139話 決勝戦③
ユーシャと向き合ったメランは私たちに初めて感情らしい感情を見せた。その感情は……興奮。戦える相手を見つけてワクワクしているといった感じかしら。ちょっとメランにはついていけそうにないわね。
私はメランはユーシャと、そのサポートのヒラに任せビエントとセレナを見つめる。彼女たちもいつ動いてくるかわからない。でも間違いないのは私たちが一番困るタイミングで動いてくるでしょうということ。
「うりゃあ!」
「屠る!」
ユーシャとメランの争いも激化している。私はアルチャルとシルディを呼び寄せて作戦会議を開くことにした。
「このままユーシャとヒラにだけメランを任せるのも危険だわ。私たちも隙を見て叩きましょう」
「あいつ……隙なんてなくねぇか?」
「同感です。彼女は常に全方位にアンテナを張っている気がします」
たしかにシルディとアルチャルの言う通り、メランからピリピリと肌を焼くような殺気が常に流れている。隙なんて生まれそうにない。でも……
「でも、それでも戦わなきゃダメよ。私がビエントとセレナの様子を見えいるから、2人は隙を見てユーシャをサポートして」
「りょ、了解。やれるだけやってみるさ」
「かしこまりました。あの2人のことはよろしくお願いします」
そう言ってシルディとアルチャルは私から離れていった。
ビエントが崩した家の瓦礫の上に立つは私とビエント、そしてセレナ。
「やぁ姫。もしかして、1人で戦うつもりなのかな?」
「挑んでくれるなら楽しみですねぇ。ただ、みんな相手にしたかったですよ」
「……勘違いしないで欲しいわね。私たちは1人じゃない。直接共闘していなくても、気持ちは繋がっている。心は5つで1つなのよ」
私がそう言うと、セレナは賛辞を込めた表情を、ビエントは対照的に侮蔑を込めた表情を私に向けてきた。
「ハッ! それは弱い者の話だ! 弱いから群れる、弱いから精神的支柱に頼る。違いますか?」
「えぇそうよ。私は弱い」
少なくとも『そこにある悪夢』や魔界の魔法なしに、この2人に勝つのはほぼ不可能と言えるくらいには弱い。でも……
「でも、人を頼れる私はあなたより強いわよ」
「……へぇ」
私の言葉に怒りを滲ませて隠せていないビエント。他人を信じられないビエントに、この言葉の意味はわからないでしょうね。
「ふふっ。姫は真っ直ぐだ。そんなところが好……気に入ったよ」
「それはどうも」
何か少しだけ焦っているようなセレナだけど、どこか焦るようなところがあったかしら。攻めるのだったら今だったかもしれないわね……。惜しいことをしたわ。
「さぁ、始めましょうか。あの狂犬は置いておいて、ここで潰しあうのも一興でしょう」
狂犬とはメランのことでしょうね。
ビエントが両手を前に出し、風を自らの背後にストックさせた。
「なら私も準備を始めようか」
セレナは銀色に輝く剣を抜く。
そんな2人に対し、私は特に準備することはない。ほんの少しだけ脳裏に魔界の魔法を使ってでも勝ちたいという欲はある。でも……それをしたら色々なものを失ってしまう。安全も、学校も、ユーシャも。私は首を振ってその考えを消しとばした。
私には一緒に戦ってくれる仲間がいる。それだけで心強い。だから……私も負けるわけにはいかない。試合開始前にユーシャに注入してもらった勇気と元気、今ここで見せてやるわよ!




