることは伝えたので失礼しやがります。ちゃんと魔王城には行きやがってください。1週間後に」
1週間の余地をもらった……これは普通のことのようでかなりの温情をかけられている。準備も色々できるわけだしね。
イビルちゃんはその言葉を残して自室へと帰っていった。
「姫様……」
アスセナは心配そうに私を見つめてくる。私は私の中で、一つの答えを出した。
「行こう……魔王城に……みんなで!」




