142話 決勝戦⑥
「勝てた……!」
まだビエントだけだけど、勝てたわよ!
みんなに報告しようと振り返る。でも、そこに人影はなかった。
「え……」
私は自然と声が漏れる。瓦礫の上に立っていたのは、メラン。ユーシャでも、ヒラでも、シルディでも、アルチャルでもない。
「そんな……何で……」
「私はこのランキング戦に賭けていた。お前たち仲良しチームと違って私は……勝つことに、専念する。その結果だ」
「姫、大ピンチのようだね」
セレナの言う通り、私だけ残ってしまった。1人で戦うことなんて想定していない。
私たちはパーティで勝つことにこだわりすぎて、こうした事態から目を背けていた傾向がある。こうなったらもう……私たちに勝ち目なんてないのかもしれない。
でも……諦めるわけにはいかないでしょう? だってユーシャにハグのお返しまでされたんだから!
「諦めていない目をしているな。……屠る」
メランが双剣を持ち、瓦礫を蹴って私の方へと向かってきた。
「ぐっ……!」
足元の瓦礫を持ち上げてガードするので手一杯。剣術系には『ブランクウォール』も効き目が薄いから、対処が難しいのよね……。
「『剣術:淀斬り』」
メランは片方の剣を手放して投げつけてきた。これに当たれば大ダメージを負うのは間違いない!
うまく体を捻って避ける。これでメランは剣を一本失った。これならまだチャンスは……
「甘い」
「なっ!」
メランは私が持ち上げた瓦礫を踏み越えて投げた剣に追いつき、今度は後ろから襲ってくる。これは……避けられない!
ザクっ! と首の切られる音がした。私のHPは0となり、意識が現実世界に戻る。
「はっ!」
「リリー……」
ヘルメットを外すとユーシャ、ヒラ、シルディ、アルチャルが私を心配そうに見つめていた。……そう、負けちゃったのね。
その後、私たちは決勝戦を見届けた。セレナとメランの一騎打ちは20分以上にも渡って続き、最終的にはメランが勝利を収めた。こうして、私たちの期末ランキング戦は苦い結果で終わった。
帰り、みんなは当然のように無言で歩いていた。空気は重く、気まずい。
「じゃあ、アタシこっちだから」
「私もここで失礼します」
「お、お疲れ様でした」
シルディ、ヒラ、アルチャルと別れ、ユーシャと2人きりになる。
重い空気が人数が減ったことでいくらか軽くなった気がする。だからようやく、私の方から口を開けた。
「ねぇユーシャ。ほんの少しでもプレッシャーは抜けたかしら?」
「え?」
「ファミレス会議の後言っていたでしょ? プレッシャーを感じるって」
「……そうだね。負けちゃったことはいいことじゃないけど、変な重りは無くなったかも」
「そう。それなら今日の負けにも意味があったわね」
そう言って私はユーシャに手を差し出した。ユーシャはその手をしっかり掴んでくれる。
「リリーの手、あったかいね」
「そうでしょう?」
これで私たちは夏休みになる。たぶん休み期間中にもみんなとは会うと思うけど、学校としては一区切りついた形になる。
「夏休みが明けたらまた頑張りましょ。私たちはまだまだ強くなれるわ」
「そう……だね。うん、頑張ろう」
そう言ってユーシャは笑顔になってくれた。その顔を見ると、安心する。最近はユーシャが笑ってくれる機会が少なかった気がするもの。やっぱり私、笑顔のユーシャが大好きだわ。
「それじゃあね、リリー。また」
「えぇ。夏休みにも会いましょう」
手を振ってユーシャと別れる。1人になるとふつふつと悔しさが込み上げてきた。これはアスセナに癒してもらうしかないわね。
そうして私は足早に家へと向かうのでした。
パーティポイント
ランキング戦決勝進出+5pt
32pt+5pt=37pt




