120話 潜影実習⑤
「さぁ、先へ行こうか、姫」
再びセレナ王子の手を取って歩き出す。学園長室はもっとずっと奥にある。まだまだ厳しい試練が待っているのは間違いなさそうね。
「そういえば、学校内で魔法なんて使っても大丈夫なのかしら」
「大丈夫だと思うよ。さっき魔法を使っても傷ひとつ付いていなかったしね」
心配性だな、とセレナ王子は言った。
確かに床も壁も窓ガラスも傷ひとつ付いていない。ここから全力で戦えるということがわかった反面、向こうも全力で妨害してくるということになるから頭が痛くなる。
今はセレナが王子モードに入って調子がいいけど、いつまた体調を崩すかわからない。
いつセレナが体調を崩しても大丈夫なように、私も警戒していないとね。まったく、姫も楽じゃないわ。
「む……来たね」
前に人影……それも結構な数いるわね。
「よくここまで来ましたね。リリーさん、セレナさん」
「先生!」
私たちの行く道を阻むように立っていたのは先生だった。
てっきりアルティス学園長が出てくるかと思ってたけど、まだマシで良かったわ。
「『サモン!』」
先生が召喚したのは10体のマジックパペットたち。行く手を阻むには十分な数ね。
「さぁ、ここを突破してもらいましょうか」
「姫、ここも任せてくれ」
「危ないわよ? パペットの強さをどの程度に設定しているかわからないけど、注意したほうがいい」
私がそう忠告すると、セレナはニッと笑って……
「心配無用。だって私は……王子様だからね」
そんなことを言ってのけた。なんだか第一印象とだいぶ違う。いつのまにかセレナは頼れる人になっていた。まるで……ユーシャの隣で戦っているみたい。
「行くよ……『ヴァイス』」
またしてもセレナは白く輝き、白い波動を手から出した。
「マジックパペット陣形:守の陣」
先生がマジックパペットに向け指示を送る。パペットたちは言葉通りに動いて全員が『シールド』を張った。
衝突の瞬間、目の前が真っ白になる。光なのか、白色の何かなのかはわからないけど、とにかく真っ白。どうなったかの確認すらできない。
ようやく目視が効くようになってきたころ、パペットたちが9体になったのに気がついた。
今のセレナの魔法で1体だけか……結構設定を強くしているわね。
「ん……むぅ」
セレナ王子は満足いってないようで気まずそうにこちらを見てくる。姫の手前、もっと簡単に倒していいところを見せたかったのに、それができなくて焦っているといったところかしら?
「私も手伝うわ。王子を支えるのも、姫の役目でしょう?」
「そう……だね、お願いしようかな」
セレナ王子はやっと折れたようで、私に協力を申し出てくれた。
「マジックパペット陣形:攻の陣」
先生がマジックパペットたちに指示を出して、パペットたちが動き出す。
それぞれのパペットが魔法の準備を始めた。これはまずい……。
「防御魔法は当然持ってるわよね? 王子様」
「もちろん。姫を守るために、防衛はしっかりとしているつもりだよ」
それなら心強い。シルディがいてくれたらもっと助かったけど、この場面では王子様を信じて守り抜くしかない。
「マジックパペット魔法隊、放てー!」
先生の指示により一斉に攻撃に移るマジックパペットたち。炎、水、風、雷とそれぞれが違った魔法を繰り出してきた。
「『ブランクウォール!』」
「『パラディーンシールド』」
私は基本防御魔法の中級魔法を、セレナはオリジナルの魔法を使って防御にでる。相変わらずセレナの魔法は白く輝いていて眩しい。
思ったよりも難なく、マジックパペットの攻撃を防ぐことができた。さぁ、ここからサクッと倒すわよ! おてんば姫の実力、見せてあげるんだから!




