126話 膝枕
「テスト勉強の日はありがとね、アスセナ」
「い、いえ! 姫様のためなら当然です!」
期末テストを終え、ランキング戦を来週に控えた週末。私はアスセナの膝の上で休んでいた。なぜかって? なんかいい膝だな〜って思ったから。
「アスセナ、何でユーシャとバチバチしてるの?」
恐る恐る聞いてみた。できればユーシャとアスセナは仲良くして欲しいし、バチバチは心臓に悪いからやめてほしい。原因が知れれば対策もできるんだけどね。
「いいえ? 別にユーシャさんとは何もありませんよ?」
ニッコリ笑ってアスセナは何もないという。でも……
「いやその笑顔よ。何かこう……怖いのよ! いつものアスセナの笑顔じゃないじゃない!」
「いえいえ。考えすぎではありませんか?」
頑なに認めようとはしないアスセナ。絶対にバチバチしているんだけど、意地でも私には知らせない気ね。
まぁもうここまで意地になられたらどうしようもないか、と諦める。これ以上聞いても無駄だわ。
「あ、そうだ姫様。少しよろしいですか?」
「うん? どうしたの?」
「あの、夏休みの間の3日間ほどお暇をいただけないでしょうか。家族が帰って来いって……」
あぁ、そんなことかと思ってアスセナに向かって微笑む。
「もちろんいいわよ。というか、私がダメっていう権利はないわね」
「ありがとうございます。できるだけ早く帰ってきますので」
「うん。でも親にはゆっくり顔を見せてあげること。いいわね?」
「はい!」
キラキラ光るアスセナの顔を見て、私は正直羨ましいなと思った。
私の親……魔王は、私の顔なんて見たいだなんて思わないだろうから。まぁ私も別に魔王の顔なんて見たくないんだけどね。
でも、そういう温かな家庭に憧れを持つのは仕方のないことよね。私ではどれだけ願っても不可能なことだもの。
「姫様はどうされます? 魔界に帰られますか?」
「んー……向こうから帰って来いって言うなら行くけど、そうでないなら行きたくないわ。これでも裏切っている身だし」
「そうですよね。そうしたら……3日分のお料理をどうにかしないとですね。夏ですから作り置きはできませんし……姫様、できますか?」
「うっ……それは無理かも」
料理は私にとって理外の存在。3日間もアスセナの料理を食べられなくなるとなると、本当にカップラーメン漬けの日々が始まってしまうかもしれない。
「お惣菜を買われるのもいいですけど、栄養面を考えたらご自身で作られるのが1番なんですけど……」
「わかってるわよ。でも……ねぇ」
私の料理スキルは下の下。勇者学校でお料理の時間が始まったらパーティポイントを持っていかれる覚悟もできている。わ、私の学力で集めたパーティポイントだからそれくらいいいわよね? ね?
「簡単なお料理を夏休みまでにお教えしますね」
「お、お願いするわ」
テストではシルディやヒラに教える立場だったのに、料理のこととなると生徒に回る。なんだかこの世界って面白い。
「さて、と」
アスセナの膝枕から起き上がって、考え事を始める。
「どうされたのですか?」
「明日から学校で、ランキング戦が始まるのよ。その対策をね……」
たくさんパーティ実習をしてきたから連携は深まっている。順当にいけば優勝できる戦力は揃っている。でも……バトルロイヤルでは何が起こるかわからない。
「姫様はすごいですね。みんなを率いていらして」
「成り行きでそうなっただけよ。リーダーなんて誰でもいいの。たまたま私がそうなっただけ」
「でもわかります。姫様は絶対、あのパーティに欠かせない存在になっていると思うんです!」
「アスセナ……」
そう……であるといいわね。私があのパーティに欠かせないかは、自分ではわからない。でも……そうだとしたら見せてやるわ。私の全身全霊をもって、このランキング戦、取りに行く! 体育祭のリベンジよ!




