136話 ファミレス帰り
私たちの会議が終わり、解散になる。ユーシャと私は方向が近いから当然一緒に帰ることになる。
結構長くまで作戦会議をしていたから暗くなってしまった。ユーシャを家まで送った方がいいかしら? 強いから問題ないような気もするけど。
「ねぇリリー、今日はちょっと涼しいね」
「夏休み前にしてはそうかもね」
ユーシャの桃色の髪が月の光に照らされ、綺麗に映った。その姿に不意にドキッとさせられる。
「手……繋いでもいい?」
「えっ?」
突然の申し出に驚いてしまった。まさかユーシャからそんなことを言われるなんて思ってもいなかったから。
「あ、嫌だったらいいよ……ごめんね」
「そ、そんなことないわよ! 繋ぎましょう」
むしろずっと繋ぎたい……とは言えないけど、なんだか知らないけどラッキー!
私がユーシャの左手を握る。言うまでもなく、ユーシャは私の右手を握り返してくれた。
なんだかいいわねこれ……夏のデートみたい。
ユーシャの方を横目で見ると髪の毛の色くらい頬がピンク色に染まっていた。
「どうして手を? 珍しいわね」
緊張しながらも冷静を装って聞いてみた。ユーシャが手を繋ぎたいなんて言うのは予想外だったし、意中の相手だけあって真意が気になるところだもの。
「な、何となく! 深い意味はないよ!」
「そ、そう……」
私としては深い意味があって欲しかったけど……ないなら仕方ないわね。
「あっ、リリー。ちょっとあそこで座っていかない?」
ユーシャが指さしたのは公園のベンチ。ユーシャとの時間がもうすぐ終わっちゃうのは寂しかったし、当然ここは賛成するしかないわね。
「えぇもちろん。お話ししていきましょ」
手を繋いだまま、公園のベンチに座る。すると肩と肩が触れそうになるくらい近くて、ドキドキする。心臓の音、ユーシャの方には聞こえていないわよね?
「本当はね、ちょっとだけ怖いんだ。ランキング戦」
「怖い?」
「うん。勝たなきゃいけないって自分の考えが、怖い。前回優勝したからといって今回も優勝が決まっているわけじゃないのに……他のみんなは優勝が決まっているように私たちを見てくるでしょ? それがプレッシャー」
「ユーシャ……」
知らなかった。いつもニコニコしているユーシャが、そんなプレッシャーに押しつぶされそうになっているなんて。
常に明るく、みんなを照らしてくれるような存在だから忘れてしまいそうになるけど、ユーシャだって同い年の女の子なのよね。
「私、本当は勇者学校に来る前にもう戦場からスカウトされていたの。でも、行くのはやめたんだ。怖かったから……。お母さんが死んじゃった戦場に行くのが、怖かったの」
「それは……」
ユーシャを精一杯励まそうと思った。でも、原因は私の父である魔王にある。私がどんな顔で励ます権利があるのかわからなくて、頭がぐちゃぐちゃになりそうだった。
「みんなと会えたから良かったけどね。でも、色々なものを背負っちゃっているのが怖い……ごめんね、こんな話」
「ううん。ユーシャは辛いことを笑顔で隠しすぎなのよ。もっと悩みはみんなで共有しましょう? 私たち、パーティなんだから」
「うん……ありがとう、リリー」
これが励ましになったとは思えない。でも今の私に言えるのはこれくらいのことしかなかった。
でもこれで終わるつもりはない。ユーシャは勇気を出して手を繋いだ。なら私も行動に移す!
「えいっ!」
「り、リリー!?」
ガバッと思いきりユーシャに抱きついた。顔が噴火するほど熱いけど、今は我慢! ユーシャを元気づけるためにはこうするのよ! ……私の願望込みだけど!
「こうすると、安心しない?」
「うん……するかも」
リリーもそっと腕を回してくれた。そのうち暑さに耐えられなくなって抱擁を解き、解散になった。
帰って遅くなった経緯をアスセナに話したらプンプンしたのは言うまでもない。




