163話 ユーシャとデート③
そこからはウィンドウショッピングだったり駅の小さな小店でアクセサリーを買ったりと、順調なデートをして回った。
そして日が暮れ始め、あとは夜ご飯を食べたら解散ということになる。
「お店は任せて。もう予約してあるから」
「本当? 頼もしいわね」
今日という1日は本当に楽しかった。でも正直、ユーシャから聞き出したいことはまだあった。私が魔族であることを告げて、ユーシャがどう思ったのか。それを2人きりの時間に聞きたかった。
ユーシャに連れられお店に入る。そこはお世辞にもオシャレとは言えないお店。客入りも少ないし、大丈夫なのかと思う。
案内された席に座り、ユーシャがおすすめの料理を注文してくれてから、口を開いた。
「ここはね、お母さんの好きなお店だったんだ」
「そうなんだ……」
「ここに来るとお母さんを思い出すから来れなかったの。でも、今日リリーと来れた。ありがとね、リリー」
「こちらこそありがとう。そんな大事なお店に、私を連れてきてくれて」
一つの葛藤を、ユーシャは私と乗り越えてくれた。
そこからは料理が届くまで無言で、私たちの乗り越えたものをじっくりと噛み締めた。
2人で一歩、成長できたのね。私と、ユーシャで。その実感を噛み締めながら、料理を口に運んだ。
「ねぇリリー、魔界ってどんなところ?」
その質問に吹き出しそうになった。慌てて周りを見るとお客さんは他にいない。たぶんユーシャはそれを確認した上で質問したのよね。
「……なんというか、じめっとしているわね。あんまりいいところではないかも」
「そっか……。あのさ、リリーなら魔王城って行けたりするの?」
なぜそんなことを聞くのか。大体の見当はついていた。答えるべきか、やめるべきか。頭を悩ませたけど、答えることにする。
「えぇ。その気になれば行けるわよ」
「なら……私を連れて行ってもらえないかな?」
「………………危険よ」
はっきりと断言した。ユーシャは強い。セイクリッド系魔法を使えれば魔族だって怖くはない。
でも、魔王はそんなもの通用しない。それはユーシャのお母さんが身をもって証明している。
ユーシャのお母さんを警戒して、魔王は私をここへ送り込んだけど、魔王は無傷だった。つまり、伝説の勇者の攻撃を全く受けていないということ。はっきり言って、別次元の生き物だから。
「そう……だよね」
シュンとするユーシャ。その姿は可愛らしくも映るし、可哀想にも映る。
連れて行くだけなら簡単。でも、その後が辛い。
魔王が話し合いの席に応じるなんて思えないし、和解なんて笑止千万と言うでしょう。力でねじ伏せるしか方法はないけど、それができたら苦労はしない。
「焦らずゆっくりやっていきましょう。ね?」
「……うん。そうだね」
その会話を最後にデートが終了した。最後は手を繋いで歩いて帰宅する。
「今日はありがとうね。明日のアスセナちゃんとのデートも……まぁそこそこに楽しんで」
「ふふ、そこそこにね」
ユーシャと手を振って別れた。その後考えに耽る。
魔界へユーシャと行く……悪い考えではない。でもあまりに危険だし、リスクが大きい。でもこのままじゃいつまでたっても犠牲が増える日々。
そんな頭痛がするようなことを考えながら家に帰ってきた。
「お帰りなさいませ、姫様♪ どうでしたか?」
「楽しかったわよ。明日はよろしくね、アスセナ」
「はい♪」
そのアスセナの笑顔からは何か複雑に絡み合った感情を感じ取れた。その詳細まではわからないけど、明日のデート、何かが起こるかもしれないわね……。




