116話 潜影実習①
そのままパーティ実習の流れになる。相変わらずみんなの空気は緩んだまま。このまま私も流された方が楽なのかな、と思い始めてきた。
「ほらほらリリー! 準備運動するよー!」
ユーシャが大きな声を出して私を呼ぶ。
「あっ……うん!」
不思議な胸のつっかかりを感じつつも、とりあえず準備運動に参加する。その内にアルチャルも参加して、パーティみんなが揃った。
「みんなは……その、何か感じない? 嫌な予感というか、変な感じというか……」
うまく言葉にできないこの状況を、なんとかみんなと共有しようとする。でも……
「え? 何のこと?」
「リリー、疲れてるんじゃないか?」
「やっぱり休まれた方が……」
「リリー様、私が保健室へ案内します」
やっぱりというべきか、みんなは違和感を感じているわけじゃなく、むしろ私の心配をしてくれる。
ここは逆に……
「そうね、ちょっと保健室に行こうかしら」
流れに、乗ってみることにした。何故かはわからないけど、あえて流れに乗らないと前に進まない気がしたから。私の直感を信じることにしてみる。
アルチャルに手を引かれ保健室に向かう。アルチャルの手、柔らかいのね。失礼な話だけど、弓を使うからもっとゴツゴツしているものだと思っていたわ。
「えへ……リリー様の手……うへへ」
「アルチャル? どうかしたの?」
「い、いえ! 何でもありません!」
「……?」
なんかヨダレを垂らしているけどどうしたのかしら。よほどお昼ご飯が美味しかったとか?
また新たな謎を抱えつつ、入学後初の保健室へ。
「そ、それでは失礼します、リリー様!」
「うん。ありがとう、アルチャル」
小走りでグラウンドへ戻っていくアルチャルの背中を見届けて、保健室へ入る。
「あら、どうしたの?」
ドアを開けたら白衣を着た、まさに保健室の先生といった先生が椅子に座っていた。
「ちょっと具合が悪くて……休ませてもらえますか?」
「えぇ、いいですよ。2番ベットにどうぞ」
2番ベット……あぁ、1番にはもう先客がいるのね。
ベットに横たわり、私はこの違和感の正体を考える。
「ごめんなさい。職員室に行ってくるわね。何かあったら横についたベルを鳴らして。すぐに来るから」
「はい。わかりました」
「了解で〜す」
1番ベットから知らない生徒の声が聞こえてきた。誰なんだろう。そもそも1年生なのかしら。
先生がいなくなって完全に無音になる保健室。その無音を切り裂いたのは、となりの1番ベットからだった。
「ねぇ、君も感づいているの? この違和感にさ」
「え? は、はい」
びっくりした……突然話しかけられたから思わず敬語になっちゃったわ。
「そうなんだー。ねぇ君、名前は?」
「リリー……です」
「リリー……あぁ! 学年1位の」
「知っていましたか」
「うん。だって私も1位だったし」
その言葉にハッとした。そういえば私と同点で1位なのが2人いるって言ってたわね。
「あなたは……」
「私はセレナ。よろしくね」
名乗ってすぐにセレナは笑い出した。
「どうしたの?」
「ん? いや、お互い顔も見えずに自己紹介をするって、なんだか不思議だな〜って思ってね」
まぁ……確かにそうよね。なかなかお目にかかれるような自己紹介の方法ではないわ。
セレナは笑いをピタッと止め、顔が見えぬまま話を続けた。
「さぁ、気がついているのは私たちだけかな? とりあえず私たちで取り組んでみようか。これは何か裏があるよ」
顔は見えなくても、何となくセレナの表情が分かる気がした。たぶん今彼女は……かなりニヤッとした顔をしていると思うわ。




