150話 出校③
グラウンドに到着するとグリフィスさんは仁王立ちして私たちを待ち構えていた。その姿はなんというか……怖い。
「さぁ時間が惜しい。始めるぞ」
グリフィスさんは柔らか素材の剣を地面に向け、私たちにそこに立てと命令した。
私たちは素直に従って移動する。
「き、基本フォーメーション!」
シルディ、ユーシャ、私、ヒラという、アルチャルを抜いた懐かしい陣形を取る。
ただ……アシスタントパーティの人たちとは別格のオーラを感じるわね。気を抜くとすぐに全滅しそうな……
「って!」
いつの間にか、私たちのフォーメーションを突破して私の目の前まで来ていた。
「ふん。こんなものか……」
鼻で笑い、グリフィスさんはまた最初の位置へと帰っていく。見えなかったとか、そういうレベルじゃない。そこにいることすら、気が付かなかった。
「皆さん、頑張ってください」
アルティス学園長は呑気に椅子に座りながら私たちを応援している。少しばかりイラッとするのはなぜかしらね……。
「お前たち、もう1人パーティメンバーがいるそうだが、そいつはどこに入る?」
「い、一番最後尾に……」
「そうか。なら……」
そう話しているうちに、いつの間にかグリフィスさんは私たちの視界から消えていた。
「それなら、この辺りに立っているということだな」
声が聞こえてきたのは後ろ。ちょうどアルチャルが普段立っている場所に、グリフィスさんは立っていた。
いつのまに……と声を出す間もなくグリフィスさんはまた消え、元の位置に戻っていた。どうしてそんな瞬間移動じみたことができるの……。
もしかしたら、アルティス学園長よりも強いのかもしれない。それはつまり、全力を出した私よりも強いということ。
「そろそろ……お願いします」
「ふむ」
「がっ!?」
私がこの人から学びたい。そう思って声を出した次の瞬間、グリフィスさんが目の前に現れて私の首を掴んだ。
「ゲホッ、ゲホッ」
「貴様は我慢という言葉を知らんのか。愚か者め」
「やりすぎだろこの!」
シルディがグリフィスさんに殴りかかる。その拳をグリフィスさんは華麗に回避し、シルディの腕を引っ張った。その勢いのままシルディはヒラと接触し倒れる。
「いてて……」
「きゅう……」
「残るはお前だ。ユーシャ。1人でどうする?」
「『セイクリッドランス!』」
ユーシャの体が輝き、グリフィスさんに向けて光の槍を突き刺そうとする。大人しくしているように見えて、ユーシャも実は怒っていた。
「ふむ……『炎核』」
炎の球体に包まれたグリフィスさん。光の槍はその球体を壊すことができずにかき消される。
「あの人の魔法だな。だが……威力も範囲も矮小すぎる。なんだその体たらくは」
「そ、そんな……」
当然のようにユーシャの魔法ではグリフィスさんを倒すことはできなかった。それどころか、一歩動かすことすらできていない。そのショックは大きいのか、ユーシャの顔が曇っている。
グリフィスさんは柔らか素材の剣でユーシャの首を切った。
「これでチェックメイトだ。なるほど、お前たちが期末ランキング戦で負けたのも納得だな」
「どういう……ことですか」
喉の痛みが引いた私はグリフィスさんに問うた。ここに、私たちが知りたかった答えがあるかもしれない。
「勇者学校では連携が甘いうちは1人の方が強い傾向がある。お前たちは見ればわかるが、仲良しで、友達で、仲間ではあるんだろう。だが……戦友ではない」
「戦友……」
たしかに仲間とか、友達だとかは意識していた。でも戦友だと思ったことは少ないかもしれない。
「それが理解できるまで、お前たちはソロに負ける。負け続ける。今のように、ランキング戦のようにな」
冷たいことを言うグリフィスさんに、誰一人反論することはできなかった。




