157話 告白
「どうしたの? 突然飛び出して行ったりなんかして」
「……」
私の問いに、ユーシャは答えない。たぶん、気まずさを感じているんでしょうね。まぁ、私も感じているんだけど。
「……………ごめんね」
ユーシャがポツリと呟いた言葉を聞き逃しはしなかった。
本当はユーシャの方が質問したいくらいでしょうけどね。見つかるとは思っていなかっただろうに、私がすぐにユーシャを見つけたから。アルティス学園長に頼ったなんて、信じられるかしら。
「別に謝ることはないわよ。さ、帰りましょ?」
そう私が言っても、ユーシャは動かない。
「ねぇリリー、少し座ってお話ししてもいいかな?」
「……えぇ。いいわよ」
そんなにすんなり帰られるとは元から思っていない。だから私はわかっていたようにユーシャの隣に座る。
ユーシャは気まずそうにしながら、口を開いてくれた。
「私ね、実はアスセナちゃんが苦手だったの」
「え、えぇ……」
まぁそれはなんとなく知ってるというか、"実は"とつけるまでもない気がする。常に稲妻が走っていたし。
「ずっと何でかなって思ってた。そしたら最近、セレナさんとかも苦手だって思って。それで今日、イビルさんが来て気がついたんだ」
「……何に?」
「私ね、リリーを他の人に取られちゃうのが嫌だって思ってるみたい。これは嫉妬……って言うのかな」
それを聞いた瞬間、悩んでいるユーシャには申し訳ないけど嬉しくなった。ユーシャが私を巡って嫉妬してくれている……その事実は恋する乙女である私には吉報だった。
「つまり……ユーシャは……」
「うん。言うね」
そう言ってユーシャは私を見つめた。そして私の手を取って、強く握りしめる。
「私はリリーが好き。一緒に目標を追いかけてくれる。ずっと私を引っ張ってくれる。そんなリリーが大好き」
「ユーシャ……」
一言でいえば、嬉しかった。それはそのはずよね。好きな人に好きと言われたんだもの。予想外で驚きも大きいけど、嬉しいわ。
ユーシャは手を取ったまま、どんどんと顔を赤くしていく。
「あ、あのさリリー? そろそろ答えてくれると嬉しいかも。もうもたない……」
「あ、ごめん! ちょっと飛んじゃっていたわ」
ゆでダコのようになったユーシャもそれはそれで可愛かった。
さて、そろそろ真面目に向き合わないといけないわね。
ユーシャは自分の心を隠すことなく、告白してくれた。だったら私も、告白しないと平等じゃない。私は息を呑み、覚悟を決めた。
「……ねぇユーシャ、少し話を聞いてもらってもいいかしら?」
「うん聞くよ。すっごい聞くよ」
グイッと身を乗り出して、ユーシャは聞く姿勢を取ってくれた。それはありがたいけど、私に取っては少しプレッシャーになる。だって、今から話すことは……
「ユーシャ、これで私を嫌いになるかもしれない。でも、願わくば最後まで聞いて欲しい。驚くかもしれないし、怖くなるかもしれないし、もしかしたら恨みを抱くかもしれない。それでも、聞いてくれる?」
「うん、聞くよ。たとえどんなことでも、私はリリーのことを知りたい!!」
「そう……なら言うわね。私の本名はリリー・フォーデフェルト。フォーデフェルト家の令嬢ということよ」
「つまりお嬢様……っていうこと?」
「えぇ、もう少し聞いて。フォーデフェルト家はね…………魔界の者なの」
「……つまりリリーは魔族だった……ってこと?」
「うん。ずっと黙っていてごめんなさい。それに加えて伝えておくわ」
「……うん」
心臓がバクバクとやかましく音を立てる。私はそれを無視して、言葉を紡いだ。
「私は魔王の娘なの。つまり私は…………ユーシャのお母さんの仇の娘ってことよ」
最後まで言い切った後、私はユーシャの顔を見れなかった。




