149話 出校②
「お母さんを……知っているんですか」
「あぁ。優しくもあり、甘くもある。そして誰よりも強かった」
ユーシャは隣で感情がぐちゃぐちゃになって今にも爆発しそうだった。無理もない、突然お母さんの話題になったんだもの。普段はきっと、考えないようにしているはずだものね。
「お前がどの程度あの人の領域までたどり着いたか、見ておくか」
そう言ってこの人は柔らか素材の剣でユーシャに襲いかかった。ユーシャは反射的に避けたけど、追撃には反応できなかった。
「ふん。まぁこの程度か」
期待はずれだと言いたげに、勇者パーティの人はユーシャを鼻で笑った。
「そ、そんな言い方はやめてください!」
意外にも声を上げたのはシルディではなく、ヒラ。仲間がこうしてバカにされるとヒラもわかりやすく怒るようになった。それは……リーダーとしては嬉しいことかもね。
「なんだ貴様は」
ユーシャに襲いかかった速度で、ヒラにも襲いかかった。ヒラは反応することすら出来ずに喉元に柔らか素材の剣を突き立てられる。
「弱い。弱者が私に意見するな」
「テメェ! 黙って聞いてりゃいい加減に……!」
シルディの怒りが我慢できないところまで到達したところで、アルティス学園長がパンッと手を叩いた。全員の注目がそちらに集まる。
「元気なのはいいですが、あまり溝が深くなるのはよくありませんね。それと、そろそろ自己紹介が必要なのではありませんか?」
アルティス学園長は自分よりも歳が上であるのが確定している相手に諭すようにそう言った。心強いと、今は思っておこうかしら。
「……我が名はグリフィス。勇者パーティの"焔剣"だ」
私はその名に聞き覚えがあった。焔剣といえば、確か魔王が人間軍の特記戦力として数えている者よね。もう何人もの魔族を倒してきたことで有名だわ……。
「と、いうわけで当代の勇者パーティが主力、グリフィスさんがわざわざやってきてくれました。今日はこの方にレッスンを受けてもらいます」
「え……今日は説明会ではなかったのですか?」
確かに説明会だけで、後日にレッスンだった気がするんだけど……
「ちょっと勇者パーティが忙しいとのことですので、まとめて今日行うことになりました。グラウンドをお貸しするのでそこでレッスンを受けてください」
「そういうことだ。お前たちの実力はなんとなくわかった。少しでも戦場にて役に立つよう、みっちりとしごいてやるから覚悟しておけ」
鬼軍曹のように、グリフィスさんは私たちを睨みつけた。それに気圧される私たちではない。特にシルディは熱く燃え上がっている。
「そういうわけです。せっかくなので、私も見学させていただきますね」
「ほう……学園長というのは暇なのですね。たかが生徒のレッスンに付き添われるとは」
「いえいえ。これでも仕事を先に片付けているんですよ?」
アルティス学園長がなぜ見に来るのかはわからないけど……なんとなく面倒ごとを持ってくる気がする。アルティス学園長絡みでいい思い出があまりないし……。
「それではみなさん、まずは着替えましょうか。ジャージは用意してあるので、どうぞ」
言われるがままに更衣室へ移動し、ジャージに着替える。その間、私たちの中では少し話し合いの時間になった。
「ちょっと感じ悪いですね、あの人……」
意外にもヒラが人の悪口を言ってみせた。
「そうだね……怖いかも」
「へっ! あんなやつ、アタシたち4人でボコしてやろうぜ」
「変な気を起こすんじゃないわよ。相手は勇者パーティよ」
きっと4人でかかっても勝てる相手じゃない。でも、だからこそ意味がある。ランキング戦で勝てなかった理由が、ここでわかるかもしれない。だからこのレッスン、絶対に身にしてやるわよ、




