138話 決勝戦②
周りを見渡しても今のところ人影はない。というか、私たちを除いたら3人しかいないのだから、見つけるのは相当難しそうね。逆に私たちはすぐに見つかる危険性があるわね。
「みんな、建物の影に上手く隠れて行くわよ」
みんな空気を読んで無言で頷いてくれた。ここで大声で「おー!」なんて叫んだら台無しだものね。
住宅街の狭い道をこそこそと通って行く。本当なら堂々と屋根上に登って戦いたいけど、相手が一級すぎて怖い。
「面倒とは思いませんカァ〜?」
突風が吹くかのように、大音量で声が響き渡った。この声は……ビエント!
「コソコソと戦うのって性に合わないんですよね。だから……『サイクロン』『サイクロン』『サイクロン』」
風の中級魔法、『サイクロン』を連発して風が吹き荒れる。その風は家を吹き飛ばし、私たちの位置を露わにしてしまった。
「見ーつけた♡」
ビエントは私たちを見てニヤッと微笑んだ。最初から私たち狙いということね。
「……屠る」
「お?」
飛んだ瓦礫の中から黒いものが飛び出してきた。黒髪短髪の双剣使い、メランね。奇襲するようにビエントに襲いかかった。彼女には特定の狙いなどなく、目についた者から倒しにかかっている気がする。
「まーまー慌てないでくださいよっ! と」
ビエントはメランの攻撃を両手で生み出した風で凌いでみせた。あとは……セレナだけね。
「まったく、灰かぶりの王子とは格好つかないね、姫」
そう思っていたらセレナが瓦礫の下からなんとか這い上がってきた。
これでビエントがぐちゃぐちゃにした街中フィールドの瓦礫の上に全員が揃った形になる。
私たちは基本フォーメーションを崩さぬまま、全員を警戒していた。
「シルディ、常に盾の用意をお願いね」
「おう。任せとけ」
シルディは頼もしく自信満々に答えてみせた。ビエント、メラン、セレナはこう着状態に陥る。下手に動けばやられるのは明白だものね。
ここで必要なのは、文字通り一筋の光。そう思っていたら期待通り、私の真横を矢が飛んでいった。
アルチャルの矢が襲いかかったのはメラン。これで倒せればとも思ったけど、現実は当然甘くはない。メランは双剣を使って矢を叩き落とした。
「……弱い」
メランはぶつぶつとまるで呪詛のように呟いている。そしてその不気味な目を、こちらに向けてきた。
「弱いものは……屠る」
瓦礫を蹴って、私たちへ向かってくるメラン。俊敏な動きだけど、昨日のセレナほどではない。これなら対応可能ね。
「シルディ!」
「おうよ! アタシが相手だ!」
シルディが左腕につけている盾を拡張させてメランと向き合った。それでもメランは構わずに突っ込んでくる。
遠目でセレナとビエントを確認したら、下手に動かずに私たちの動向を見守るようね。バトルロイヤルだと確認することが多くて大変だわ。
「邪魔だ」
「なにっ!?」
シルディの拡張した盾に足を引っ掛け、体を捻って剣をシルディに向ける。トリッキーな動きにシルディも私も固まってしまう。でも、1人だけ動ける子がいた。
「『勇者流剣術:幻影斬』」
ユーシャは冷静に判断を下してメランに対抗した。あと数センチでシルディの首が切られるところだったけど何とかユーシャのお陰で耐えられたわね。
「強者。……屠る」
メランは感情のないロボットのように呟き、ユーシャに双剣を向けた。そしてまた駆け出し、左右に揺れるトリッキーな動きで私たちの目を翻弄した。
本当なら『バーニング』を撃ちたいところだけど、あまりに動きがトリッキーで当たる気がしない。
今メランに対抗できるのはユーシャのみ。ここは悔しいけど、ユーシャ1人に任せることになりそうね……。




