104話 体育祭①
「それではただ今より体育祭第1種目[鉄球転がし]を開催します。ルールは簡単。目の前にある大きな鉄球を、グラウンドの向こうに引かれた白線まで転がしてそのタイムを競うものです」
私たちが並ぶ線上に、いつのまにか鉄球が召喚されていた。これを向こうまで転がしていく……風魔法の力加減がものを言うわよね。
私たちは左からユーシャ、私、ヒラの順番に並ぶ。
「アルチャル、ヒラに『ブースト』をお願い」
「はい、かしこまりました。『ブースト』」
アルチャルの強力な支援魔法がヒラにかかる。これで私たちの風魔法の威力はほぼ等倍になったはず。さぁ、できることをやってやるわよ!
「それではカウントダウンを始めます。5・4・3・2・1……スタート!」
「行くわよみんな!」
「「「『ウィンド』」」」
スタートと同時に風魔法を鉄球に浴びせる。ゆっくりと動き出した鉄球。私たちのパーティとは対照的にずんずん進んでいく鉄球が横目に映った。
「……くっ!」
練習の時1人だけ軽快に鉄球を扱っていた1人パーティの子か。とんでもない風さばきでスイスイと進んでいった。ちょっとあれに追いつくのは現実的じゃないわね……。
こうなったら2位を狙うしかないわ。諦めずに風魔法で転がしていきましょう。
「『サンドウォール』だにゃん」
突然叫び声が聞こえた。その声の方へ目を向けると突然大きな砂の壁が出来上がっている。まさか……
「さぁ、転げるにゃー! お前の意思でにゃん!」
そうか……! 壁をうまく坂道状に作って鉄球がそのまま転がっていくようにしたんだ! それ以上魔法を使わなくても転がっていくし、何より鉄球が重い分速い!
「みんな色々考えているのね……甘かったわ」
そう呟かずにはいられなかった。そういう工夫力が私の課題ね。でも今はとにかく鉄球を風魔法で転がしていくしか方法はない。トップ3はもう無理かもしれないけど、少しでもいい順位でこの第1種目を終えるんだ!
「みんなあと半分よ! 頑張って!」
「うん! 頑張ろー!」
「頑張りましゅ!」
結構疲れてきたはずなのに元気に返事をしてくれたユーシャと、可愛く噛んだヒラ。
まだまだいけそうね。なら……
「2人とも少しこらえてね。強めの風を真ん中に当てて押すわ。微調整はお願い」
「うん! まっかせて!」
「は、はい!」
よし……ここで一気に加速してやるわよ! 風の下級魔法、『ウィンド』ではなく、一歩先へ進んだ中級魔法、『サイクロン』でね!
「はぁぁぁ、『サイクロン!』」
なぎ払った手から出てきたのは突風ではなく、竜巻。思いっきり鉄球をガンガン押していってくれる竜巻は一気にたくさんのパーティを置き去りにしていった。よし! 中盤でのブーストととしては十分じゃないかしら?
「いっけぇぇ!」
鉄球はぐんぐんと進んでいく。奥の手……だとか、作戦……と言うにはかなり強引な手なんだけどね。でも実際に効果は出ているからヨシ!
「さぁラストスパートよ!」
「うん!」「はい!」
「「「『ウィンド!』」」」
再度気合いを入れて風魔法を放つ。文字通りラストスパート! さぁ、歯をくいしばって行くわよ!
「頑張れみんなー!」
「お願いします!」
シルディとアルチャルも後ろから声援を送ってくれる。これが結構力になるもので、不思議と送る風が強まっていった。仲間こそが1番の『ブースト』だったり……なんてね。
「おーりゃぁぁああ!」
雄叫びをあげ、最後の一押しを送る。私たちの鉄球もそれに応えるようにグラウンドの白線を超えていった。
「よーし! ゴールだ、よく頑張ったな!」
シルディが私たちを労ってくれる。順位は……7位か。
「ここから巻き返す必要があるわね。……あと4種目、絶対に負けないわよ!」




