106話 体育祭③
「みんな応援ありがとー!」
ユーシャがニコニコで応援席に帰ってきた。うん、可愛い! 魔法を使わずに5位って、それもう普通に足が速かったのよね。
「いや〜、週末走り込みした甲斐があったよ〜」
「え、練習してたの?」
「もちろん! みんなの役に立ちたかったからね!」
すごい……何がすごいって、週末を走り込みに費やしていたのにもかかわらずテストでもちゃんとパーティポイントを取ってくれたこと。見えないところでとんでもない努力をしてくれていたってことよね。
「お疲れ様でした。それでは第3種目に移ります」
先生が応援席の前まで来てまた説明を始めた。3種目目は綱引きだっけ。この種目なら必勝法を見つけたから、行けるわよね?
「それでは競技の位置へ移動してください。すぐにパペットを召喚しますので」
いつのまにかグラウンドの中央に綱引き用の綱が用意されていた。そして先生が続々とパーティメンバーの人数に合わせたマジックパペットを召喚していく。
「よし、みんな行くわよ!」
「「「「おー!!!!」」」」
といってもみんなの出番は無いといってもいい。始まった瞬間に『サンダー』を使って、私が綱を思いっきり引くだけだし。
「みなさん位置につきましたね? それでは綱引きを始めます。よーーーい、スタート!」
先生の宣言とともに綱引きがスタートする。マジックパペット達が立ち上がり、綱を持って引き始めた。
「みんな、行くわよ! 3・2・1……『サンダー!』」
パペット達に対して綱を伝って雷で攻撃する。行動不能になったパペット達から綱を引くのは簡単なこと!
「よっこいしょ!……ってあれ?」
つ、綱が固い!? 何で、どうして!
「リリーどうした!?」
「みんな引っ張って! 綱が……重い!」
「なんだって!?」
ユーシャ、ヒラ、シルディ、アルチャルが加わって引っ張ってもビクともしない。なんで……と思った先に答えがいた。
「マジックパペット……6体目!?」
何で……マジックパペットは人数分しか先生は用意していないはず。それに雷の耐性がついているパペットなんていなかったのに!
しかも1体でかなり粘ってくる。5人で思いっきり引っ張ってようやく綱を完全にこっちのものにすることができた。
順位は……12位か……全然ダメね。
「それにしても何なのこのマジックパペットは……」
「ふふん、苦戦してるね?」
後ろから声をかけられた。初めて聞く声だったけど、振り返って顔を見たら誰かはわかった。
「……何の用かしら?」
鉄球転がしで鉄球をサッカーボールの様に自在に操っていた少女。緑髪ポニーテールが特徴的なこの子は……いや、名前は知らないんだった。
「リリー様に何の用です? ビエント」
アルチャルが名前を呼んでくれて初めて名を知ることができた。
「いやいや〜、ランキング戦優勝パーティと準優勝パーティのエースが組んで、随分と情けない結果を出してるな〜って思っただけだよ」
ビエントは私たちを煽る様な声色で話しかけてくる。予想通りシルディはプチんとキレそうになったから一旦落ち着かせる。
「そうね。情けない結果を出しているのは自覚しているわ。それにしても貴女はすごいわね。鉄球転がし1位、徒競走1位、綱引きも1位でしょう?」
ずっと注目していたから知っている。ビエントはずっと1位だった。
「僕の足手まといがいなければ常に1位なのは確実さ。次の玉入れでも証明してあげるよ。僕が最強だってね」
私たちに指をさして去っていった。たぶんあの6体目のマジックパペットはビエントの差し金だ。でも考えてみればこの競技で妨害はルールによって禁じられてはいなかった。考えが足りなかったわね。
「……悔しい」
「リリー……」
今はただ、グッとこの悔しさを堪えるしかなかった。




