15話 週末はお出かけ③
服を見た後は絶対に勇者ショップだよ! とユーシャが言うので黙ってついて行くことに。勇者ショップってそもそも何を売ってるんだろう……不安になってきたわ。
「ここ! 勇者ショップ!」
ユーシャが指差したのは黄金の甲冑。お値段1億円! って何よこの店!?
「ゆ、ユーシャ!? こんなお金持ってないわよ!」
「嫌だなリリー、それはお店の看板商品ってだけで、そんな高いものばっかりじゃ無いよ!」
あははと笑うユーシャ。いや……1億円の商品が売ってたら普通に不安になるわ!
魔界から送られてくるお金もそんなに余裕があるわけじゃ無いし……ってか魔王の娘なんだからもっとお金寄越してよね。
恐る恐る店内に入って行くとたしかに500円の手裏剣とかが売っている。あれがただ1つ例外なだけか……。
「ユーシャは何か買うもの決まっているの?」
「ううん。何も買うつもりはないよ。でもさ、ここに来ると勇者なんだ! って思わない?」
たしかにここに揃っているものは日常生活で必要になるものではない。むしろ不要なものばっかりね。特別感は味わえるかも。
「そういえば剣が得意なんでしょ? あの剣とか買わなくていいの?」
「うん。使う剣はあるから大丈夫。……お母さんの形見なんだ」
「……」
その言葉に返す言葉を見つけることができなかった。ごめんなさいは、たぶん違う。それは魔王が言うべき言葉なんだ。その上で、ユーシャはそれを許して魔族と人間の共存を目指している。それを私は応援すると決めた。
「なら、大事にしないとね。今度見せてよ」
「うん! 来週の実習からは使うよ!」
どんな時でも笑顔のユーシャ。本当に強い子ね。抱きしめてナデナデしてあげたい……いや! いやらしい意味じゃなくよ?
「アタシはこれ、買ってこっかな〜」
シルディが何か商品を取って呟く。
「何か買うのー?」
「おう。盾を磨くためのスポンジをな」
「えっー! 手入れとかするの? 意外!」
「なっ……! そ、それくらいするって!」
正直言って私も意外だと思った……。シルディってガサツなイメージがあるけどもしかしてそうでもない?
「ヒラは何か買うの?……って、何を持ってるの?」
「あぁ、これ? 藁人形だよ」
いや見ればわかるけど……藁人形とローソクを持って笑われると怖い! 何をする気なのこの子!
「私ね、実は呪い系の魔法も勉強してて……みんなの役に立てるように頑張るから!」
「えっ、あ……うん」
怖いわ! とか言い出せる雰囲気じゃなかった……。なんだか週末に出かけてみるとみんなの意外な一面が見られるわね。ユーシャ除く。
勇者ショップで結局購入したのはシルディの盾拭きとヒラの藁人形とローソク……。なんだか地味な買い物だけどみんなといると楽しかった。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていく。もう夕方。帰る時間ね。
「じゃーねーみんな! また明後日学校で!」
「おう! パーティでの実習、頑張ろうな!」
「が、頑張ります!」
「それじゃあまた来週」
購入した服を持って帰路につく。なんか始まりから終わりまで色々あったけど、楽しかったなぁ。こんな感情……魔界では味わえなかったわ。
「こっちに来れて良かった……」
みんなと仲良くなれた今、心底そう思う。だからこそちゃんと自分が魔王の娘なんだと伝えられる日が早く来て欲しい。この隠し事を明らかにできる日。つまり人間と魔族が和解する日を、いつか。
「ただいま〜」
「お帰りなさいませ、姫様♡」
あぁ……楽しんだ後に待ってるのは癒しの時間。こんな幸せあっていいの?
そういえば明日の予定は未定ね。それならアスセナと過ごすのも良いかも!
「ねぇアスセナ、明日は私と遊ばない?」
「え……いいんですか?」
「もちろん。昔みたいに遊びましょ?」
まだまだ私の週末は終わらない!




