12話 実習後半②
「ほら、次は遠距離魔法の実習ですよ!」
「うぺっ!」
ドヤ顔でピースをしていたユーシャを先生がバインダーで軽く叩いた。
「怒られちった」
当人は全然反省の色なしだけど……。テヘッ☆って感じで可愛い……。
「リリーって大体なんでもできてるよね!」
「それ……ユーシャが言う? 全部完ぺきじゃない」
「ふっふっふっ! 私は勇者になるんだからね!」
(無い)胸を張るユーシャ。私だって魔界の魔法を使えば……って、何張り合ってるのよもう!
「わ、私だって勇者パーティの魔法使いになるんだから!」
「うん! 一緒に頑張ろうね」
優しく微笑みかけてくれるユーシャ……の後ろに怒った顔の先生が……バチッ!! って音を立ててユーシャの頭を叩く。
「うぅ……先生ひどいよぉ〜」
「まったく……遠距離魔法の実習の時間と言ってるでしょう!?」
……正論だ。私は怒られてないからセーフなのかな? ユーシャの声の方が通りやすいから仕方ないわね。
遠距離魔法の実習は攻撃魔法の実習と似ている。つまり的当てということ。紫・青・赤・黄・白・黒の順に威力がわかる。ただ1つ違うのは、当然距離。広い実習室の端から端へ向けて魔法を撃たなければならない。普通に攻撃魔法を撃つだけだったら途中で消えちゃうでしょうね。
「ふ、『ファイア!』」
私たちのパーティからはヒラが一番に魔法を撃つ。至近距離ですら白と黒の間である灰色にしかならなかったヒラの魔法が届くはずもなく……。
「うぅ……ダメでした」
「ドンマイドンマイ! 次頑張ろ!」
「ユーシャさん……!」
またユーシャが女の子の好感度を上げている……。なにこのモヤッとする気持ち。嫉妬? 嫉妬なの?
「思いっきりやりゃいいんだろ? 『ファイア!』」
シルディは全力で魔法を撃った。飛距離はなかなかだけど狙いがうまく定まらず、的にかすりもしなかった。
「チッ!」
「次は私かな〜! 『セイクリッドジャペリン!』」
眩い光を纏って放出。まるで当然だ、とでも言うように聖なる槍は真っ直ぐ強く飛び、的を紫色に染め上げた。
「イェーイ! ナイス1発!」
……もう驚かないわよ。この子の才能には桁違いのものがある。私は私の魔法で、今の成果を見せる時。
「頑張れー! リリー!」
ユーシャの声援が後ろから聞こえてくる。これだけでなんだか倍以上の力が出せる気がする!
「『バーニング!』」
渦巻く炎を放出! 確か至近距離では青色だったっけ。せめて……赤になれ!
炎はブレることなく的に命中! 窓の色は……予想通り赤色に染まっていた。
「うん。まぁまぁかな」
「ひゅ〜! リリーやるぅ!」
「ちょ、からかわないでよ!」
みんなの前で! もう!
「はい。お疲れ様でした。みんなの成績をまとめたものを教室で配るので受け取ってから帰ってください。来週からはいよいよパーティとしての動き方の座学と実習を始めます。心の準備をしておいてくださいね」
「「「はーーい」」」
クラスメイト達のいい返事が実習室に響く。みんな元気ね……。
教室に帰ると席順に呼ばれ、紙を手渡された。これが今の時点での成績票ね。
≪リリー≫
・攻撃魔法A
・防御魔法A
・支援魔法B
・遠距離魔法A
・総合A
うん! なかなかの好成績じゃないかしら? ゴクリ……こうなると気になるのはユーシャの成績ね。
「ユーシャ、どうだった?」
「ん? こんな感じだったよ?」
≪ユーシャ≫
・攻撃魔法S
・防御魔法S
・支援魔法S
・遠距離魔法S
・総合S
うわぁ……隙なしの最強じゃない。どうなってるのこれ。
「本当は魔法主体より剣主体の方が得意なんだけどね」
えっ……これよりまだ上があるの!? 魔王軍大丈夫なのかしら……普通に全滅しそう。
来週からはパーティでの動きを実習するということでみんなの成績も共有することに。
≪シルディ≫
・攻撃魔法C
・防御魔法B
・支援魔法E
・遠距離魔法D
・総合D
≪ヒラ≫
・攻撃魔法D
・防御魔法D
・支援魔法B
・遠距離魔法E
・総合D
2人ともあまり芳しくはないわね。
「そうだ! 明日リリーと遊ぶんだけど、シルディやヒラもどう?」
「おっ、行く行く」
「い、いいんですか? こんな私まで……」
「もちろん!」
そういえば明日はみんなで出かけるんだったわね。アスセナにお弁当作ってもらえるかな……。
「じゃあ明日10時に正門前集合ね! バイバーイ!」
……楽しみを残して、入学から初週を終える。ユーシャ……いろんな意味でも意外な存在だった。どうかこの楽しい日々がいつまでも続きますように。




