161話 ユーシャとデート①
『デート』。私にとってそれは理外のものだった。
傍若無人な魔王が親であるとどうしても誰かと横に立って、平等に、楽しい時間を過ごすというのは学べなかった。
ただ、そんな私を哀れに感じたのか、いつかベルゼブブが声をかけてくれたことがある。
『リリー、もしこれからデートをする機会があるのなら、相手のことを考えて行動をする……のではなく、自分が楽しむんだ。そうすれば、相手も楽しい気持ちになってくれるはずだよ。……まぁ、私はデートなんてしたことないんだがね』
この言葉を胸に、私は今日はユーシャと、明日はアスセナとデートをする。
楽しむ心、向き合う覚悟。この2つをもって、このデートに臨んでやるわよ!
というわけで家を出ると、ユーシャが迎えに来てくれていた。
「おはようユーシャ。今日は楽しみましょうね」
「うん! まずは楽しくなくちゃね♪」
良かった、ユーシャも楽しむ気持ちを持っていてくれたみたい。
「それとリリー、その服似合ってるよ」
「そう? ありがとう。じゃあ行きましょうか」
「ブブー! 減点です」
ユーシャが手をクロスさせてXを作った。減点って、何の点が減らされたのかしら。
「デートの最初は女の子の服を褒めるところから始まるんだよ、リリー」
「そうなの? 知らなかった……」
ユーシャは何でそんなこと知っているのかしら。もしかして……私以外ともデート経験がある?
別にそれはユーシャの自由なんだけど、少しだけモヤモヤするというか、何というか……
「ってデート雑誌に書いてあった!」
バーン! と胸を張って雑誌から引用したことを正直に告白したユーシャ。安心したような、逆に不安なような……。
「えっと……じゃあ……可愛いわね、似合ってるわよ」
「うん、ありがとう。じゃあ行こっか♪」
実際ユーシャの着ているブラウスは可愛いし、よく似合っていた。それに涼しげで、季節感がある。デートしているという事実に焦っている今じゃなかったら悶絶していたかもしれない。
「今日はどこへ連れていってくれるの?」
「ふふ、まだ内緒だよ☆」
ユーシャはすごく眩しい笑顔でそう答えた。心なしか、いつもより楽しそうに見える。
ユーシャについて行くと、何やら人通りが多くなってきた。繁華街に来たってことかしら?
「リリーってまだこの街のこと全然知らないよね? だから今日は案内の意味も込めたデートプランを立てたの」
「それは助かるわね。今後も長く暮らすことになるでしょうし」
「……約束だよ?」
「……うん」
気軽にだけど、重い約束を交わした。私はもう魔界には帰りたくないし、ずっとこっちで生活していたい。もちろん、ユーシャと私の目標である魔族と人間の和解が達成できたなら交流はしたいと思っているけど。
「よしっ、じゃあ早速グルメから行こう! クレープだよ!」
「いいわね、私が払うわよ」
デートプランを立ててもらった上に払わせるわけにはいかないと、私は財布を出す。すると……
「はいブブー! また減点です」
「え、えぇ……?」
むしろ今のは加点されるべきと思ったのに。謎の点数が下がって行くとなると、見えないものなのにいい気はしない。
「デートは平等に! お金は半分こだよ!」
「そ、そうなのね……」
勝手なイメージでは男性側が払うものだと思っていたわ。まぁ私たちは両方女の子だけど……。
「ユーシャはどれにする?」
「ふふ……ここでは選択肢は一つしかないのだ!」
「え、でもメニューにはいっぱい載ってるわよ」
「まぁまぁ任せて。すみませーーん! 百合カップルクレープ1つくださーい」
何それ……と思った数分後、巨大なクレープが私の目の前に現れた。
「まさかそれ……」
「うん。この一つのクレープを一緒に食べるの。楽しそうでしょ?」
私……デート中に鼻血とか出ないかしら。とりあえず今はそれが心配だわ。




